表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
華龍Story  作者: ryo
124/142

第124章

124.

辺境伯がこの『バイルクラウ以遠辺境伯』としてこの地に着任したのは、もう30年以上前の事だ。現辺境伯の父方の祖父である前伯爵が死去し、祖父の直系の現辺境伯の父親が帝国議会の要職にある事を理由に辺境領の継承を辞退して、代わりに自分の息子を辺境領の継承者として差し出した。次男であった現伯爵は帝都で父親の職を継ぐ可能性は少なく、地方の祖父の領地を引き継ぐ事を選び残りの人生をこの辺境の地で送る事を了承した。

幸いにして西方の隣国であるランス王国との関係は、お互いに領土的な野心がない事から、永きに亘って良くも悪くもないといった感じで、両国の国境線も余り明確な線引きがないままに現在に至る。両国は交流も通商も乏しいので、お互いに関心がないのかもしれない。

辺境伯が継承したのは主に、このバイルクラウの村と広大な荒れた領地、そして『虚無の狼の迷宮』の管理という悩ましい問題、という事になる。


「帝国とランス王国の間の通商は、かなり乏しくてな、ランス王国に巣食う野盗たちはこれまで、めったに行き来のない隊商よりは、ランス王国内の豊かな村々を襲って日々の糧を得てきたらしい」

まだ顔色は良くはないものの、辺境伯は元々話好きな性格らしく、いまだ俺に対して強い警戒心を懐いているらしい令嬢(やたら視線が冷たい気がする)に体を支えられながらも、ベッドの上で滔々とこの村の抱える現状を語り出した。

「ところが、最近ランス王国側で村々を襲う魔物が増えて、村々がその防御を厚くしているのだそうだ。それで、村を襲えなくなって喰いっぱぐれた野盗共が、わざわざ国境を越え、このバイルクラウの村まで遠征してきたと言う事だろう。あんたが倒したのは、そんな幾つかある盗賊団の首領の一人で、この村を襲ってはみたものの、あんたたちに次々と手下がやられて、如何にか生き残ろうとわしと入れ替わったという訳だ」

結局、統制の取れていない盗賊団は、如何にか村の要である領主の館を襲ったまでは良かったが、いざ略奪というところで多くの手下を失い霧散してしまった。元々余り計画性のある襲撃ではなかった事が幸いした様で、領主の館を切り盛りしていた奴隷や執事たちが多く殺されたものの、村人たちの被害は少なかった。今は死んだ執事たちの埋葬や館の片づけを、村人たちが自ら買って出てくれている。如何やらこの話し好きの老辺境伯は、それなりに村人たちからも慕われているらしい。


「それで、村の騎士団を差し向けた、新しい入口というのは?」

既に俺の右腕はアリシアから解放されているが、先ほどのアリシアの疑問は俺としても今後の為に是非聞いておきたいところではある。

因みにシャーリーは自分の場所を取り返す為に、アリシアの脇腹をくすぐるという強行手段に出た。これがまた、この場に混乱をもたらす結果となり、如何やら伯爵令嬢の俺に対する評価を更に下げる要因となっている様だ。

それって、俺のせいなのか?


「おお、それだ。既に迷宮へ至る幾つもの入口は確認されておるが、これまで何度も騎士団を差し向けたが、どの入口を進んでも、奥で互いに繋がってはおるが結局は行き止まりでな。冒険者たちの報告も、同じじゃ。現れる魔物も大きな蜘蛛だとかばかりで、伝説に謳われた狼の姿はない。ところが、新しい入口の直ぐ先には、狼がおった。何故今頃になって新しい入口が開いたのかは分からぬが、その先に『虚無の狼の迷宮』の主が居るならば、これを斃して元を絶てば、迷宮から湧き出る魔物自体の数を減らせるだろう。安全が確保されてランス王国との通商が活発になれば、この村も豊かになろうと考えてな。気が急いて、騎士団全部を出してしもうた」

なるほど、ソフィアのいた『深淵の竜の迷宮』も、『竜の間』に繋がる本筋と、脇道の主である大トカゲがいた通路は途中から完全に分かれていた。これまで知られていた入口は脇道で、新しい入口こそが本筋と言う事なのだろう。


「それで、騎士団はこの迷宮の主を、見つけたのかしら?」

シャーリーの強硬策で撤退したアリシアに歩調を合わせよう・・・、などとは一切考慮も配慮もないソフィアが、相変わらず、しがみ付いてというよりは、俺の左腕を抑え込んだまま問いかける。

その、むにっ、とした感じはけして嫌じゃないんですけどね。

シャーリーやアリシアではあり得ない(失礼!)感触ですね。

血流が止まる程、強くしがみ付いてなければ、ね。これだと何とか固め、って感じ?

まぁ、良い。

周囲の混乱をよそに冷静に俺の腕を離そうとしないソフィアの姿に、伯爵令嬢の視線が更に冷たくなったとしても、気にしないですしね、俺は。


「・・・いや、既に1週間。騎士団とは連絡がついておらん」

首を振る老伯爵が、苦々しげに答える。

辺境伯の送り込んだ騎士団の規模も実力も知らないが、如何やら事態は芳しくない。

これでは、俺の今夜のポニーテール改めツインテール計画も、実行が覚束無いかもしれない。

計画の再考含め、検討が必要だろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