55.エロエロフとオーク、今日も森に出かける
あれから1週間。俺とタローは森に来ていた。
『アースバインド!』
俺の足元から走り出た魔力が土の中を伝う。
前方の草むらに潜むトビネズミたちの真下の地面がボコリと盛り上がったかと思うと、奴らは逃れる間もなく土の鎖に拘束された。
「キーッキーッ!」
慌てふためいた声が上がるが、時、すでに遅し。
タローが振りかぶった短剣が草むらを一閃。
さして防御力のないトビネズミたちは次々にグッタリと力を失った。
「やったー!」
簡単な相手だけど3匹いっぺんは嬉しいぜ! タローとバチンと手を打ち合わせる。
しっかりと"銀翼の飛龍"の面々に鍛えられたので、魔法も連携もばっちりだ! 特にタローの成長は著しい。
俺たちは今も西の森で、弱いモンスターを相手にチマチマとレベル上げに勤しんでいた。
もう、スライム専門なんて呼ばせないんだぜ!
このくらいのチワワほどの大きさのネズミとか、野ウサギ、蛇、トカゲなんかがターゲットだ。
なにそれ、モンスターじゃないじゃん、なんてツッコミは受けつけない!
この世界のモンスターの定義は曖昧なのだ!
まず、厳密に言ってこのEternal Sinfonìaの世界にモンスターじゃない動物はいない!
何を倒しても経験値は貰えるのだ。
せいぜい区別されてるのは人間の役に立つ益獣か、害獣かの違いくらいだ。
益獣でも害獣でもない普通の動物は、乱獲さえし過ぎなければ狩っても問題ない!
肉や毛皮、素材なんかを売ることができる。
さすが、元々は自由度が高いゲームなだけあるぜ。
「マ、マ。ネズミ……」
相変わらずたどたどしい喋り方のタローが、倒したトビネズミを一纏めにして持ってくる。
タローは人間の言葉はおおよそ分かってるみたいだが、オークの特性上、発音が難しい言葉があって舌っ足らずな喋りになってしまうようだ。
決して頭が悪いとかではない。
子犬と同じくらいの大きさのネズミとか現実世界だったら怖いが、こっちの世界には普通にいる。
牙とか鋭いし、引っ掻かれたら感染症とか怖い。意外と侮れない敵だ。
それでも屋台とかで珍味として売り出されるらしく、スライムなんかよりよっぽど高値で買い取って貰える。ちなみにスライムは核を壊すと溶けるが、それ以外のモンスターの死体は普通に残る。
「よーしよし、よくやったなタローちゃん。上手だったぞ!」
トビネズミの足を纏めて持ってきたタローの頭を撫でなでする。タローは満足そうにムフーッと鼻息を荒くした。
それからあまり死体を見ないようにしながらトビネズミを指でひとつずつ摘まんで、サッサッとマジックバッグに入れた。
俺たちはまだ素材の剥ぎ取りとか解体とかできないから時間経過のない魔法の鞄に入れとくのが一番だ。
手袋をしていても指先にまだ生暖かい動物の身体の感触がして、ブルルッと背筋を震わせてしまう。
だって仕方ないだろ! 現代日本でこんな大きなネズミの死骸なんて持ったことある奴なんて、いるわけないだろ!
「まだ今日は2人ともレベルあがんねーなー。もうちょっと戦ってくか!」
聞くと、タローもまだ体力が有り余ってるらしく、うんうんと頷いた。
あれから俺がレベル8、タローは多分5まで上がっている。タローは小さすぎて冒険者登録できていないので、初対面の時がレベル1と仮定して自己申告に基づき可算している。
経験値の入り方も、計算のしようはないが法則は教えて貰った。
自分よりレベルの高い相手と戦うと経験値は多い。反対に弱い敵は雀の涙程度だ。レベル差が開けば実入りは少なくなる。
その他にも初めての敵とか、単独撃破とかでもボーナスがつくらしい。
あとレベルが高くなると次のレベルへの必要経験値が多くなって、上がりづらくなるようだ。サクサク上がるのは大体、5レベルくらいまで。
だから一般人は5~6レベルくらいの人が多いみたいだ。
10レベルも行くと腕っぷしが強いと見なされる。大体、初心者の冒険者でこのくらいだ。だから1レベルで冒険者になった俺がいかに規格外だったかってのが分かるだろう! ハッハッハッ!
……俺も早く10レベルになりたい。
パーティで配分される経験値は人数にもよるし、どれだけ戦闘に貢献したかによっても異なる。ファーストアタック、総ダメージ数、とどめを刺した人なんかが加味されて分配されるみたいだ。
俺に経験値2倍の優遇措置があるのに、タローのレベルの方が上昇率がいいのはそういう事だ。
いや、タローにばっかり戦わせてたとか、そうわけじゃない! 精霊魔法使いなんて、みんな、こんなもんだから! 普通、後衛だから!
魔法戦士なんて、あのドワーフのおっさんがおかしいだけだから!
後ろで見ているだけでレベルが上がるなんて、そんな虫のいい話はなかったのだった……ちぇーっ。




