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その結果

 普通、森の中の木というものは、大体似たような太さの木が並ぶものだ。


 たまに種類の違う木が、どーんと太く大きい立っている事もあるが、その場合は高さがさほど変わらなかったり、どこかで似通ったというか、近いものがあるものだ。


 と、いうのが前の世界で森を歩いていた俺の感想である。


 日光であったり、地質や海抜、気候とか、まぁなんか色々と条件だったりとあるんだろう。


 林業は専門外なのでよく知らん。


 何を言いたいのかと言えば、太く大きい木が欲しければ、そういう木が強い勢力を持って群生している所を探さなきゃいけない。


 太い木という事は高い木であるという事、背が高ければその下には日光が届きにくく、若い木が育ちにくいからだ。

 

 なのだが・・・。


 前々からちょっと不思議には思ってた。


 何が?という事もなくなんか変。位に感じていたのだが、木材を探す。という視点で見てやっと気付いた。


 生えている木に系統というか、傾向が見られるのだが、その全てを無視するかのようにデンッと巨木がいる。


 流石にその木のすぐ近くには生えていないが、少し離れた所には普通に木が生えてる。


 同じ種類の木だと思うのだが・・・、日光もそうだが、根っこで喧嘩にならんのかな⁇


 まぁ、いいや。

 太い木が簡単に見つかるのは正直助かる。


 とりあえず倒すか。


 魔王鎧を刀の形に変化させ、根元から横薙ぎに振るう。


「よっ」


 スコン


 サクッと切れた。

 ズリズリと音を立てて滑り落ち、バリバリと周囲の枝を巻き込みながら地響きを立てて倒れた。


 うむ、狙い通り木と木の間を縫うように倒れた。


 普通ならチェンソーでもって切り込みを入れて・・・。いや、もう普通とか考えるのはやめよう。


 楽なんだからそれでいい。


 ダルガの身長よりちょい長めくらいで輪切りにし、厚めに板を切り出して収納に入れる。


 木を入れた収納の時間を早回しにして乾燥させる。


 ふむ。歪んだ。


 水分が抜け、歪んだ木の板をさらに真っ直ぐに切り、平らな板にする。


 思ったより歪みが少なかったせいか厚めの板が出来た。


 同じ要領で板を量産。

 一緒に角材と釘の代わりの木釘も量産。


 剣でサクサク板が作れるって凄い。怖い。


 角材に溝を掘り、格子状にはめ込む。その上に板を乗せ木釘の穴を開けて打ち込み固定。


 ・・・。


 もう台が出来た。

 ガタつきもない。


 ・・・。


 よし、次に行こう。


「ジン様、食事の用意が出来ました」


 ん。

 後ろを振り向けば気恥ずかしげにしているフーカがいた。

 気付かなかった。というか、もうその位の時間は経ってたんだな。

 本当から言えばメシを抜いても完成を急ぎたい所だが、食事はみんなで、と言い出したのは俺だ。

 俺から言い出した事を俺から反故には出来ん。


 ・・・。


 何故に恥ずかしそうにしている?


「今、行くよ」


「はい」


 俯き加減にフーカが返事をした。


 ??


 なんだろう?


 フーカの後を歩き拠点に戻る。


 拠点では三本の支柱を掛けて焚き火に吊り下げられた鍋が見えた。


 何やら美味しそうないい匂いがする。


 焚き火の後ろに手を振ってくるビリィと、その横に大きく横たわるものが見える。


 ダルガだ。


「ダルガの様子はどうだ?」


「熱はまだ引かないけど、とりあえずは眠った。どうせご飯は食べられないだろうし、寝かせておくのがいいと思う」


 ダルガの顔を覗き込み、額に手を添える。

 熱いが、寝息は静かだ。これなら朝まで保つだろう。


「よし、ダルガには悪いが飯にしよう」


「は、はいっ、分かりました」


 何故にどもるんだ?フーカ。何が失敗でもしたか?


