鷹の王?
鷹も鳶も鷲も、ひっくるめて鷹。
なんか納得いかねぇ。
とはいえ。
上空を旋回してた鳶公が翼を畳み急降下してきた。
・・・落下速度以上に加速してる気が⁉︎
あ、あれヤバイ。
風を纏って急降下して来た鳶公が、一個の弾丸の様に、あっと言う間に目の前に降って来た。
「ビリィ!」
俺はともかくビリィを避難させないと・・・。
振り返ったが既に誰もいなかった。
ズドン
空気が破裂した様な音と一緒に衝撃が来た。
「ぐぉっ」
咄嗟に横へ飛んだが、巻き上げられた土砂と一緒に空中を舞う羽目になった。
おかげで口から変な声が出ちまった。
空中で身体をひねり、足から地面に落ちた。
あ、危ねぇ。
あの速度はびっくりしたが、直撃を喰らわなければ大丈夫・・・かな?
地面スレスレを滑空していった鳶公は上空へと舞い戻り、また旋回してる。
野郎余裕だな。
三回旋回した鳶公は再び翼を畳み急降下の姿勢に入った。
が、今度は前より角度が緩い。何する気だ?
急降下から十メートル上空で、翼を開き滑空に・・・、いや羽ばたいて急ブレーキをかけた。そこからまた上昇?
何を・・・、羽ばたいた所の空間が歪んで・・・る?
一拍遅れて空間の歪みが破裂して、空気の裂け目が降って来た。
アレもヤバい死ねる!
「うおぉぉぉぉ!」
形状変化させた小手を鞭の様にしならせ、見える空間の歪みを片端から叩く!
パンとした空気の弾ける音と、ギィっとした奥歯に響く金属が鳴り響く。
いっ⁉︎いててててて!
自分には当たらないと放置した歪みが地面で弾けて、下から土砂を巻き上げてくる。
くそぅ、あっという間に泥だらけだ、
しかし、こっちの手の届かない所からチクチクやられ続けられると面倒だ。
伸ばす部分を手から指に変えてもギリギリ届くか・・・。このままじゃ勝負にならん。
となると使うしかないか、魔法。
といっても魔法というモノがよくわからん俺には使える魔法は一種類しかない。
拳大位の手頃な石を両手に一つずつ持つ。
鳶公がまた三回旋回した。そろそろ来るな。
ってかアイツ、攻撃のテンポが毎回同じだな。
またさっきと同じ、少し緩めの角度で急降下して来ているが・・・、あれ?なんかズレてる。
どこを狙ってる?
侵入角度から考えて、爆心地になるのはあの辺か?
予想される爆心地を振り返り見た。
そこには楽しげにこっちを見てるビリィと、祈る様に手を合わせて鳶公の方を見てるフーカが居た。
あの腐れ鳶公!俺を無視してヨソに手ぇ出そうたぁいい度胸だ!
近付いて来るまでなぞ、待ってやらん。
小手を鞭の様にしならせて振りかぶる。狙うは鼻先、爆風で吹っ飛べ!
ドン
思い切り振った小手が空気の壁を突き破り、破裂音が響いた。
あ、やべ。
いくら小手も自分の手の様に使えるとはいえ、初めて全力で投げた石は鳶の上の方へと、狙いから外れて飛んでいった。
次だ!
ズドン
「ピギィ」
鳶公の上に飛んだ石が爆発し、鳶公を地面へと叩き落としていた。
一瞬遅れてきた爆風が土砂を巻き上げて降ってきた。
二個目投げる必要なかったけど・・・万知さんさぁ、爆発の威力高すぎない?
え?あの二人には防護の魔法を掛けてあるから大丈夫?あぁ・・・そう。
地面へと叩きつけられた鳶公は、すぐさま体勢を立て直し、上空へ舞い戻った。
ふむ。
やっぱりあの鳶公、基本動作が全部三拍子だ。
トントントンで旋回。そこから、はいトンタンタンで急降下。
今度は最初に見た弾丸急降下と同じ体勢だが、リズムが少しゆっくりだ。
変化させる気だな。
なまじ強いもんだから自分のリズムでゴリ押しする勝てて来たんだろうなぁ。強いからちょっと苦戦したりしても、ちょっと変化させるだけで倒せてきたんだなぁ、きっと。
だからこいつは単調にしか動けない。
自分のペースを守る事でしか強さを出せない奴は、ペースが知られた瞬間、負けが確定すると教えてやろう。
まず、鳶公のリズムに合わせて石を投げる。
万知さん、威力は低めにしてね。
いちにのさん、いちにのさん。
威力を程々に、狙いだけを正確に。
鳶公の近くでバンバン爆発しているが、鳶公の纏ってる風の幕は解けない。思ったより硬いが、まぁ問題ない。
自分が受けやすいリズムで飛んで来る攻撃は、さぞ気持ち良くに受けられる事だろう。
その気持ち良さと攻撃への緊張感がお前のリズムをさらに単調にする。
さぁ、来るぞ。
トン
爆撃を耐えて俺の目の前まで迫った鳶公は翼を広げ、纏っていた風を俺を囲う様に解放した。
タッ
竜巻の中心に居るような、風の壁が一瞬にして出来上がり、土砂を巻き上げて目の前が見えなくなった。
