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ビリィ

七話連続投稿

六話目

 うるさい。


 ドタバタと何人もの人が走ったり歩いたり・・・。


 うるさい。


 ここはジンと私の家なのに・・・。

 ジンはいないのに・・・。


 うるさい。


 ジンが帰ってこなくなって何日たったかな・・・。

 もうわかんなくなっちゃった。

 けど、ジンは帰ってくる。

 ぜったいに帰ってくる。


 やくそくしたから。


 一緒にいるってやくそくしてくれたから。

 ジンは嘘をつかない。

 だから私は待ってたらいい。


 でも、なんだか疲れちゃったな。


 なんだか最近、とても眠い。


 でも、起きてる。

 なんだか今日はジンが帰ってきそうな気がするから。


 あ、バタバタとうるさい足音こっちに向かってくる。


 これはユウだ。


 昔からうるさい音を立てるヤツで、私を見るといつもからんでくる。

 めんどくさいなぁ。


 そうな思いつつも目を開けると、ユウと目があった。


 ?


 目をそらした?

 何?こいつ遊んで欲しいの?


 いつもまっすぐに来るのにそのまま通りすぎていった。

 ユウのクセになんかムカツク。

 でもいいか、相手しなくてすんだし。


 あぁ、しかしうるさいなぁ。なんでこんなに人がきてるんだろ。


 あ!

 この足音!


 ・・・。


 違う、これアユちゃんの音だ。


 ジンとアユちゃんの足音はやさしいんだよね。

 なんか静かというか軽いというか・・・バタバタしないんだよね。

 なんか耳に気持ちいいから好き。


 片目を開けると姿が見えた。


 やっぱりアユちゃんだ。


 ??


 アユちゃん泣いてる?

 誰かにいじめられた・・・はないか、アユちゃんだし。またお友達とケンカしたのかな?


 アユちゃんが私の前で立ち止まり、しゃがんだ。

 アユちゃん今日はスカート?いつもはジンみたいなツナギ着てるのにめずらしいね。パンツ見えてるよ。


「ずっ、ずっ」


 鼻かみなよ。


「ねぇ、ビリィさん」


 なぁに?

 もうお婆ちゃんだから何もできないけど話くらいなら聞いてあげるよ?


「ビリィさん。じん爺ちゃん死んじゃった」


 は?

 何言ってんの?


「じん爺ちゃん、死んじゃったんだよ」


 やめて、なんでそんな嘘付くの?いくらアユちゃんでも許さないよ?


「グルルル」


「ビリィさん賢いね。やっぱり分かってたんだね」


 やめて!触んないで!


「じん爺ちゃん、カッコ良かったんだって、私、見逃しちゃった」


 当たり前でしょ、ジンはいつだってかっいいもん。


「ビリィさん」


 ・・・。


「ビリィさん」


 なによ。


「ビリィさん女の子なのに、なんでじん爺ちゃんはビリィって付けたんだろ」


 ?

 ビリィはビリィだよ?ジンがビリィって呼ぶからビリィなんだよ?女の子とか関係ないよ。


「ビリィさん、またごはん食べてないの?」


 食欲ないからいいの。


「ちゃんとごはん食べて、また今度お散歩に行こ?」


 ジンが帰ってきたら考える。


「ね?約束だよ?」


「ウォン」


 うるさい!あっち行って!


「また後でくるからね。またねビリィさん」


 ・・・。


 ジン、私なんか疲れちゃった。

 今日はもう寝ようかな。


 でもおかしいなぁ、今日は帰ってくるって思ったのに。

 まちがえたことなんてなかったのに。

 ジン、まだかなぁ。


 でも、私はジンのいいコだからちゃんと待ってる。

 だから、今日はおやすみするね。





 ・・・。



 ・・・・・・。



 あれ?

 なんかジンの夢を見てた気がするんだけど・・・。ここどこ?


 カサカサした枯れた細い葉っぱが風にふかれてさらさらいってる。

 なんか面白い。


 あ、走るとカサカサ音がする!

 あは、気持ちいー。


 これって竹やぶだよね?ジンと来た事あったかなぁ?

 なんかこう・・・ジンの・・・。


 あれ?これってジンの匂い?あ、ジンだ!ジンの匂いだ!


「アォォォォォン」


 ジーーーン、どこーーーー。


 えっと、こっちかな?


 ふんふん ふんふん


 こっちだー。

 あ、なんかジンが好きそうなお家があった。ここにジンの匂いが続いてる。

 ジンってなんかこう、変な家が好きなんだよねぇ。


「ウォン」


 ジンいる?


「ウォンウォン」


 いるなら開けてー。


 ガラガラと音を立てて戸が開いた。

 けど、ジンじゃない。


「いらっしゃいビリィさん、君を待ってたよ」


 変な頭の男が出てきた。

 赤?赤い頭?変な頭をした男にロクなヤツはいないってジンが言ってた気がする。


「そんな警戒しないで、おいでビリィさん」


 いやぁ、知らない人についてっちゃダメってジンに言われてるから、帰りますね。


「待って待って、陣三郎さんから言伝(ことづて)を預かってるんです。行かないで」


 ジン?ジンがいるの?