 フーカは恐る恐るといった感じに鍋の蓋を開けた。

 ふわりと湯気が立ち上り、グツグツと煮込まれる鍋の中が見えた。


 蕎麦粥ではないな。

 緑色の葉ものが幾種も見える中に団子のように丸められた物が浮いている。


「おぉ、美味そうだな」


 ピクリと反応したフーカが大きめの椀によそい、渡してきた。


「何気にフーカの料理を買うのは初めてじゃのう」


 出たなロリババァ。

 絶対に飯だけは欠かさないヤツだ。


 全員に椀が行き渡ったのを確認してから手を合わせた。


「では、いただきます」


 さてまずは肉団子から頂こうか・・・な?

 おや、団子が二種類いるな。肉っぽいのの他に白い団子が・・・。


 ま、肉から。

 箸で肉団子を割り、軽く冷ましてから口に入れる。


 コリッコリッとした食感と、口に広がる甘い肉汁。

 熱いそして、美味い。


 ウサギの軟骨もまとめてミンチにしたのか。味はあっさり塩味だが、塩や肉の味だけではない何が色々な旨味を感じる。

 仄かにニンニクの匂いもするな。

 もしかしてこの肉の中に一緒にきざまれて入ってるのは行者ニンニクか?


 うん、美味い。


 もしてもう一つ、白い団子の中にも緑色のきざまれた物が・・・。こっちはネギかな?


 箸で二つに切り分けるとぷるんっと弾けた。

 柔らかく、弾力がある。これはもしかして・・・。


 口に入れた。


 クニュっとした弾力とモチモチした歯ごたえ。そして鼻から抜ける蕎麦の香り。


 これ、ちょっと違うけど蕎麦がきだ。

 中に入ってるネギの甘さも丁度いい。


「うん、美味い」


 ふと、顔を上げるとフーカと目があった。

 フーカだけじゃない。ビリィもマオも俺を見ていた。


「どうした?」


「あ、はいっありがとうございます!」


 ん?


「ジンが料理を作ると、何かと派手だからねぇ。フーカの料理は飾り気のない簡潔な感じだからね。まぁ、旅の野営でこんな鍋が食べられるなんて十分贅沢なんだけどな」


 ズズズッと汁を啜りながらビリィの言葉を聞く。

 派手?


「と、すると、俺の料理ってかなり普通じゃない感じなのか?」


「当たり前だ。ジンはあっちの世界のキャンプを基準に考えるからそうなるんだろうけど、あんなの旅の途中でやる事じゃないからな?ジンみたいに潤沢に素材持って、その辺にコンロとかバンバン作って・・・なんて普通は出来ないからな?」


 もぐもぐ・・・。


 ぁあ!なるほど、

 そういわれてみりゃそうか。


「俺は料理がそんなに上手くないからなぁ。色々と盛ってたんだが・・・そこまでする必要はなかったのか」


「旅の飯は貧相になるのが普通じゃからのう。豪華なのは、それはそれでいいんじゃが、それ故に主人殿以外に食事の用意を出来る者がおらなくなってしもうたんじゃ」


 ずずずずずっ。

 そうかー。

 食材買ってくるのも、持ってるのも、変な魔法で調理器具作ってるのも俺だものな。


「それじゃこれからは色々と頼むかな。ビリィは料理出来るのか?」


「狩りと丸焼きなら任せろ」


 野菜とか汁物とか絶対に出なさそうだな。


「マオは・・・」


 いや、いいか。料理が出来そうな気がしない。


「いや、儂だって料理くらい出来るぞ!」


「え?だって魔王だろ?」


「王ではあったが、玉座にずっと踏ん反り返っていられるほど裕福ではなかった故な・・・。じゃが食える物を作れるというのと、美味い物を作れるのかというのは話が別じゃぞ」


「なるほどな」


 作りたくないって素直に言やぁいいのに。


「ビリィはもっと肉が食いたいとかあるのか?」


「街で頼むご飯なら兎も角、道中のご飯にとやかく言う気はないな。あったかい物が食べられるだけでもありがたい」


 そういえばビリィは軍務経験があるんだったな。しかも最前線の。


「それじゃ米も少なくなってきたし、料理はフーカとビリィにも頼むとしよう。次の町で買い物にも付き合ってもらうかな」


「ん」


「は、はいっ分かりました」


 米を主体にするなら作れるが、それ以外となると自信がない。小麦粉使った料理ってあんまり知らんし、ロールパンとか作った事はあるけど、上手く出来た事ってないんだよなぁ。


