56.エロエルフとオークの初指名依頼!
街に戻って"眠る仔馬亭"に辿り着いた俺たちは(俺は?)疲労困憊で、どっかりと食堂の椅子に座り込んだ。まだ防具も取っていない。
まぁ、この宿はほぼ冒険者御用達なので、そんな奴らばっかりだ。誰も気にしない。
「おやっさん、肉にくー!」
バンバンッとテーブルを叩くと、ムスッとした顔のおやっさんは無言でコクリと頷いた。あれで別に怒ってるわけじゃないんだぜ。多分。
タローも俺の真似をして両手でパンパンッと机を叩いている。うんうん、可愛い、かぁいい!
ミミたちは今日はダンジョンに潜ってるのか、まだ帰って来ないみたいだ。
テーブルで待っていると、おやっさんが大盛りに肉を持った皿を両手に持ってきて、俺たちの前にドンドーンッ!と置いてくれた。
タロちゃんはまだまだ身体は小さいが、大人並みにたくさん食べる。
よく運動してるからだな、うん!
俺たちは今日もしっかり働いてお腹がぺこぺこだったので、ガツガツと貪るように夕飯をかき込んだ。
「タロー、これも美味しいから食べてみろ」
なんの肉か分からないけど、ちょっと食べてみたら美味しかったのでタローにおすそ分けする。肉の盛り合わせみたいな感じだから、まぁ、タローの皿にも入ってるのかも知れないけど。
ありがと、と言うようにタローはニシャッと笑って、まぐまぐと肉を噛んでいる。
「どーだ? 美味しいか?」
聞くと口いっぱいに頬張ってるせいで答えられなかったんだろう。タローはコクンと頷いた。口元についた肉汁をテーブルクロスで拭ってやる。
調理場からギロリとおやっさんの視線が飛んできたが、他に拭くもんないんだから仕方ないだろー。
「なんの肉なんだろーな、これ?」
「ワサ……と、おもう」
「ワサ? タローは物知りだな? どんな動物なの?」
「ひがしの、そうげん、いる……おおきい」
「ふーん?」
話しながらモシャモシャと肉を食べまくる。
あんまり人の話を聞かない俺と違って、タローはけっこう宿の人や冒険者、ギルドの人とかと喋ってるので俺より物知りだ。
牛みたいな味だから牛っぽい動物なのかな?
俺たちが食べながら喋っていると、いつの間にか後ろにずももももっとオーラを漂わせて、おやっさんが無言で立っていた。
おっ、俺たちは食堂汚してないから! きちんとお行儀よく食べてるからっ!
って、言い訳する必要ないか。俺たちは客だ。堂々としてりゃ……。
「おい、エルフ」
「はっ、はい! ちゃんと綺麗に食べてます! 美味しいです!」
俺がビクンッと身体を跳ね上げさせて答えるのを見て、腕を組んだおやっさんはわずかに首を傾げた。
「そうじゃねぇ。お前、なんレベルになった?」
「……8ですけど?」
おやっさんから話しかけて来るなんて珍しーな。黙々と仕事する職人タイプの人かと思ってたよ。
俺の返答におやっさんは、ふむ、と頷いた。
「まだちーっとレベルは足りないが、行ってみるか、ワサ狩り?」
おやっさんは立てた親指を肩の後ろへと向けた。
なんだって。それは俺たちへの依頼ってことなのか? これってクエスト……クエストだよな?
「でもぉ、ワサっておっきいんでしょう? 群れてるって聞きましたよ?」
俺がグズグズとためらっている真横で、タローは目をキラキラと輝かせて俺をジッと見つめていた。はいはい、行きたいのね?
「まだまだひよっこのお前らだけで行かせるわけねーだろ。安心しろ。俺も行く」
おやっさんがー? 確かにそんじょそこらの冒険者より強そうに見えるけど、宿の受付してんのと料理してるとこしか見た事ないからな。
強さは未知数だ。
でもなんにせよ、知らないところに行けるのはいいかもな? 引率者つきならそこまで危ないこともないだろうしな!
「それが正式な依頼ならお受けしますけどー? 私だって冒険者の端くれですし?」
もったいぶって伝える俺に、おやっさんはツッコミを入れてくれなかった。真面目かよっ。
こういうの一人でやって外すのが一番悲しいんだけど。
「よし、決まりだな! 明日の朝食が終わった後、出発だ!」
バカでかい掌がバシンッと俺の背中を叩く。い、痛い、痛いから。ったく、食べたもん、全部吐くかと思ったぜ。
「ひがし……そうげん、楽しみ」
タローは無邪気に笑っている。あーもう、ほんとにウチの子は可愛いんだからな! 俺もけっこう楽しみになってきたよ。
そうと決まれば俺たちは明日に備えて英気を養うために、ガツガツと食事を再開した。




