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華龍Story  作者: ryo
33/142

第33章

33.

俺の元いた世界、西欧では古来『決闘』は単なる私闘には非ず『神は正しいものに味方する』という理念に基づき、ひとつの裁判の形態として成立したと言われる。その結果は『絶対的なもの』として受け入れるしかなく、また、申し込まれた決闘を受諾しないことは、『死に値する不名誉』とも考えられていた。その正式な申し込みは世に言われる通り、左手に嵌めた白手袋を相手の足元に投げつけるか、顔を白手袋ではたくことに依った。

この白い色に意味があるのかは俺の知るところではないし、この世界の神にしても味方する相手の選定基準は異なっているのかもしれないが、エルシャナの『決闘』申し出には明確な意味がある。異世界にまで来て、この俺が元いた世界では縁のなかった『決闘』などという物に関わるとは。もちろん、こちらの世界には白手袋などという規則はない様だが、法のないに等しいこの世界に於いてはごく一般的な係争の解決法なのかもしれない。

何れこの世界の法律にも詳しいらしいソフィアに訊いてみよう、もし、俺がこの決闘に生き残れたならば、だが。


「何で手紙を届けに行って、勝手に決闘なんか決めてくるのよ!?大体、何時まで待ってもフィルは帰ってこないし、ご飯は出てこないし、わたしたちが餓死しちゃったら如何してくれるのよ!」

現在俺は、絶賛怒られ中。焚火の横で正座させられ(あったかくて良いよね)、正面には仁王立ちのソフィアがかなりお怒りモードだった。既に胸の前で腕が組まれているので、この場に於いては少なくとも俺は無駄な努力はしない。合理的だな、俺。

焚火の周囲には何本か小枝に刺さった鹿っぽい獣の肉が炙られ、食欲をそそる匂いを発している。周囲に『結界石』に依る結界が張られていなければ、森の野獣たちを大量に招いていたところだろう。肉はソフィアとシャーリーが一緒に、俺がエルシャナのところに行っている間に狩ったもので、二人は俺の帰りを今か々々と待っていたそうな。だったら先に食べていれば良いのに。その辺りが俺に対する遠慮なのか、単に料理(という程ではないと、毎回思うのだが)が出来ないが故か、未だに判別に苦しむところではある。

どちらが重要か、あるいはどちらがより一層、ソフィアの癇に障るかと言う事はさておき。既に無限ループに入って久しいお怒りのフェーズ2は食事事情その辺りで、因みにフェーズ1は当然、決闘の是非だった。

「多分、そのエルフの村長のガキって奴、この村では最強だわ」

何か口調が限りなくエゲツナイんですけど、ソフィアさん?

それに村長の子供じゃなくって、今や村長自身ですが。いや、年齢的には長寿のエルフをして、元ドラゴンから見ればガキと言い切るのか?どんだけ年上好きなんだ俺?

肉の炎に面した部分を回転させるタイミングが俺の僅かな休息時間で、正座を解いて俺は肉の生焼けを防ぐべく小まめに且つ丁寧に慎重に角度の調整を繰り返している。のだが、そろそろ焼けてきたし、取りあえず肉をひと塊渡せば、ソフィアも静かになる気はする。お腹が空いている事が、ソフィアの苛立ちを加速させている事は間違いないし。

「もし、フィルが死んだら、可愛い女の子二人道連れなんだからね!そこんとこ、ちゃんと理解してるの!?」

えーと、別に俺が死んでも、路頭に迷うならともかく、お二人が道連れになる必要性はないのでは?口にすると、真相を知るより先に新たな説教が始まりそうなので、さっさと良く焼けた塊を渡す。


「エルシャナは四大元素全ての魔法に通じていて、たとえば土の魔法で自分の前に障壁を造り、こちらの矢を風の魔法で逸らせつつ、その陰から炎の矢を射てきます。私では一度に二つの魔法の重ね掛けをする事が出来ないし風と水の二つの魔法しか使えませんが、エルシャナは四種類の魔法のうち、任意の三種類を同時に使えるはずです」

俺はシャーリーにはまだ何故そもそも、俺とエルシャナが決闘なんて事になったのかを話していなかった。もし、かつてエルシャナがシャーリーを、そう、彼にとってのシャルレインを好きだったと伝えたら、如何思うだろう?それを伝えずこうしてシャーリーから、エルシャナの情報を聞き出している俺は卑怯な奴と言う事なのだろうか?

ちょっと、気が滅入ってくる。


「そうね、魔法使いの戦い方の基本は、魔法に依る防御と遠距離攻撃だわ。きっちり守りつつ、優位に攻める。魔力の高いエルフならば、魔力切れは余り期待出来ない相手でしょうしね」

実はエルフというのは、バランスのとれた戦闘職だったらしい。俺の様に攻撃に特化した様な奴からすると、正統派というのは実に攻め難いだろう。遠距離から牽制が可能で、接近を許しても更に防壁があるとするならば、俺の『同田貫』の斬撃がエルシャナの奴に届くか如何か。遠方から足止めされれば、俺の敗北は必須だろう。

大分(食欲が)落ち着いたのか、ソフィアも大人しく俺の傍で自分の仕留めた鹿っぽい肉を頬張っている。口の周りが肉汁だらけで、ちょっとワイルドで卑猥な感じ。ナイフで少しづつ削っているシャーリーとは実に対照的だが、シャーリーとてゆっくりではあるが、あの大きさの塊を食い尽くす事には変わりない。うちのパーティーって、エンゲル係数高いよね。

俺は自分の分の塊を少しづつ削って、横に仲良く寝そべるジルとジバに分け与えながら考える。


何故、俺は友と剣を交える必要があるのかと。

音を立てて、焚火の中で燃え盛る薪が爆ぜる。

徐々にそんな理由などは如何でも良く、ただただ、俺も奴も勝利を求めるべきと気付く。

俺たちは友であり、そして自ら望んで命を掛ける、それだけの事。

明日の朝には、全てが決しているだろう。


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