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フーカ

 ゴスババアが鎧に戻った。

 なんか不思議だな、身につけてる訳じゃないのに鎧の中に居るのが分かる。

 とりあえず、また身に付けとくか。


 さて、黒甲冑の奴がなんなのかって疑問だけは残った感じかな?

 まぁ、姫さんがおかしくなった原因に推測が立った訳だし、黒甲冑が主犯の方向は消えたと言ってまずいいだろう。


 そういえば、普通甲冑が言ってた『あの部屋』ってなんなんだろか。


 ・・・。


 まぁ、いいか。


 次は狐耳を道連れにしない方法と、姫さんと勇者の魂を切り離す方法を考えなきゃか。


 どうするべ。


 まずは狐耳。


 万知さんが役に立たない以上、自分で考えんとなぁ。


 契約が成ってしまえばもう手を出せなくなってしまう様だが、正確にいえばまだ契約は成ってないはず。


 まだ履行してないからな。


 それに文章化している契約じゃないから穴はそこかしこにあるはず。


 ・・・と、思うんだが万知さんも狐耳も居ないんじゃなんも分からんな。

 この辺の話は狐耳が来てから詰めるか。


 保留と。


 次に姫さん。


 十八に勇者の魂が目覚めた。

 そんで勇者の魂は既に狂ってる。

 目的は何だろうか?ただ憎悪に狂ってるってだけじゃない気がするんだよなぁ。


 でも実際に不思議だな。

 転生陣を召喚陣にして使ったのって、姫さんの皮を被った勇者だし。


 自分の為に用意した物を他人の為に使った。

 勇者の魂はもう既に自分が勇者だった事を忘れてる?

 実際、元勇者だったと思える行動は一切してないしなぁ。


 それだと今のまおーを勇者に見せても意味はないか。


 そういや俺って姫さんに助けてって言われたんだったよな。

 助けて・・・か。


 ん?待てよ?

 もしかして召喚陣に作り変えて、俺を召喚したのって姫さん本人?

 国王が魔法陣を調べてたって言ってたな。

 もしかしたら、国王、もしもの為に残った物でも使える様に備えてた?


 ありえるな。


 と、するならば何が考えられる?

 俺の名前を聞いて、すぐさま契約を結ぼうとしたのは姫さん本人より先に自分の使役下置きたかったから。


 と、考えるなら、魔法陣に姫さん本人に有利になる細工があったかもしれない。


 もう一回、魔法陣を調べる必要があるなぁ。


 はぁ。


 万知さん、マテリアルブレイクとかよく分かんないナイフ作ったんだから、契約強制破棄とか、魂魄強制剥離みたいな、なんか色々と反則な魔法とか作ってくんねぇかな。


 え?無理?


 あぁあぁ、分かった分かった。いや、分からん分からん。細かいルールとか説明されても分かんないからやめて。


 唐突に帰って来たな。なんかいい裏技でも見つけたの?


 え?聖杯?


 あぁ、聖杯はあるよ。聖杯は認識出来る。


 いや、お前ら俺の中に入ってんのは分かるけど、どうなってんだよ⁉︎


 コンコン


 あ、誰か来た。


 誰かって狐耳しか居ないか。呼んだの俺だし。


「入れー」


「失礼します」


 前と同じ暗い表情の狐耳が戸を開けて入って来た。

ただ凄い身綺麗になって・・・る?


 もしかして、風呂入った?


 泥だらけだった狐色い髪がふわっふわになってるし、服が綺麗になってる。

 鎧はどこいった?

 っていうか、服が薄くない?鎧の下に着てたのってそれじゃなかったよな?


 寝巻き?


 なんだ?姫さんといい、こいつといい、この世界じゃ人に会う前に一々風呂に入んのか?


 そう思ってたら狐耳、膝を突いて手を突き、深々と頭を下げた。


「お待たせいたしました」


 心なしか震えてる。


 なんなんだ?


