第134章
済みません、暫し休載。8月17日(月)再開予定です。
134.
昨夜のうちに予定した『虚無の狼の迷宮』への出立が遅れるだろう事と(つくづく、俺たちは朝弱いよね、何でだろうね)、朝も厨房を借りたい旨を伯爵親子に伝えてあるので心置きなく、のんびりと朝食の準備をさせてもらう。伯爵親子の朝食は普段から自室でパンと紅茶だけ(何か、英国貴族っぽい)なのだそうで、俺の準備は不要となった。シャーリーとアリシアも何かを食べたいとは、とても思えないだろう状態だし、朝食の席についたのは、俺とソフィア、エレインの3人だ。
珍しい組み合わせだが、これは両手に、・・・大きい系ですね。
「それじゃあ、エレインはヴィヴィアンが来ることを、最初から知っていたのね? まったく・・・。ちゃんと最初から言っといてよね」
ぷんぷん、と怒って見せるソフィアも可愛いが、実際の怒りは先程存分に俺で発散しているらしく、今はふりだけの様だ。こちらは朝から大分、ダメージが蓄積しているのですけどね。下半身とか。
エレインに向かって言うだけ言うと、皿の上の目玉焼きをナイフで切り分けて、フォークの背で器用に口の中へと放り込んだ。
「へー、済みまへんどすえ。ヴィヴィアンもこれで、取り敢えずは納得してフィレンツェはんを送り出してくれそへんです」
エレインが如何にも口先だけ、という感じで謝ると、パクリ、と炙った干し肉の切れ端を口に入れた。流石悪女その2にして、主犯格悪女その1の共犯者。聞く者に反省の欠片も感じさせない、見事な受け答えだ。
ある意味、エレインの才能なのかもしれない。
「午後にはシャーリーとアリシアも、少しはましになっているだろう。ところでエレイン。『虚無の狼の迷宮』の主というのは、そんなに危険な相手なのか?」
正直なところ、俺は『虚無の狼の迷宮』の主の危険性というのが、全く分かっていない。分かっていさえすれば、エゼルの願いを断っていたのかもしれない。それを言っても詮無い事ではあるが、何の情報もなく敵に挑むのは余りに愚かだろう。少なくとも俺にその主を斃す事を期待した者たちは、その主の危険さを理解していると推測出来る。
だが、知っていたとしても、多分、俺の結論は変わらなかっただろう。自分でも残念な事に、俺はそういう人間だった。
だが、それはそれ。ぜひ、事前に情報は欲しい。
「わいも、直接『虚無の狼の迷宮』の主に会った事はあらしまへん。やけどアンタ、古来より神々でだけも、かの狼を怒らせる事は控えとったと言いまんねんわ。もう、何百年も昔の話やけど」
俺の戦う敵は、伝説の迷宮の主という訳だ。
そう言えば、もう一人、伝説ではないかもしれないが、元迷宮の主が居る訳なのだが、ソフィアは何か知っているのだろうか?
ちらとソフィアを見ると、とうに干し肉と卵焼きは食べ尽し、つまらなさそうに葉野菜のサラダを突いている。
ちゃんと、野菜から食べないと太るぞ?
て、いうか、野菜だけ残そうなんて、俺が許さないからね?
「・・・嫌な女よ。わたしも、ちょっと体調が優れないから、出発まで部屋で休んで来るわね。ごちそう様でした」
フォークを置くと、ソフィアはさっさと部屋に引き上げてしまう。
その後ろ姿を見送り、思わずエレインと顔を見合す。
肉と卵は食べて、野菜だけ残して『体調が悪い』はないよね?
そう、じゃなくて。如何やら『虚無の狼の迷宮』の主は、ソフィアの知り合いらしい。確か、女って言ったか? そうか、既に悪女には二名ほど知り合いがいるのだが、他にも伝説級の悪女がいるのか。この世界も広いよね?
「ソフィアはんも、知り合いが相手では、戦い辛いでっしゃろね?」
それはYESとも言えるし、NOとも言える。
俺なら、たとえばダークエルフのディーンと戦うというなら、その戦いに導く衝動を、自分でも途中で止める事が出来るかどうか。エルフのエルシャナが相手でも、多分そうだ。友とは、得てして、そういうものなのだろう。
そう言えば。
まだ、ソフィアと出会ったばかりの頃。ソフィアのいた『深淵の竜の迷宮』のあるリシタの街で『虚無の狼の迷宮』に挑みたいと言った俺に、ソフィアは『別の女が欲しいの?』と問い返してきた。てっきり俺は、からかわれただけだと思って、そんな会話の事はすっかり忘れていたのだが。
あれはソフィアの本心だったのかもしれない。龍虎争うならぬ、竜と狼か。
ここはソフィアに任せて、俺は見学に回っても良いですかね?
両者の着用する水着は、もちろん俺が用意するし。迷宮だけあって泥水の溜まった闘技場を作る事は、けして不可能ではあるまい。
見知らぬ美女に挑む、スク水ツインテール姿のソフィアを夢想しつつ、俺も皿に残った最後の乾し肉の切れ端を口に放り込んだ。
済みません、暫し休載。8月17日(月)再開予定です。




