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成功と失敗

 水を滴らせながら川の中からワニトカゲ引きずり上げたダルガはとてもワイルドだった。


 B級ホラー映画の一幕でも見ている気分になった。


 そのワニトカゲも、今や肉と皮になり、皮はフーカによって鞣(なめ)され、肉はビリィによって丸焼きにされている。


「それで・・・ダルガはもう大丈夫なのか?」


 しばらく状況について行けず傍観していたが、ダルガとビリィと並び、焚き火の前で焼かれる肉を見つめながらようやく現実に帰って来た。


 ・・・気がする。


「おう、朝に目が覚めたらスッキリしてたよ」


 ガハハハと豪快に笑うダルガ。


「そうか」


 良くなったならいいんだ。いいんだけどさ・・・。


「正直な話、結構ヤバかったと思うよ」


 肉を焼いているビリィがそんな事を言いだした。


「そうなのか?」


 と、ダルガが驚いた様な声を上げた。


「ダルガの回復力が高いってのもあると思うけど、急に意識を失って倒れるってのは普通じゃない。色々と症状は出ていただろうに、それを無視して動き続けてたんじゃないか?」


 症状って言えば・・・。


「そういえば、上手く魔力が練れないとか言ってたな」


「あ、確かに。今は普通に・・・出来てる」


「それ、一番分かりやすい初期症状だ。魔素が入り込むと身体の中の魔力が掻き乱されるからな。そんな状態で魔法なんか使ったら死んでもおかしくない」


 魔法・・・思いっきり使わせてたわ。


 ダルガと目が合った。

 目が泳いでる。


「そういえば・・・そんな話しを聞いた・・・事があったか・・・も」


 おいおい。


 いや、これに関しては俺も知らなかったじゃ済まない話だ。


「まぁ・・・なんだ。回復したって事はやっぱりダルガの体力がズバ抜けてたって事になるの・・・か?」


「いや、コイツが今こうして元気にしてるのはジンの非常識のせいだよ」


 ビリィはそう言うとズボンのポケットから何か取り出し、俺に向けて放って寄越した。


 これは・・・俺が寝てるダルガに差し込んだ魔石?


「私は魔法にはあまり詳しくないから、確かな事は言えないんだがな?それ多分、町に居る程度の治療術師の回復魔法より、余程効果が高いと思うよ」


 ・・・なに?


「というか、ジンは魔石を軽く見過ぎ。普通はそんなホイホイ使えるような物じゃないんだよ」


「だから・・・回復を待ってからって言ってたのか?」


「半分位はそう。台車を提案したのは時間稼ぎもある。本当に一晩で作るとは思ってなかったし、一晩で回復するとも思ってなかったけどな」


 おぉぅ。ビリィに一杯食わされた。

 ただ・・・あの時の俺は何を言っても引かなかったと思う。それを考えると正しい選択だったろうなぁ。


「よしっいい感じに焼けた。フーカ、そっちはどう?」


「丁度終わりました。少し遅くなりましたが朝食にしましょう」


 そう言って準備された朝食は、昨日食べた蕎麦がきの汁と、ビリィが焼いた謎の骨つき肉が山と盛られた皿が並んだ。


 徹夜明けの朝にこの山盛り肉は・・・、と迷いつつ一つ手に取る。


 白く淡白そうな肉、見た目は巨大なササミを輪切りにした感じが近いだろうか?違うのは細かくサシが入ってる様に見える所と、どの部位か分からない骨が生えてる所。


 一口齧った。


 ん⁉︎


 思ったよりアッサリしていてジュウシィ。臭みも無くて食べやすい。何より塩味が丁度いい。

 これなら収納に始末まであるトカゲ肉も期待できるかな?


「そういえば、ダルガさ」


「なんです?」


「なんでコイツと戦ってたんだ?」


 現実逃避してて聞くの忘れてた。


「いやぁ、朝に起きたら汗だくで気持ち悪くなっててさ」


 まぁ、そうだわな。


「顔でも洗おうかと、川に行ったら・・・なんか、川に入ったら気持ち良さそうで・・・」


 ほうほう。


「それで川に入ってたらなんか近付いてきて・・・」


 ほうほう、それで襲われたと。


「なんか腹減ってたし」


 ん?


「美味そうだったんで捕まえたんだよ」


「そうか」


 美味そう⁇


 チラリとフーカが鞣した皮を見た。


 横向きに木に吊るされた皮。頭から尻尾まで見れば長さは五メートルもあるだろう。手足の長いワニにしか見えない。


 アレを水中で見て美味しそう・・・か。

 こいつもこいつで突き抜けてんな。まぁ、実際に美味しいから文句はないが。


 朝ごはんの後、道に戻り予定通り町に向かう事にした。


 台車はそのまま、大量になった皮を積み込み、ついでに各々の荷物もわざと収納から取り出して積み込んだ。


 耐久テストしたかったんだよね。


 それでもダルガの重さの半分程しかないので、万知さんに付けてもらった強化の文様は効果を消しておいた。


 一応は道として見えるが当然の如く舗装されてる訳じゃない。


 車輪は上手く機能しているようで良く回ってはいるが、道の歪みや石につまづく度に激しく軋(きし)んだ。


 そして、一時間も引かせた頃には軋む音が鳴り止まなくなっていた。


「なぁ、ジン。凄い引き難いんだけど」


「だろうなぁ」


 車軸と車輪が重さと衝撃に耐えられず曲がっちゃったんだな。平坦な所でもガクガクと激しく揺れてる。


「木材の強度が絶対的に足りなかったんだなぁ」


 車軸と車輪が歪んでるが、軸受けの方は問題なさそうだ。

 時間が短いからなんとも言えんが、一応は上手くいったと言っていいかな?


「それじゃ荷物を、下ろして担いで行くか」


 入る分の荷物を収納に戻し、狼の毛皮をフーカとビリィに、ボス狼の毛皮を自分で担ぎ、ダルガの荷物とトカゲの皮とワニトカゲの皮をダルガに渡す。


「俺だけ多くない?」


「気のせいだ」


「だよな。俺もそう思った」


 壊れた台車はどうするかな。

 その辺に捨てておいてもいいと思うが・・・。こんな即席で作った雑な物が、ここを通りかかった人の目に触れるかと思うと少々恥ずかしい。


 燃やすか。


 台車を手に持った。

 軽いな。


 この場合、俺の力が強いんじゃなく、台車に使った木が軽いんだなぁ。

 この辺の加減は覚えていかないといかんなぁ。


 ミシッと音が鳴り、荷台に大きく文様がきざまれた台車を邪魔にならなさそうな所に放った。


 空を泳いだ台車が地面に付くか否やといった所で激しく炎を上げ燃え上がった。


 ・・・。


 なんか思ったよりよく燃えてる。


 台車にするより、薪(まき)した方が良さげな木だったのかもな。

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