帰還
7話連続投稿
1話目
はぁ、戻って来たか、ここに。
カチャリカチャリと鎧の音を鳴らして道を歩く俺の前に、高い城壁とその奥にそびえ立つ城が見えていた。
さすがに緊張するな。
夜中に城を抜け出し、ここに戻って来るまで丸一日といった所だろうか。
そう考えるとよくここまで情報を集められたものだ。
自分で自分に感心する。
もう少しで堀に架かる橋に差し掛かろうという所で門前に立っている衛兵に見つかった。
今の俺は魔王鎧を着ているので非常に目立つのだが、色がつや消しブラックな為か闇に紛れやすい。
そしてこの魔王鎧、収納、展開だけでなく、かなり自由な変形が可能だった。
やろうと思えば衛兵のような胸鎧にも、全身甲冑にも真似られる。色は変えられなかったが・・・。
今は初めてこの城に召喚された時とほぼ同じ形だが、一部分だけ形を変えてある。
顎の下部分まで鎧を広げさせ、顔の肉を押し上げ、皺を増やすと同時に見えにくくしてある。
俺の人相書きが出回ってるらしいが、誤魔化せる・・・はず。
そうこうしている内に衛兵が二人三人と姿を増やしていた。
明らかに俺を警戒している。
「こんな時間に何者か!名を名乗れ‼︎」
なんだ気付かなかったのか。こんな派手な格好してる奴は二人と居ないと思うんだが・・・。
まぁいいさ。
「儂はギュスターブ・フォン・コペルニクスである。お務めご苦労。通らせてもらうぞ」
歩みを止める事なく、声がよく通るように言ってやった。
俺の言葉に守衛たちが騒ついた。
流石に名前を聞いて気付いた様だ。
「お、お待ち下さい。今、人を呼びにやります」
慌てた様に何か言ってきたが聞く気はない。
「不要だ」
俺は歩みを止めず、進み続ける。
「ですが、我々では門を開ける事は出来ません。しばし、お待ちを・・・」
「不要だ」
俺は目の前に迫った門に手を掛けた。
かなり重そうだな。鉄板と木の板を重ねた門扉か。
よっ。
ギギ
押してみたが結構行けそうだ。
「不要とは・・・ギュスターブ様、なにを・・・」
ほっ。
ギッギゥギギ
「ギュスターブ様⁉︎ちょっ、だっ、やめっ⁉︎」
思ったより重いな。本気で行くか。
ギュィィィィッ・・・ドゴンッ
「ひゃあ⁉︎」
あ、壊れた。
門扉が蝶番から弾け飛び、門の一部を壊して吹き飛んだ。
あぁ、コレ内開きじゃなく外開きだったか。
どおりで変に重いと思ったよ。
重量のある門扉が城内を暴れまわり、凄まじい破砕音が鳴り響いている。
一緒に連れてくる訳にいかなかったケモ耳ズが安全に侵入出来る様に、少々騒ぎにしたかったんだよな。
少々ではない騒ぎになったが、まぁいいだろ。
「なんの騒ぎだ⁉︎」
「敵襲か⁉︎」
ガチャガチャとうるさい音を立てて全身甲冑やら衛兵やらが続々と集まってくる。
その視線は当然、トゲトゲしい黒い鎧を着て平然と歩いている俺に集まる。
一瞬、賊かと訝しむ目が驚きに変わり、狼狽へと変化した、その様子は見ていて面白い。
いいね。人相書きのお陰だね。
公爵の話でもあったが、重要人物としか知らされていない為、どう手を出していいのか分からんのだろう。
「騒ぐでない!あんなヤワな門で姫が守れるか‼︎猛省して貴様らが門扉の代わりとなれぃ‼︎」
歩みを止めないまま、言いたいままに言った。
事情の飲み込めない何グループかはこれで足止め出来るかもしれない。
十数人程遠巻きに付いて来るが、この位の人数なら許容範囲かな?
さて、姫さんはどこにいるかなー。
姫さんの気配はかなり独特なので見つけやすい。おどろおどろしいというか毒々しいんだよね。
お、居た。
そこが自室かな?
今の騒ぎの報告がされてるっぽい。
お、部屋から出て来た。
向かう先はどこかな?歩いてる先には・・・、やたらと広い部屋があるな。
あぁアレか、ゲームとかにもよくある謁見の間というやつか。俺もそこに向かわせてもらおう。
えっと後は・・・黒甲冑はどこだ?
あいつらは姫さんとは逆に見つけ辛いんだよねぇ。
「ギュスターブ様、門を壊されては困りますね」
おわっ⁉︎びっくりした。
気付けば目の前に立っていた。
いつからそこに居た?歩いて来たにしてもその甲冑は動くとかなりうるさい。
それで気付かないのなら魔法だろうか?
だが万知さんに反応はない。どうやって近付いたんだ・・・。やはりこいつらは要注意だな。
「ふん、押しただけで壊れる門扉に価値などないわ。それより貴様、顔を隠したまま口をきくなど無礼がすぎやせんか?」
暴論を振りまき強引にやり過ごして、剣呑な雰囲気を出して威圧してみる。
「失礼を致しました。無礼であるというのは重々承知しておりますが、これは姫様より直接賜りし近衛の証し、何卒、ご容赦下さい」
簡単には顔を見せてくれないか。
「ならば仕方あるまいな。まぁいい案内せい」
「はい」
所在不明になった王と王子、それと同時期に現れた黒甲冑二人。
順当に考えるなら黒騎士の中身は、王と王子である可能性が高い。
それに加えて普通甲冑の言ってた『あの部屋』が関係したならば話は繋がると思うんだが・・・。
不確定に不確定を重ねても結論なんか出ないよなぁ。せめて顔が見れたら・・・無理矢理にでも剥げないかな・・・。
さて、後はケモ耳ズか。
無事に潜入してるかなーっと。
いたいた。
俺が騒ぎを起こしたのもあって見張りも浮き足立ってるし、無事ここまで辿り着けそうだね。
よしよし。
フーカが一緒に行くと言って聞かなかった時はどうしようかとも思ったが、なんとか言う事を聞いてくれてよかった。
最終的に相対する事になるにしても、あっちの姫さんにも聞きたい事も幾つかあるんだよなぁ。
それに姫さん側の戦力が分からない内はこちらの戦力を明かしたくなかったし、獣人を連れてるのではそもそも入れない可能性もあった。
大事なのは過程じゃなく、結果なんだよな。
「こちらにてお会いになるそうです」
やたらとデカい扉の前に案内された。予想どおり謁見の間だな。
・・・。
?
勝手に開くと思ってたが一向に開く気配がない。
ふと黒甲冑を見ると目が合った。
いや、兜で目がみえないから、正確にはこちらを向いているのに気付いた、か。
「なんだ?」
「姫様へと謁見の前に一言申しておきます」
なんだ?
「急に姿を消されたかと思えば、この様に乱暴な所業を持って混乱と共に姿を現したあなたを、私は信用しておりません。いかに望まれて現れたにせよ、急な来城に誠意を持って謁見を許した姫様に対しても粗暴な態度をとる様なら・・・殺しますよ」
おぅ怖、釘刺されちゃった。
「承知した」
忠誠心はあるんだねぇ。洗脳されてるとか、操られてるとかではないのかな?
王と王子じゃない?本当にこいつら何者なんだ?
黒甲冑が扉を軽く叩くと、扉がゆっくりと開いた。