「残念ながら陣三郎さんはいませんが・・・、陣三郎さんからもてなすように頼まれてます。入って行きませんか?」


 まぁ、ジンが言ってたんなら・・・。


「よかった。さぁ、お入り下さい」


 中に入ってみた。

 確かにジンの匂いがする。


「どうしました?」


「ウォン」


 ジンに玄関から先は入っちゃダメって言われてるの。


「あぁ、大丈夫ですよ。わたしの家は特別ですから。それに陣三郎さんからの許可も貰ってます。上がって下さい」


 そっか、ジンがいいって言ってたんならいいか。


「はい」


 おじゃましまーす。


「そこに座って下さい」


 座布団?あれ?これジンの匂いがする。


「はい、陣三郎さんが座ってた物ですから」


 そっかー、いい匂い。おちつくー。


「これをどうぞ」


 あ、お水。


 じゃぶじゃぶ


 あ、おいしい。


「これもどうぞ」


 あれ?これササミ?私が元気ない時によくジンがくれたヤツだ。


 がふがふ


 おいしーっ。


「気に入っていただけましたか?」


 うん、おいしいよ。

 なんか元気がでるっていうか、ちからがわいてくる気がする。


「それはよかった」


 ・・・。


「どうしました?」


「クーン」


 ジンはどこ行ったの?


「それは・・・申し訳ありません。私の力が至(いた)らなかったばかりに・・・連れ去られてしまいました」


 ジン連れられちゃったの?悪い人に⁇


「悪い人・・・でしょうね」


 じゃあ、ジンってここで私を待ってたの⁇


「そうですね。ビリィさんの事を気に病んでおられましたよ」


 そっかー、やっぱりジン、約束守ってくれてたんだー。良かった、やっぱりジンは嘘なんかついてなかった。


「申し訳ありません」


 ううん、大丈夫だよ変な頭のお兄さん。

 ジンが困ってる時はわたしが助けに行くの。


「いや、でも」


 えっと、ジンはどこに連れて行かれたんだろ・・・。

 あ、ここで匂いが途切れてる。


「確かにそこで・・・」


 はーー、ふーー、せーのっ


「アォォォォォン」


 ジーーーン!


「おわっ⁉︎」


 ⁉︎


 あ、いけない。お家が壊れちゃう。

 あれ?お兄さんどうしたの?


「今、空間が歪(ゆが)みましたね」


 ゆが?


「もう一度、出来ますか?」


「ウォン」


 でも、これ以上やると、お家が壊れちゃうよ?


「大丈夫です。私はこう見えても結構偉い人ですから、多少家が壊れてもすぐに直せます」


 あ・・・、ごめんなさい。なんかお腹がすいちゃった。


「はい、沢山(たくさん)食べて下さい」


 あ、なんか豪華なお肉がいっぱい。でも・・・。


「大丈夫です。これは陣三郎さんを助ける為です。遠慮(えんりょ)せずいっぱい食べて、いっぱい力を付けて、思いっきりやって下さい」


 ジンを助ける為?


「はい」


 わかった。いっぱい食べる!


 がふがふがふがふがふがふ


 おいしーっ


「ささ、じゃんじゃん」


 がふがふがふがふがふがふ


 うまーっ


「どうですか?」


「ウォン」


 うん、行ける気がする!


「よし、ではやっちゃって下さい」


 ・・・。


「どうしました?」


 ねぇ、本当にお家を壊してもジン怒らない?


「大丈夫ですよ。それに何かあったとしても私がとりなしてあげますから」


 とり?まぁいっか。わかった。


 ふーーーはーーーふーっはーーーー


「アォォォォォォォォォォォォォォォン」


 ジーーーーーーーーーン‼︎


「おぉぉぉぉ、もう少しもう少し・・・、割れた‼︎」


 はぁはぁはぁはぁ、うまくいった?


「バッチリです。穴は固定しました。ビリィさん、この穴から陣三郎さんを探せますか?」


 うん、分かるよ。

 はっきりジンの匂いがするから探せるよ。


「流石(さすが)です。では、これを」


 ・・・首輪?

 私、ジンから貰った首輪があるんだけど。


「これは陣三郎さんを助ける為に必要なものをなのです。死んでさえいなければ後はなんとかしますから、持って行って下さい」


 うん、よくわかんないけどわかった。

 じゃ行くね。


「はい、お願いします」


 黒くて暗い穴、ちょっと怖い。

 でもジンがいるなら大丈夫。

 うん、大丈夫。ジン、今助けに行くから。


 ジーーーン!


 思いっきり、穴の中に飛び込んだ。

 ジン、今行くねー。

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