 椀に残ってた汁を飲み干し、置いた。


「ご馳走さま。美味かった」


「あ、はい。お粗末様でした」


「すまんが後片付けは頼む」


「はい。あの・・・もう暗くなりますが、まだ作られるのですか?」


「ん?あぁ、作るよ。朝までには完成させたいからな」


 そう言って立ち上がる。


「ちゃんと休んでな。後ダルガの面倒を頼む。なんかあったら教えてくれ」


「ん」


「はい、分かりました」


 拠点を後に、作成の現場に戻った。


 先ずは片付けて、明かりの準備。

 廃材を纏めて万知さん印の付いた石を入れ、火を付けた。


 ポワッと青白い火が細く高く立ち上り、周囲を照らす。

 狼達の死骸を焼いたモノに似た、それとは異なる火。


 便利だなぁ。


 有難や、有難や。


 さて、準備はできた。ここからが大変だ。


 車輪、シャフト、それからベアリングニードル。


 どれも僅かな歪みも許されないシビアな作業、一つ一つが手作り。

 車輪が四つ、シャフトが二本、そして・・・ニードルは一つの軸に付き、三十から四十ほど使うから・・・失敗も考えて百六十は作らないと・・・。


 いや、ダルガの体重を考えて、軸受けを一本に付き三ヶ所にした方がいいかもしれない。


 となると・・・。


 ・・・。


 よし、やるか!


 ・・・。


 ・・・・・・。


 ・・・・・・・・・。


 ふぅ。


 手を止めて立ち上がり、腰を伸ばす。


 見上げるといつの間にか空が白んでいた。


 ギリギリだったが、なんとか間に合ったか。


 この木材、というか木。


 万知さんと魔王鎧のお陰で加工が楽。ぐらいにしか考えていなかったが、加工している最中にこの木材自体がかなり脆い事が分かった。


 代用品を探して加工し直す時間がなかった為、万知さんに強化の文様を刻んでもらい、一時的に凌ぐ事にした。


 まぁ一日もあれば町まで辿り着く筈だ。それまでてばいい。


 完成した台車を担ぎ、森を歩き拠点まで戻る。


 ダルガは大丈夫だろうか。


 森を抜け、拠点の方を見やると、焚き火の跡が見えた。


 だが、その周りに人が居ない。


 なんだ?何かあったか⁉︎


 夜の間に特に変わった気配は感じなかった。


 森というか、山全体が騒がしい感じはあったが、川の方は特に何もなかったはず・・・。


 台車をその場に起き、慌てて見渡すと川辺に立つビリィとフーカの姿を見つけた。


 そうだ。三人の気配はずっとあったんだ。

 が・・・ダルガが見えない。


 ダルガの気配は感じるが、姿がない。


 二人に急いで走り寄った。


 足音で気付いたのか、フーカが振り返った。


「あ、ジン様、おはようございます」


 そう言って深く頭を下げるフーカ。


「あぁ、おはよう。・・・、それでダルガはどうした?」


「あちらに・・・」


 川の真ん中あたりを指差した。


 川の・・・中?


 確かにダルガの気配がある。それ以外にも・・・。


 川幅はそれなりに広い。


 十メートル位もあるだろうか?深さもそれなりにはあるだろうが、ダルガが隠れるには横に寝そべらなきゃならない筈だ・・・。


 と、思った所で川の水が大きく跳ねた。


 いや、爆発でもしたかに水柱が立ち、その中にパンツ一丁のダルガの姿が見えた。


 しかも、ワニの様なトカゲの様なダルガより一回り大きい、バタバタと暴れる生き物の首に腕を巻きつけ、締め上げていた。


 空中に飛び上がった一人と一匹、いや、怪獣二匹はそのまま再び水飛沫を巻き上げて川の中に消えていった。


 ・・・。


 なんなんだ?

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