壁を作り逃げられない様にして、さらに視界を奪い強襲する。良い手だ。
けどな、タイミングがバレてたら何も怖くないんだよ。
タン
風の壁を突き破り、鉤爪が襲ってきた。
こっちの視界を奪う前から爪を開いて構えてたから、これも分かってた。
「せぃ!」
ギャリッ
両の拳で鉤爪を叩き落とし、返す手で鳶公の足を掴んだ。
「落ちろぉぉぉ!」
鳶公を引っ張り、地面に引き摺り倒してやろうと思いっきり振り落とした。
が、さすがに質量が違いすぎた。下に振り下ろした俺の方が浮いた。
鳶公を地面にかすらせただけで手が離れちまったが、問題ない。
体勢を立て直すテンポはもう分かってる。
トで態勢を立て直し、タンで振り返り相手を確認、タン上昇する。
さあ急げ、最初のトまでに出来る限り間合いを詰めないと逃す。
ト
ブレーキを掛けて体勢を整えている鳶公に向けて走り、出来る限り距離を詰める。
よし、ギリギリだが届く。
タン
振り返りに合わせて飛ぶ。
拳を引き絞った所で振り返った鳶公と目が合った。驚いてる・・・か?鳥の表情は分かんねぇや。
タイミングはドンピシャ。残念だったな、最後のタンは出来ないよ。
「けぇい!」
引き絞った右の拳を思い切り鳶公の左頬に叩き込んだ。
鳶公の頭が弾け、遅れて身体がクルリと一回転して地に落ちた。
頭、吹っ飛ばすつもりで殴ったんだが・・・、砕けもしなかったな。
地に足が付いてなかったのと、羽毛が柔らかかったのと、あと多分骨が軽かったからだな。インパクトの瞬間が少しズレた。
鳶公から一拍遅れて着地。
鳶公は・・・動かねぇな。死んだか?
いや、生きてるな。ピクピクしてる。
「ジン様!」
振り返れば走り寄って来るフーカが見えた。
アレ?ビリィが居ねぇ。
「まだ生きてるな」
声の方を向いたら、目を剥いて気絶してる鳶公の顔を覗き込んでいるビリィが居た。
「絞めるか?」
鶏じゃねぇんだから。
「ジン様!お怪我はありませんか」
「あぁ、問題ない」
水辺で何回も土砂被ってるから泥だらけになってるが、悲惨なのは見た目だけだ。
「それでフーカ」
「はい」
「こいつは食えるのか?」
「はい?」
あ、間違えた。ビリィが絞めるとか言うから。
「こいつから素材とか取れるのか?」
「あぁ・・・、そうですね。羽根は矢羽根に・・・は大き過ぎてなりそうにありませんね。鉤爪とか嘴などは素材になると思いますが、鷹王を狩った話しなど聞いたことがありませんので・・・、さすがに分かりかねます」
ふむ。
さて、どうしようか。
持って帰っても面倒にしかならない気がしてきた。それに持って帰るにしても収納に収まらないし・・・。
なんて考えていたらビリィが腰の短剣を抜いていた。
「とりあえず、絞める」
「まぁ待て」
んー、どうしようかなコイツ。
目は半開きで白目むいてるし、口も半開きで舌がだらしなく垂れてるし、ピクピクと痙攣してるし・・・。
なんかこう・・・どうでもよくなってきた。
鳶公の頭の上に手をかざす。
収納からさっき貯めた水を取り出し、ザバッと掛けた。
「ジン様⁉︎」
鳶公が跳ね起きた。
けどまだ目が回っているらしく、ふらふらと揺らめき、尻餅をついた。
ちょっと可愛いい。
「何故、我ヲ殺サナイ」
目の焦点が合ってないのが気持ち悪いな。
「お前の気絶した馬鹿ヅラを見たら殺す気が失せた」
一生懸命に立とうとするが、千鳥足だ。今度は横倒しに倒れた。
「今、殺サネバ、再ビ仇ナスヤモシレンゾ」
立つ事を諦めたのか、横に倒れたまま何か言ってる。
偉そうな分、滑稽で面白いな。
「何度やってもいいが、結果は同じだよ。なんで攻撃が読まれたのか分からない内はな」
「・・・」
必殺の技だった筈だ。それを難なく躱され、カウンターを当てられたんだ。本人からしたら訳がわからんだろう。
「何故カ聞イタラ、教エテクレルノカ?」
「教えてもいいぞ、鳶の王」
鳶公にニヤリと笑って見せた。
「・・・条件ハ何ダ?」
「そこの泉の使用許可」
まぁ、川だが。
鳶公の目が丸くなった。驚いたらそんな顔になるのか。目しか変化が分からんけども。
「・・・ソンナモノデ、イイノカ?」
「お前の弱点なんてそんなもんだよ鳶の王。まぁそんなモノって言うならこの森の通行の保証とかも貰おうかな?」
「我ハ敗者ダ、勝者ノ言ハ聞コウ。ダガ、ダカラト言ッテ暴言ハ聞キノガセン。我ハ鷹ノ王ダ、訂正セヨ」
あはっ。面白いなコイツ。
「そうか、それは悪かった。訂正するよ鷹の王」
命よりも尊厳を取るか。
色々と守る物もあるだろうに、俺じゃなきゃ死んでるかもしれんのに、男前な奴だ。




