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嘆願

 狐耳男の顔を見れば、薄暗闇の中でもハッキリ分かるほど青ざめてた。


 俺は平静をよそおいながら、狐耳男に近付く。

 目に見えて分かるほどおびえてる。うん、そりゃ怯えるよね。俺もかなりビビったもの。


 これ以上近付いたら逃げるんじゃないか、って所で立ち止まる。距離にして3mといった所か。


「まだ俺を捕まえるか?」


 狐耳男がワナワナと震えてる。


「そ、それでも私は一族の為にも、妹の為にもやらねばならんのだ」


 そう言って狐耳男が何もない腰に手を当て、何かを引き抜いた。

 その手には光る剣がにぎられている。

 光魔法、ブレード オブ レイ。

 この狐耳の一族は光を束ねて行使する魔法に長けた一族らしい。名を芙狐ふこ族。はすの多くある地域に住んでいる事から付いた名らしいが、見目麗みめうるわしい種族でもある為に付いたという説もあるそうな。


 うん、万知さん、お前が有能なのは分かったから少しだまろうな?

 もう勝手に動くなよ。


 さて一族は分かるが、妹って誰だろ。さらわれた中に居るのか、俺に吹き飛ばされた奴か。


「兄様!」


 おや、そっちだったか。元気な様でよかったよかった。


「兄様、おやめ下さい。その方は我らの手のおよぶ方ではありません!」


「フーカ‼︎」


 よろよろと立ち上がった狐耳妹に狐耳兄が駆け寄った。


「私は加減されたのです。あのまたたき程の間に八節もの魔法節を爪の先ほどの小石に刻み、私の意識を断つ為に、そして私達の戦意を削ぐ為に、凶悪に見える魔法を行使したのです」


 万知さん、あんたそんな事したの?


「あの方がその気になれば、我らなど一瞬で消し炭にされるでしょう。あの方を怒らせてはなりません」


 それは怖い。いや、マジで。


「しかし、フーカよ。それでは我が一族は・・・」


「兄様、お願いしましょう。私がにえとなりますゆえ」


 にえ?贄?いけにえ?何⁇


「それでは、お前は・・・」


「一族の為となるならば本望。覚悟は出来ております」


「フーカ・・・」


 今生の別れを惜しむかに抱き合う兄妹。

 えっと・・・、何このホームドラマみたいな展開。贄って何する気よ。


 狐耳妹が俺の前に歩いてきた。

 そして、膝を突き、手をついて深く頭を下げた。


「コーウェンギ・レン・フーカと申します。この度の非礼ひれいに対するびと一族の助命を、この身を持ちて嘆願たんがんいたしたく存じます。我が身をどうされようと構いませんどうか英雄様、どうかお聞き届けを」


 いらねぇよ⁉︎


「聞き届けた!」


 姫犬⁉︎テメェ‼︎


「感謝致します」


 ちょっと待て、感謝すんな!


 後ろを振り返り、姫犬を睨み付けた。

 姫犬が目を逸らしたが、これは許さねぇぞ。


「え、英雄様!ど、どうかご容赦ようしゃを‼︎」


 何?


 見れば狐耳妹がガタガタと震えている。

 耳はペタリと伏せられ、尻尾も尻へと丸め込まれている。


 ふと、バサッとした音に目を向ければ狐耳兄が泡を吹いて倒れていた。


「お」


 おい、大丈夫か?そんな事を言おうとしてたと思う。

 俺の言葉は、足に走った衝撃に消し飛んだ。


「英雄様!英雄様!兄の無礼はこの身にてあがないますゆえ、どうか!どうか兄をお許し下さい」


 目がうるませ、足にしがみ付く狐耳妹。許してくれるまで絶対に離さない、といった感のある命乞いのちごいをされてしまった。


 ・・・なんでこうなった。


「分かった。分かったから離せ」


「お、お聞き届け・・・頂けますか?」


 あー、っとなんだったか。

 そうだ助命?一族を助けて欲しいんだったか。


 答えに迷ってたらギリッとさらに強くしがみ付かれた。カタカタと震える振動ごと直に伝わってくる。


「大丈夫だ、分かってる。一族の・・・というか、戦争にならない為に行くんだ。無体むたいな事なんてしねぇよ。捕まってる連中も極力きょくりょく助けてやるから」


 くそっ、ガラにもなく熱くなっちまってたみてぇだな。


「あ、ありがとうございます」


 ぽんぽんと優しく狐耳娘の頭をでてやる。


「・・・離してくれるか?」


 落ち着いた。というか落ち着いたのを通り越してずかしい。狐耳を生やしているとはいえ、年頃の娘にしがみ付かれるというのはなんとも・・・。


「も、申し訳ありません。今、今離します」


 とは言うものの、身体はカタカタと震えたままだし、手は一向に離れる気配がない。


 うん、分かるわ。

 心が極限まで追い込まれちゃうと頭と身体が切り離れちゃうんだよね。・・・そんなに怖かったのか俺。


 狐耳娘の背中をぽんっと叩いてやる。


「あっ」


 手が離れた。

 背中から気を打ち込んでかつを入れてやる事により、身体の緊張をほどいてやる法だ。

 これは昔から通ってた古武術のジジィ・・・、まぁ俺と同い年なんだが、から習った技の一つだ。

 こんな簡単に出来る技じゃないんだが・・・、闇姫の事は言えねぇや。俺も十分に化け物だわ。


「あ、ありがとうございます」


 改めて平服へいふくする狐耳娘。

 もうこのやり取りはお腹いっぱいだよ。疲れたよ。


 狐耳娘を放置して姫犬に顔を向ける。

 こっちはこっちで青い顔をして、目に見えるほどに汗をいてる。


 まぁ、今なら横から口を出した意味も分からんではない。あそこで拒否したら話がどこにこじれて行くか分からんからな。


 ただ、事前に説明をしておけと、強く言いたい。襲撃されるのが分かってて言わん意味が分からん。


 後でちゃんと説明しろよ。という意味を込めてギリッとにらむ。

 姫犬ちゃん首を一つ縦に動かした。


 通じたかな?

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