クッキング爺(後編)
さて、さんが焼きをもう一個作る前に、味見しよう。
笹を開いて中を確かめる。
うん、ミディアムレア。おいしそう。
一口。
うん、これはこれでおいしい。酒が欲しい。
でもまぁ生の山椒は癖が強いから、次に作るのは少なめにして塩を振るかね。
あぁ、やばい。考えただけで美味しそう。
塩があるってだけでバリエーションの幅が凄い増えるな、もう一品は何作ろう。
とりあえず、ニジマスモドキを三枚に下ろして、
「持って来たぞ」
早いな。
しかし気配がない。さっきの今だし気は払ってたんだが、近くに来るまで気付かんかった。
もしかして、姫犬ちゃん護衛の犬耳ズより強い?
「おう、ありがとさん」
手の平サイズの皮の袋を貰った。
ぶつ切りにした切り身に山椒の実ちょっと乗せ、大葉をバッサリ、その上に貰った皮袋から塩を取り出す。
む、この塩なんか赤っぽい色してる。ちょっと舐めてみる。
うまっ!塩うまっ‼︎
岩塩かな?こりゃいい物貰った。
さて、塩振ってっと、
ゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッ
笹の葉に包んでポイッ
さて、残った半身で何するか。
ふと、姫犬ちゃんを見たらポイッしたちまきを興味深げに見てた。
ん?なんか布包を持ってる。
「その手に持ってるのは?」
「貴方の食事だ」
ほほぅ?
布包を貰い中を見る。
硬そうなパン一個に干し肉二枚、あと竹筒。
よかった。ホント自分で用意しようと思ってホントよかった。
パン・・・、牛乳があればバターでも作るが・・・。うん、無い物ねだりはやめよう、悲しくなる。
干し肉も鍋でもなきゃそのまま食うしかない。あと竹筒の中身は・・・水か。
ふむ。
黒曜石ナイフの先っぽで竹筒に文字を刻み、線で囲む。
そんでもって魔力を注げば冷水の出来上がり。
む、竹だと熱伝導率が悪いのか冷えにくい。しかも、文字がメリメリと音を立てて歪んできてる。
適、不適ってあるんだねぇ。
ま、一回使えればあとはいいや。
半身を薄く削ぎ切・・・、黒曜石のナイフじゃ薄く削ぐのキツいな。
と、思ってたら魔法が浮かんだ。
付与魔術、マテリアルブレイク
字面が物騒だな、おい。
まぁ、いいや。どうやって刻むかな。
パキィ
・・・刻まれたね。
万知の書微妙とか言いすぎたから、有能アピールされたのかな。
早速魔力を流して発動。
おぉぉぉぉ、すっげぇ切れるこりゃいいや。
さて、この薄切りにした刺身にキンキンの冷水をぶっかけて締める。
キュッとした刺身を笹の葉にも盛って塩を添える。
ニジマスモドキの洗いの完成っと。
洗いを持ってホットストーンの所に戻ったら姫犬ちゃんが、さんがちまきを食ってた。
見た感じウェルダンまで焼かれてるっぽいが、まぁそこは好みだろう。
「うまいか?」
「美味しい。これはなんと言う名の料理だ?」
「さんが・・・ちまき?」
さんが焼きでもちまきでもないんだよな、コレ。
「サンガチ巻きか、いい名前だ」
ニュアンスが凄い違う気がする。
「ま、気に入ったんなら幸いだよ」
「それはなんだ?」
「洗い」
「アライ?魚を生で食うのか⁇」
獣人なのに生食文化はないのか、意外だな。
「冷水で締めてるんだよ、生とはちょっと違う」
目の前で塩を付けて食って見せた。
うまっ‼︎冷酒をくいっとやりてぇ。
「食うか?」
姫犬ちゃん半信半疑って顔のまま頷いた。
「手の甲を出しな」
おずおずと出した手の甲に、塩を付けた洗いを乗せてやった。
姫犬ちゃん、それをこっちの顔をチラチラと見ながら口の中に入れた。
次の瞬間、耳が跳ね上がった。
「美味っしい⁉︎」
はっはっは。そうだろ、そうだろ。
けど、これは俺のだからな。
ホットストーンの前に胡座をかき、箸を持って手を合わせる。
「いただきます」
姫犬ちゃんがなんかこっちをジッと見てるが無視する。
先ずは焼き上がってる半身に塩を振り、一口。
うん!焼く前に塩振りたかった。
でも美味い。酒が欲しい。
さんが焼きも焼けすぎちゃったけど美味い。ビールでもいい。
「ぐっ」
なんか呻き声が聞こえるな。
「どうしたよ」
「いや、なんでもない」
そういや、この世界の食文化ってどんなんなんだろうな。
「私は戻るが、貴方はどうする?」
ふむ、空を見上げてみればまだまだ明るい。木漏れ日の角度から見ても日暮れまでは三、四時間はありそうだ。
「牢屋に戻ってもいいなら、そこで寝てるかな」
もぐもぐ。
「わかった。では時間になったらそこまで迎えにいく」
「あいよ」
チラリと姫犬ちゃんを見た。未練っぽい顔は既になかった。切り替えの早い子だが・・・。
「姫さんや」
そういやこいつの名前、聞いてねぇな。まぁ、俺も教えてないし、おあいこか。
「なんだ」
「口元に食いカス付いてるぞ。顔、洗ってから戻れよ」
「なぁっ!」
顔を赤くして腕で顔を隠す姫犬ちゃん。かわいいね。
「分かってる!」
あら、怒って行っちゃった。
ウチの犬もドジした時、誤魔化して知らん顔してたなぁ。追求すると怒られるんだよな、懐かしい懐かしい。
今、あいつ何してっかなぁ・・・。
もぐもぐ。




