第127章
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バイルクラウの村の商店を梯子して、俺たちは無事に『虚無の狼の迷宮』に潜るのに必要になりそうな食料品や消耗品を買い集める事が出来た。流石に原産地という事で、魔物除けの香木だけは安く手にはいるが、後は割高な品が多いが仕方ない。買った物以外でも医薬品については、後でシャーリーに追加で作成を頼む必要がありそうだ。
俺専用の回復薬も追加しておいて貰おう、ついでに。
商店の多くは在庫を店先に並べられる程度の規模で、俺たちも店の在庫を空にしてしまう程には必要な量は多くはない。但し、肉類を除いては、だが。問題は食べ盛りの娘たちの食欲を満たすには、お下げ髪の少女の穀物店が扱う干し肉だけでは、少し量も種類も不足を感じる事だろう。その分、小麦粉やひよこ豆っぽいのを大目に仕入れたのだが、文字通りの肉食女子たちの腹を満たす為の施策を検討しておきたいところだ。
「ここいら辺は『虚無の狼の迷宮』から湧き出た魔物が徘徊しているので、食糧になる野獣を見つけるのは、かなり難しいと思います」
迷宮で捜索すべき兄の身体的な特徴をソフィアに伝え終わったお下げ髪の少女は、少し悩ましげに、そう教えてくれた。
森林地帯に於いては、道すがら仕留める行きずりの野獣の肉は、うちの娘たちの旺盛な食欲による消費を上回っていて、調達と消費のバランスが十分に成り立っていたのだが。
「そうか、まぁ仕方ないか。俺たちも、今日から主食を豆にしよう。『虚無の狼の迷宮』の探索に、どれだけの日数が掛かるか分からないしな」
この辺りで干し肉以外を手に入れられるか?という問いへの、先程のお下げ髪の少女の回答で、俺たちの調達と消費のバランスが崩れた事が確定した以上、緊縮財政への移行は必須と考えられる。ある意味、当然の事だろう。
「で、でも、まだわたしの無限倉庫には、かなりのストックが・・・」
何やら不満そうなソフィアが、喰って掛かってきた。うん、その上目がちの視線、後でツインテールでやって貰おう。だが、まずは、そのお腹のお肉を摘まんで迎撃する。
「それはそうだが、毎日肉ばかり食べ続けたら、そう何日も持たないだろ」
それに、そのチェインメイルが着られなくなったら困るでしょ、ソフィアさん?
着られなくなったら、即そのチェインメイルは解いてのビキニ・アーマーへの魔改造は、謹んで俺が実施させて頂こう。
まずは・・・、むにむに。
「やっぱり、一度森林地帯まで戻って、狩りをした方が良いかも・・・」
顔が赤くなったり、青くなったりと忙しいソフィアだが、最終的にがくりと床にしゃがみ込んだ。
代わってシャーリーが、両手を胸の前で握りしめて詰め寄ってくる。ツインテールを揺らして必死な表情なのが可愛いが、残念ながらその案は却下だ。
「ダメだな。それでは往復と狩りで1週間くらいは、余計に掛かってしまうだろう。折角、バイルクラウの村に辿り着いたのに、それでは余りに時間が勿体無い」
ぐりぐりとシャーリーの頭を撫ぜつつ、さり気無くツインテールに隠れた耳も、つつっ、とマッサージ。隠されたモノは、ほら、確認が必要だよね。ソフィアに続いて、シャーリーも地に沈んだ。
ダメですね、今夜は、この程度でダウンは許されないよ?
「あ、あの、迷宮の入口がある辺りを通る街道からは少し外れるのですが、この先の少し南に岩山があって、そこなら食用にもなる野獣の狩りが出来ると思います。東の森林地帯まで戻るよりは、1日2日の迂回で済むと思いますが・・・」
妙なところで、助け舟が出された。お下げ髪の少女が山積みの小麦の袋の後ろに下がりながら、教えてくれた。
・・・だから、キミは逃げなくても良いのに。ホンモノは、ダメだって、一応はね。
提案はありがたいが、如何したものか?
床から俺を見上げる何故か涙目の二人を見るに、このまま肉食禁止を宣言して残りの二人からも同様の反応を示されるよりは、俺もここいらで妥協が必要と言う事なのかもしれない。
「そうか、ありがとう。では、調達の不足はその岩山で補う事にしようか。済まないが、その岩山の場所を教えてくれるか?」
ぱぁっ、と足元の二人が顔を輝かせ、互いに抱き付いて喜びを共有している。
それも可愛いが、俺としては先程の涙ぐんでの上目遣いも捨て難い。
ツインテール且つ涙目で、しかも上目遣い。
これだ。
ある意味、最強とは何かを追求しているな、俺。