「いいから座れ」


「・・・はい」


 ゆっくりと立ち上がった狐耳が俺の近くまで歩き、俺に寄り添う様に座った。


 石鹸のいい匂いがする。

 いや、そうじゃなく、何故に隣に座る。


 ・・・。


 なるほど。

 姫犬が睨んでたのはこういう意味か。


 ・・・。


 めんどくせぇなおい!


「フーカ」


 狐耳がビクッと震えた。


「は、はい」


「話しにくいから向かいに座れ」


「えっ⁉︎あ、はい」


 何されるのか分からないって顔をしてるな。うん、最後まで知らない振りしておこう。



「さて、まずは確認をするぞ。俺とお前の間にある契約の内容についてだ。いいか?」


「あ、はい」


「お前は俺に、兄の助命と一族の救出を目的として嘆願(たんがん)し、贄(にえ)となった。間違いないな?」


「はい」


「だが、未だ一族の救出はされていない。これはまだ契約として成立していない。と考えていいのか?」


「いえ・・・、受諾された時点で成立しておりますので成否は関係ありません。失敗したならそれ相応のペナルティーがあるだけですから・・・」


もう契約はもう成ってんのかクソッ。そのラインを攻めるのは無理か。となれば・・・。


「あの・・・」


「なんだ?」


「英雄様は何をなされるつもりなのですか?」


「契約の破棄」


「それは・・・なぜでしょうか」


「意味がないからだよ」


「意味が・・・ない・・・」


「俺はそもそもから戦争を回避する為に動いてる。それには捕まってる獣人らの解放も含まれてる。お前が贄の契約なんかしなくとも成功すれば、お前の一族は解放される。だから無意味だ」


「でしたら、解放されるその瞬間まで、全力で助力いたします。無意味ではありません」


「助力は受ける。だが、一緒に死ぬ必要はないだろう」


「私は一族の為、命を賭けると誓ったのです。私が英雄様より後に死ぬ事はありません。英雄様の命は私が盾となりお守りします。例え事を成した後、不意に命を落とされる事があろうとも、喜んで死出の道をお供いたします」


 淡々とした言葉。再度確認されるまでもない事なのだろう。迷いのない言葉だった。

 マジで盾になる気か。


 ・・・これは俺の方が、覚悟が足りなかったと言うべきなんだろうか。


 いや、こいつについて俺がするべき覚悟なんかない。


 だが無理矢理に契約を解除したなら、俺はこの娘の覚悟を踏みにじる事になる。

 参ったな。


 だが、それでも俺はこの娘に死んで欲しくない。こいつが俺に覚悟を押し付けるなら、おれも俺の覚悟を押し付け返してやる。

 どうしたらこの娘の覚悟を汚さずに生かす事が出来る?


 きっと何がある筈だ。きっと・・・。


 そうだ、姫犬がなんか言ってた。


 代理受諾。


 そう代理受諾だ。


 ・・・なぁ、万知の書、教えてくれ。契約を代理受諾に、ずらす事は出来ないか?


 契約した俺と、死ぬ俺。それが別の人であると契約に誤認させて結果的に履行出来なくする。とかやれないか?


 ・・・。


 ・・・・・・。


 死でなければいいってどういう事だ?


 消滅?命ではなく存在の消滅?

 そんな事出来んの?


 出来ねぇんかい!


 あ?英雄と俺に?だから消滅ではない?

 そんな事出来んの?


 それは出来るんだ。


 ・・・。


 そうか、よく分からねぇが分かった。ありがとう万知さん。


「フーカ」


 少し黙っていたせいか、俺の声にフーカがビクッと身を震わせた。


「はい」


「覚悟を試すような事を言ってすまなかった」


 フーカに向けて頭を下げた。


「いえ、そんな私は英雄様の所有物です。頭を下げないでください。それに英雄様はこの世界とは別の世界から来た方と聞いています。この世界の習わしに疎(うと)いのは仕方のない事です」


「では改めて私に力を貸してくれるか?」


「はい、一命に代えましても」


「ありがとう」


確かに預かったよ。

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