表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
華龍Story  作者: ryo
81/142

第81章

81.

美女(多少訛っているが)と美少女(元ドラゴンなので多少礼儀に欠けるが)のウエイトレス二人を従えて、颯爽と本日のメインディッシュを運び込む。ドワーフが造ったのであろう基本的に色彩の鮮やかな陶器の皿のストックの中にあって、唯一見つけた薄い黄緑色の皿は、どことなく和のテイストを持っている。和食は、まずは目で楽しむところから。思った以上に、天ぷらの薄い色合いを引き立ててくれている。厨房では皿の選定にまで拘りをみせる俺に、若干二人の視線が痛かった様な気がしないではないが、俺的には料理の出来栄え含め自己満足の境地。

お客の待つ部屋は先程までの酒盛りの結果として蒸留酒の豊かな芳香が残っていたが(厨房の魔法の換気扇だか換気孔は揚げ物の匂いを厨房から居間に漏れ出させる事なく、ちゃんと機能している様だ)、瞬く間に俺たちの持ち込んだ『猪っぽい獣の肉と、イモとキノコの天ぷら』と、間に合わせの『卵スープ』の香りに取って代わられた。

お客たち二人は、ソファに向い合せて何事かを談笑していた様だ。

テーブルに自分たちも含め人数分のお茶とスープ、敷紙の上に天ぷらの盛られた皿を配膳していく。


「本来なら、私の方がもてなさなくては、ならないのに。食事まで供して頂くとは、何と言ってお礼を言って良いやら」

エゼルがソファから立ち上がって、机越しにお礼を言ってくる。穏やかな所作で、優雅だが嫌味ではない。シャーリーも慌てて立ち上がると、トレーの上からナイフとフォークを取って配り出す。


「お気になさらずに。それより、シャーリーとはどんな話をされていたのでしょうか?シャーリーは亡くなった母と二人暮らしだったそうで、余り人前に出た事がないのです。シャーリー、ちゃんと礼儀正しく出来たかい?」

慌ただしく食事の準備を進めながらも、二人の会話の内容は気になるところだ。長い年月を経て絡み合った想いは、綺麗に解けたのだろうか?


「はい!エゼルさんには、私がとてもおしとやかだと、褒めて頂きました!エゼルさんが、ドーナの村の人々の暮らしを聞きたいとおっしゃったので、日々の暮らしとか村の様子とか。それで今は、お母さんが亡くなった時の様子を、お話していたところです。あ、あの、皆さんにお料理作るのお任せしてしまい、申し訳ありませんでした」

ナイフとフォークを配り終えたシャーリーが、ペコリと頭を下げる。普段なら頭を撫でているところだが、流石にそーいうのは、控えるぐらいの常識はある、多分。

だが如何やらエゼルは最後までエゼルとして、シャーリーに接するつもりらしい。俺からすると思うところがない訳でもないが、本人がそうしたいなら異論を唱えるつもりもない。


「そうよ、シャーリーがいなかった分、わたしが・・・、ひゃっ!?」

そういう嘘をつく悪い娘には、天誅!

後ろから脇腹に、人差し指を差し込む。ちょっと、ぷにっとした感じが良いが、ちょっと柔らかすぎませんか、ソフィアさん?

これは一度、体中のぷにぷに度をチェックした方が良さそうだね。今夜とか。


「さあ、天ぷらが冷めないうちに、食事にしようか。ちょっとだけ、ソフィアの削ってくれた岩塩を上から振って。掛け過ぎたら、しょっぱいから気をつけて」

一瞬、エレインも口を開けたが、思わず床に座り込んで恨めしそうに俺を見上げるソフィアの惨状に気が削がれたのか、慌てて口をつぐんだ。流石悪女、正しい判断だね。判断を誤った場合のリスクについては、今夜エレインにも教えてあげるからね。

再び皆で食事の席を囲み、天ぷらを摘まみつつ談笑が始まる。

この世界は概して、元いた世界よりも過酷だ。

『魔物』という存在が絶えず人々の安全を脅かし、人間の間での人種や肌の色の違いを遥かに超える差異を持つ複数の種族が、一つの大陸の中に住んでいる。

だが、少なくとも種族の違いは、お互いが惹かれあう事を妨げるものではない。

同じ様に、名乗る事のないままの再会でさえも、父と娘のおそらくは何十年という別離の不幸を洗い流していく。今日の食事が、その手助けになるならば、それは満足すべき事だと、俺はそう、思う。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