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華龍Story  作者: ryo
137/142

第137章

137.

人が人を求めるのは、寂しさ故か? この場合は一方は元ドラゴンではあるが、まぁ、余り変わらない。

俺たちの出立を送る酒宴の翌朝、ヴィヴィアンとの密会を見抜かれた俺は代わってソフィアに絞られ『もう、これ以上は無理』と思ったものだが・・・、人間為せば成るものだ。(因みにこの時は、シャーリーに薬を貰うタイミングがなかったので、自力だ)

朝食後、更に『虚無の狼の迷宮』への出立を遅らして、ソフィアと綿密な作戦会議を開くことにした俺は(ありがとうシャーリー。今度こそ、もし、きみの薬が無かったら、今頃俺は腹上死の願望を達成していたはずだ)、体調に問題のないエレインから伯爵に、もう一日だけ伯爵の館に泊まらせて頂きたい旨を申し入れて貰った。

魚と客は、三日経つと鼻につく。

絶対『何なんだコイツ』って、思われているな、俺。


「それで問題は、フィレンツェのいない昼食の準備を、如何行うかだ」

残る隻眼を閉じ、アリシアが腕を組んだ。

周囲には、重苦しい空気が流れている。

幸いにして昨夜の痛飲の影響は、既にシャーリーの魔法薬によって一掃されていた。そうなると、今朝の朝ご飯を辞退してしまった事が悔やまれる。何故、無理してでも食べなかったのか? 努力もせず、諦めた朝の自分が許せない。アリシアは深い反省を胸に刻み、今後はどんなに辛くとも食事を抜くなどという暴挙を為すことはならないと、固く自らに誓うのだった。

そして今は、その失敗の結果として、お腹が空いていた。


「ソフィアお姉さまの無限倉庫の中身も、使えないです」

あの後、ご主人さまとソフィアお姉さまが、シケこんでしまわれたのは、仕方のない事ではある。でも、お姉さまは今日、怒ったり泣いたり忙しくて『(エレインさんとアリシアさんは捨て置いて)私も一緒に・・・』と同衾を申し出るのは気が引けた。

はぁ。要らぬ遠慮が招いた、失敗だった。

と言って、今更閉じられたドアを叩くのは、やはり気が引ける。

ずっと、お姉さまの喘ぎ声が聞こえるし。


「普通にアリシアはんから、辺境伯にわてらの分もお願いすればええと思うで。フィレンツェはんとソフィアはんの分は要りまへんちゅう事で、ちびっとは負担はすけへんと思うで」

ここは、唯一冷静なわいが、ちゃんとしへんといけへん。そもそも、ヴィヴィアンの我儘に皆を付き合わせた責任が、まるっきしへん訳かてへん。

これについては、ヴィヴィアンと感覚を共有してるさかい、(・・・ゆんべは、凄かった)皆にはわいも一抹の申し訳なさを感じてへーる。

ほんのちびっとだけ、だけれど。


「それは私も、真っ先に考えたのだが、伯爵も今は村人からの貰い物だろう? 『そろそろ、村人の中で料理人が務まりそうな者を探さなければ』とか話しているのを聞いてしまってな。言い出せなかった」

回復力は高いが、多少融通は効かないものの礼節をわきまえたアリシアとしては、聞いてしまった以上は無理は言えない。

そんなアリシアを理解している他の二人も、無理強いは出来ない事ぐらいは承知している。


「えっと、私の造る薬の材料の一つなんですけど。水を吸うと、殻が弾けてゼリー状に膨らむ実があるんです。それと水を同時に飲めば、お腹が減っているのは感じなくなります!」

さすがエルフ(クオーター)、南米産のチアシードに似たダイエット食も知っている。問題は、味がない事だろう。何かに混ぜるなら兎も角、文字通りの肉食系女子たちには、それは最終手段の様に思えた。


「確か、ゲテモンはねきにいなくても、川はあるちゅうわけやよね? わいが川の水を凍らせれば、新鮮なお作りが出来まんねん」

それはお刺身ではなく、捌いてもいない単なる冷凍物の魚だった。

『深海の乙女』がお刺身とか言って良いのか?とか、そもそも何処でお刺身何て言葉を知ったのかとか、突っ込みどころはあった。

だが、それは置いておいて。

皆、何となく『それは、ダメだろう』的な沈黙で周囲を包む。


「いっそ、私がその氷ごと、焼いてしまおう」

アリシアが一人顔を輝かせるが、他の二人が力なく首を振った。

皆、自分の問題は見えないが、人の欠点は良く見えているものだ。

アリシアの火力がゼロか一か、しかないのは、経験的に知っている。

つまり、焼けてないか、消し炭だろう。


「何だお前たち、ドアの前で立ち尽くして。ソフィアは後から来るから、先に昼食の準備をさせて貰おう。お前たちも食べるだろ?」

部屋の扉を開けると、何故かソフィア以外の三人が何事か廊下で話し合っていた。何か余程深刻な問題を相談していたらしいのだが、俺の顔を見て安心したのか、次々と抱きついてきた。シャーリーは普通だが、昼なのにデレっぽいアリシアとか、素直な悪女とか、微妙にこちらのペースを乱される。

じきにソフィアも起きるだろうから、今から作れば丁度良さそうだ。

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