強がりと意地っ張り
遅れました!
すみません忙しくて...
ではどうぞ!
援護射撃の要請あり。
地上には敵多数。
制圧射撃...準備。
各砲門、装填完了。
照準生成。
「...フゥー...」
地表から切り離された要塞から戦場を見下ろす。
下ではワカタケが相手と死闘を繰り広げている。
制圧射撃で面を制圧すれば回避も難しいだろうけど...味方にも当たりやすくなる。
さっき怪我したフレイヤちゃんも、ワカタケにも当たるかもしれない。
でも、そんな事を言っていたら援護射撃なんて出来はしないよね...!
ー彼は強い。私が援護した時も危なげなく回避してくれた。安心して撃ち込めー
「わかった...目標設定。100m以内のものは全て薙ぎ払っちゃうぞ!...射撃開始!」
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「動けるように...なりましたね」
ワカタケから教わった回復魔術。
生の魔力を扱うのが得意なワカタケほどじゃないけど、ほぼ無傷まで回復できるようになった。
「すごい...治ってる...じゃなくて!
治っててもまだ動いちゃダメです!砲撃が止むまでは危険すぎます!」
「いいえ...そろそろ止みますよ」
直感がそう告げている。
魔力の流れは見えなくなったけど...まだこういう不思議な感覚は消えてない。
何を言っているんだという顔をしている少年たちを横目に、空を見上げ続ける。
数秒後、宣言通りに砲撃の雨は綺麗に止んだ。
砲撃の煙が晴れて見えてきたのはワカタケが孤軍奮闘する姿。
切り傷や出血こそ見られないが、制服がボロボロだ。
「さっきはカッコ悪かったですよね。
武器を握って一瞬で吹っ飛ばされちゃって。
ふぅ...今度は同じようにはいかないよ...!」
ー無理はするなよー
ー...ええ、わかっているわテンペスター
それっきりテンペスタは黙った。
私の覚悟を感じて見守っていてくれている。
本当にありがたい限り。
一撃食らっただけで動けなくなるなんて情けない。それでも戦うことを決めた乙女なの?
「フフッ...痛かったんだから...許さないですよ?」
テンペスタの魔力を使って強引に空間を書き換えていく。
出来上がったのは審判の場。
何者も邪魔することのできない断罪の聖域。
「...」
あの元騎士は何が起こっているかわからない様子でキョロキョロしている。
それはそうでしょうね。
だって危険度最上位クラスの悪魔が本気を出したんだから。
「さあ、あなたの罪はどれくらいですかね?
まあ、勝手に別の人間に取り憑いて私の彼氏にまで手を出そうとしたんですから...首くらいはもらっていきますね?」
フレイヤの手に握られていた槍が姿を変えていく。
細く尖った刃は歪んで曲がっていき、魂を刈り取る為の鎌へと変形した。
「テンペスタが誇る裁きの魔術...『クリティカル・エクセキューション』...まあ、生きていられればまた会いましょう」
私がこれまで殺してきた人々が彼の体を押さえつける。
コッ...コッ...と靴を鳴らしながら後ろへと歩いていく。
彼はまだ悪魔に完全に乗っ取られているようだ。
「では、さようなら。...良い旅を。」
鎌を水平に薙ぎ払い、首を刎ねる。
綺麗に吹っ飛んだ首は暴れることなく...魔力となって消えていった。
罪を犯した魂だけ。それだけを裁き、空間は元に戻る。
元に戻った空間で、騎士は正気に戻っていた。
「...俺は、何を?」
「周りを見ればわかりますよ。」
「フレイヤ?」
ワカタケが不思議そうな顔をしてこちらに目を送ってきた。
「...どうしたんだあいつ。いきなり正気に戻りやがった」
「...ええ、悪魔を裁きました。正確には悪魔の宿った原因をですが」
いまいちピンと来ていないようなので、加えて説明する。
「悪魔の原因は悪意による精神の歪み。なら、その悪意を刈り取れば悪魔は無くなるでしょう?」
合点がいったようにワカタケが顔を変える。
「おい、そこの騎士」
呼びかけられた騎士は首をぎこちなく回してこちらを向く。
それを見たワカタケは固い声で話しかける。
「...お前は何のために戦っている?そこまでして、天使たちなんかに肩入れをするのか?」
...悪意が刈り取られたとしても残る感情がワカタケに向けられた。
「同じ人間なのに扱いが違う。それが気に食わなかっただけだ。」
「...そうか。」
大きく空を仰ぎながら多きく騎士が息を吐いた。
「自分の意思で戦っているのか...それが本当の正義なんだろうな...俺は...正義ではなく秩序に従っていただけだったのか...」
「何かを信じて戦ったのならお前も正義だと思う。
ただ何を正しいと思うか...それが違うだけだ。」
「...そうか」
騎士はハハッと皮肉に笑って刀を構え直してきた。
「俺はここの管理任務に就いていたコメット騎士団団長、ヒュルトゲン・コメットだ。貴殿の名は何という?」
「若竹 如月だ。ヒュルトゲン...名前は覚えた。」
皮肉な笑みから一転、決意で引き締められた武人の顔になった騎士は声をいきなり張り上げた!
