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七話連続投稿

三話目

 俺の悪友の中に武道に人生をささげた馬鹿がいた。


 歩く時の動き方から飯を食う動作、寝る時の姿勢まで武に繋がると常に考え、全てをその真髄しんずいに至る模索もさくに費やしていた。


 そんな悪友が不意と姿を消したのは歳が二十も後半に入った頃だと思う。前々から予測不能な行動をする奴だったので誰も心配していなかったが、姿を消して一年経ち、二年経ち、ようやく家族らが慌て出したが遅すぎたという他ない。

 行方不明から死亡説に変わり、葬式も済ませた三十も半ば頃、ふらっと姿を現した時はさすがに驚いた。


 その十年近くをどこで何をして過ごしていたのかと聞いたら、事も無げに・・・


 山籠やまごもり。


 なんて言ってきやがった時にはさすがに度肝どぎもを抜かれた。

 もう本当に馬鹿としか言いようがない。


 そんな馬鹿が町の隅に小さな道場を建てた時は正直な話、三年と持たずにあばら屋になると思ってた。


 だがこの悪友、人間としてどこかぶっ壊れてるのは確実なのだが、不思議な愛嬌あいきょうがあり、人あしらいが上手かった。

 まぁ、そんな悪友を心配して暇があったら酒を持って行き、農閑期のうかんきには孫を連れて習いに行ってたんだから、俺も人をとやかく言えやしない。

 そんなこんなで経営は常に傾いていたが、潰れる事なく悪友は好きな古武道を続けていた。


 そんな悪友が結婚もせずジジイになり、


「ジンちゃん、俺ついにやったよ!」


 と、嬉々として言ってきたのが三年前。


 何をやったのか、ついに何か殺っちまったかと若干心配したが、なんの事はない。やっと目標にしていた技の会得が出来たのだとか。


 悪友が言うには、人というものははくに支配されているらしい。拍とは拍動はくどうであり脈拍みゃくはくであり拍子ひょうし。つまりはリズムやビートだ。


 その拍を超えた先、無拍むはくに至る事こそが悪友のやってる古武道の究極点だった。


 俺も悪友から古武道を習っていたんだから理屈では分からないではないが、結局それがなんなのかはサッパリ分からなかった。


 実際に、見てくれ!と見せられた時には本当に困った。

 本当に見えないんだから。


 悪友が言うは、人の脳ミソというものはかなり曖昧あいまいなもので、あまりに予測を超えた動きを目の前にすると認識できなくなるらしい。


 目の前からき消え、真後ろに立っていた悪友はそんな事を説明していた。



 うん。


 阿保あほうみたいな能力を持っちゃった今考えても分からんよ悪友。

 お前ホントに凄かったんだな。


 そんでもってありがとう。

 お前に見せてもらった無拍には至れないが、その一つ手前、拍落はくらくは体現できたよ。


 不意に姫さんの前で立ち上がって見せた俺は、腕、肩、腰を同時駆動し、そして鎧の腕のみを伸ばす事で黒甲冑二人の頭を殴り飛ばした。


 拍落とは予備動作を完全に排除はいじょし、相手にコマ落としに見えるように攻撃する技だ。

 無防備に拳を食らった二人には、突然目の前に拳が現れた様に見えた事だろう。


 それでも、頭を吹き飛ばすつもりで殴った筈だが、吹き飛んだのは兜だけだった・・・って、なんだアレ?

 鎧から黒い煙が吹き出してて顔が見えない。


「やってくれましたね・・・、ギュスターブ様」


 はっ⁉︎


 ズガィィン


 杖を振りかぶっていた姫さんに気付いて、咄嗟とっさに腕を上げてガードしたが意識が飛ぶ程の衝撃を受けた。


 ドガッ


「ぐはっ」


 柱に激突した衝撃で肺の空気が押し出される。

 受けた腕がビリビリと痺れているが・・・、大丈夫だ動く問題ない。


 ふと、気配を感じ顔を向けると普通甲冑と目が合った。

 異常で異様な事態に困惑してんだろう。可哀想な程にわたわたとしてる。


「下がっとけ。ただまぁ、逃げるのが一番だとは思うけどな」


 おどおどと周囲を見回した普通甲冑は、カチャカチャと二回頷くと端の方に下がっていった。

 まぁ、やっぱり逃げるのは難しいよな。


 しかしなんだ。姫さんの細腕のどこにそんな力が・・・。

 あ、龍の杖が淡く光ってて紫の石が強い光を出してる。

 アレのせいか?

 ん?衝撃を司る宝珠?衝撃て・・・万知さんそういう事はもっと早くに


忌忌いまいましい」


 あ、姫さんの目から血の涙が・・・、今回はホントに流れてるな。へどろの目に血の涙って冗談抜きで怖いんだが。


「どこまでもわれの邪魔をする‼︎」


 それって俺の事か?っていうかわれ?お前誰⁉︎


「もう何もいらん!全てをろうてくれるわ‼︎」


 喰らう??

 あ、姫さんの後ろで首から黒い煙を吐き出している黒甲冑が立ち上がった。


 万知さんアレ何?

 邪法?鎧の中に生きてる人間と悪魔の魂を入れて?人を贄として悪魔を従者にする邪法とな。

 悪魔ねぇ。この世界そんなのもいるのか。

 で?アレはどうしたらどうしたらいいのさ?

 ・・・。

 どこでもいいから鎧を外して悪魔の魂が留まれなくしてやれば、そのうち止まると。

 そのうちって?場所にもよるけど10分位?


 ・・・。


 長いよ!


 首から煙を吐き出している黒甲冑が走り出して跳ね上がった。そのまま勢いに任せて振り上げた剣を俺の頭に向けて振り下ろしてきた。

 動き自体はさほど早くないが、剣速が異様に速い。


 この剣を身体をひねるだけでかわし、俺に向けて駆けてくるもう一体の黒甲冑に備えた。


 ズドンッ


 ⁉︎

 躱した先で何かが爆発した⁉︎

 見たいが見てる余裕が無い。刺突してきた黒甲冑の剣を躱し、腕を取って一本背負いに担いで、もう一体の黒甲冑に投げ飛ばしてやった。


 金属と金属がぶつかり合う派手な音と共に黒甲冑が転げて行く。

 転げていった先に逃げていた普通甲冑が蜘蛛の子を散らす様に逃げて行った。


 なんかシュールな光景だな。


「消えろ!」


 声に振り向くと赤い光りを発した杖をかかげる姫さんがいた。

 姫さんの上に大人一人すっぽりと入りそうな、赤くうごめく玉が五つ浮いてた。


 なにそのぶつかったら爆発しそうな玉⁉︎いくら広いっていってもそんなのぶっ放したら色んなもの消し飛ばない⁉︎


 考える暇もなく、姫さんがかかげていた杖を振り下ろした。

 赤い玉が身震いでもする様にぶるりと震えると、赤い軌跡を残して飛んだ。

 背後では元気に立ち上がった黒甲冑二匹がこちらに向かって走り出した所だった。


 ちょっ待っ⁉︎

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