54.エロエルフ、特訓させられる
「それで子供を引き取っちゃったの!?」
驚愕するミミの声とともに四人四様の視線が俺へと突き刺さる。
ミミはあんぐりと口を開けて。フリードさんは苦笑い。ドワーフは爆笑。メイヴィスさんは呆れてんのかな、面白がってんのかな。ちょっと判断つかないな。
「でもでも、冒険者はどうすんのー? せっかくレベル上がったとこだったのに」
「もちろん続けるよ? コミュの森だったらさぁ、そんなに危険なモンスターは出ないしさ。ボチボチ薬草摘んだり、低レベルのモンスター狩ってればその内、レベルも上がるでしょ!」
あっけらかんとした俺の答えに、皆は一斉に声を荒げて迫ってきた。
「ティア!」
「ティアちゃん!」
「ティアさん!」
「お嬢!」
「お前は特訓じゃ!」
両脇をがっちりとミミとメイヴィスさんに固められて練習場へと連行される。
どうしてこうなった……いやまぁ、左右から当たってるのは嬉しい……嬉しいけど……。
四人は朝、俺の様子がおかしかったから無茶をしていないか心配になって早めに帰って来てくれたようだ。
自分たちが戻った時にまだ帰って来ていなかったら森に探しに行くつもりだったとか。
それを聞いて、俺の胸にじんわりと温かいものが広がっていく。
なんていい人たちなんだろうな……この世界で一番最初にミミたちに出会えた俺はかなり運がいい。数値には表れてないけど隠れステータスでラックが100くらいあるんじゃないだろうか。
ダンジョンからの帰り道、俺が無茶ばかりして気が気じゃないから、この際、みっちり鍛えた方が精神衛生上、安心できるんじゃないかって結論に至ったらしい。
本当にありがたい話だ。
ありがたいけど、俺は練習より実戦に強いタイプなんだって!
「ウィンドがカッターで、ファイアがボルトで、ウォーターがあぁ〜……」
「スピアじゃ」
「なぁ〜んで、属性ひとつずつ呪文が違うのさっ!?」
どうしても覚えられなくて俺はイライラとドワーフに詰め寄った。
四大精霊魔法である火・風・水・土のそれぞれで、なぜか呪文が違うのだ。
しかもカタカナ(英語?)なので覚えづらい……。
こんなのやってられるかー!
「なぜと言われてもそんなもんじゃとしか言いようがないな。それ、ちゃきちゃき唱えんかい」
ドワーフ一人だったら俺はとっくに逃げ出していただろう。
しかし、背後で錫杖を構えていらっしゃるお姉さまの微笑みが恐ろしい……。
俺はガクブルと震え、泣き出しそうになりながら次の呪文を唱えた。
まぁ、幸い、MPだけはアホみたいにある。
『ストーン……ショット?』
「なぁんで疑問系なんじゃ。精霊が戸惑っとるじゃろ」
「だぁーって、こんなの覚え切れないだろ!」
攻撃だけじゃなくて、この他に防御魔法と補助魔法まであるんだぜー!
やってられっかよ!!
「ティアさん?」
「はいぃぃ! 頑張ってますよ、お姉様!! ほんとです、信じて下さい!!」
俺は後ろは振り返らず魔法を唱え続けた。
向こうではフリードさんとミミがタローの相手をしてくれてる。
短剣を握ったタローが、真剣な瞳でフリードさんへと切りかかっていく。
フリードさんはなんなく盾でタローの剣を受け止めた。
「なかなかいいぞ。その調子だ」
「タローちゃん、上手い、うまい!」
あっちは楽しそうでいいなぁ。俺も混ぜて貰いたいなぁ。
俺は腹いせにドワーフに向かって手を突き出した。
『ウィンドショット!!』
「ウィンドはカッターじゃ、バカ者! 自分の得意魔法すら忘れておるじゃないか!」
あ、あっれ~? おかしいな……どうしてこうなった?