「ワカタケ・キサラギ!我は貴殿に決闘を申し込む!」
さっきまでの悪魔がいた時とは全く違う剣幕。
捲し立てるのではない。
真っ直ぐに突き刺さる純粋な声だ。
「いいだろう。けど、周りの奴は巻き込むなよ」
「当然だ」
ワカタケはそう言って歩いて行ってしまう。
私を抑えてワカタケが決着をつけに行ってしまう。
今回は...私もなんとか活躍できたかな...?
「ふぅー...ッ」
ワカタケは息を整えて準備している。
対するコメットは...
「...」
長刀を構えて黙想している。
大柄な体と相まってその姿にはとてもつもない威圧感が生まれている。
「ワカタケ、大丈夫かな...」
ーいや、不味いー
テンペスタが強張った声でそう告げる。
ーワカタケは今、無自覚に魔力を激らせているー
「それの何が不味いの?」
ーあのままだと無自覚なまま限界を超え...ー
意味深にそこでテンペスタはセリフを切った。
何かを隠しているみたいに。
「教えて、テンペスタ」
ー...体が、崩壊するー
だが、とテンペスタは続ける。
ーコメットは悪魔がいた時より戦闘力が上がっているようだ。どういうわけかわからないが...ワカタケが強化無しに戦っても勝てないだろうー
強化無しでは勝てず、強化を使えば死ぬ。
彼ならば死ぬ方を取るだろう。
しかも無自覚に使ってしまっているのでは途切れさせるのは難しそうだ。
「見ていましょう。」
ーフレイヤ?ー
「見届けます。ワカタケは私を救ってくれた。
なら...ワカタケの決断を見届けるのも私の義務です」
私の中に生まれた新しい覚悟...それを最後まで守り通すために。
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「待たせた...行くぞ?」
「ああ。いつでも来い」
俺はいつも通り速度をもって圧倒するため、ほぼ真横に滑るように跳んだ。
そのままスライディングで懐まで入り込む算段だったのだが、相手が全く動かない。
恐らく居合い系の剣技か?
ーなら反応しきれない速度で突っ込む!ー
音を置き去りにし、その場にいた全員の視線も追いつかない速度で突っ込んだ!
その時だった。
「居合三段 一段」
コメットから3mくらいのところで置き去りにした音が追いついてきた。
聞こえないはずの、そしてそんな言葉を口に出すような時間も無いはずなのに聞こえたのだ。
しっかりとその技名が。
「...黒洞洞」
さっきまでスライディングしていた地面がいきなりその硬さを失い、俺の足が地面に飲み込まれそうになる。
「チッ...」
その時、頭の中で火花が散るような感覚がしたが、次の瞬間には収まっていた。
龍鱗の刀が少し黒くなったかという感じはするが気のせいだろう。
火花が散るような痛みのおかげで目が覚めた。
姿勢を低くし再度突っ込む。
直後頭の上を長刀が凶悪な風切り音を上げながら過ぎて行って肝が冷えたが、そんなことで止まればそれこそ死ぬ。
突っ切る。
止まらずに。
「オラァッ!」
「二段...牡丹の太刀」
また頭が痛くなる。
くそッ...
正面から首を刈りにくる刀をなんとか弾き、また突っ込もうとする。
が、今度は骨が耐えきれなかった。
崩れたのは...突っ込むために踏みしめた足だった。
「ガッ...!?」
負けられないのに。
俺は今天使を宿らせている人たちの命を背負っているのに。
足が崩れた。
止まってなんていられない。
なんとしても動かなければいけないのに。
ー動け...動け動け動け動け動け!止まれないんだよ!負けられないんだよ!動けよ!ー
強引に魔力を体の中に流す。
また火花が走る感覚。
今度は頭だけでなく全身だ。
体の中が書き換えられたかのように反応が変わっていく。
これまでとは違うほど感覚がいい。
骨も...治っている。
「はぁぁぁぁ‼︎‼︎‼︎」
目を見開き驚くコメットに俺の刀が届く位置まで来た。
ここまできたら早く一撃を入れた方の勝ちだ。
「三段...一撃必殺」
「龍殺ッ!刹那鎌鼬‼︎」
刹那突きに使うための動きと鎌鼬に使うための動きを組み合わせて加速させる。
刹那突きのバネを、鎌鼬の押し出しを応用した加速はそれこそさっきまでとは段違いで...
俺の刀はしっかりと、相手に届いていた。
ドサッ、と俺の体に全体重がかかってくる。
大柄な体はそれ相応に重く、その感触に混じって漏れる生の魔力は空へと昇っていた。
時間がない、とコメットは口を開いた。
「私の娘が...貴殿の所属する学校にいるはずだ...恐らく一人でいることだと思う。...ハァ...あまり人と関わりたがらないからな...ハァ...ッ...伝えて...欲しい...」
その時に見せた表情はー
「もっと、愛して...一緒に過ごしてやりたかったと...」
...悪魔に乗っ取られた狂人でも、気高き武人でもなく、心優しい...いい父親の顔だった。
「...わかった。」
俺はその場にコメットを横たわらせ、尊敬と畏怖の念を込めてこう言った。
「お前の正義...しかと受け止めた。」
すみません、また遅れてしまうかもですが...
次もお楽しみに〜




