表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
6/10

Cランク依頼に挑め!白き光の正体は誰だ?!

「なんで、なんで、なんで……!どうしていつもあなただけがこんなに優秀で、こんなに眩しいの……!腹立たしい、こんなに強いあなたが……ああ——本来主人公は私のはずなのに、なんでなの……!」


その少年の姿が脳裏に浮かぶだけで、苛立ちと不安が一気に押し寄せ、嫌悪感がどんどん膨らんでいった。

冷たい汗がうっすら浮かび、峙菌は眉をきつくひそめ、無意識に俯いた。


緋蜜に自分の異変を悟られないよう、必死に感情を抑え込んだ。


隣の愛知緋蜜は変わらず掲示板に集中し、優しく依頼を選びながら小声で教えてくれた。


「峙菌、この依頼は簡単で危険も少ないわ。報酬も妥当だし、初心者にぴったりなの」


一枚の紙を指さし、柔らかい瞳でこちらを見つめる。

「これにしてみる?」


峙菌は深く息を吸い込み、胸の渦巻く嫌な感情を無理に押し殺し、顔を上げて普段通りの口調を装った。

「うん、いいよ。見てみる」


緋蜜の指す先を見ると、黒いインクの独特な字体で依頼内容が記載されていた。


————————————————————————————


【C級採取依頼:風鳴羊角採集】

場所:郊外風鳴草原

任務:羊角十本収集

報酬:銀貨十七枚

補足:風鳴羊は軽度の攻撃性を持つが、危険度は低く初心者推奨。


————————————————————————————


「実は私、治癒薬を作っているの。ちょうど羊角が材料として必要だったの」


緋蜜はにっこり笑って付け加えた。


「この依頼を受ければ、ついでに材料も集められて一石二鳥なのよ」


「ほんとだ!じゃあ今から行こっ!」


「うん、今すぐ行きましょう。遅くなると夕飯に間に合わなくなっちゃうから」


緋蜜は頬を軽くつまみ、少し困ったように首を傾げた。


「お兄ちゃん、私が遅く帰るとまた小言を言うんだもの」


峙菌も確かに、と思って頷いた。


ギルドを出ると、愛知緋蜜に従って街外れへ向かった。風鳴草原は郊外すぐの場所に広がっていた。


「もう少し進むと風鳴草原に着くわ」

歩きながら、緋蜜は真剣に注意点を教えてくれた。


「風鳴羊の角は特殊なの。普段草を食べてリラックスしている時は柔らかく、そっと折るだけで簡単に取れるの。でも危険を察知したり警戒モードに入ると、角が一瞬で石のように硬くなって、攻撃的になるの」


「それに群れで生活しているから、子羊は必ず母羊と行動するの。母親は子供を守るのに必死なのよ。子羊が怯えて鳴くと、草原中の仲間が一気に集まってくる。だから絶対、気づかれないように。草を食べている隙に採らないと、峙菌が大変な目に遭うわ」


「じゃあ、もし危なくなったら緋蜜さん、守ってくれる?」


星が降ったような瞳で緋蜜を見つめると、彼女は柔らかく、迷いなく答えた。


「守るわ」


――心がぶち抜かれるような衝撃。


峙菌の全身に一気にやる気がみなぎった。


半時ほど歩くと、視界が一気に開けた。


少し先の土手の下に暗い洞窟が見え、そこが風鳴羊の巣穴だった。


洞口周辺には数匹の羊がいて、無防備に草を食んでいた。

「あそこよ」


緋蜜が指をさした。


「行こう。峙菌、絶対音を立てないで。洞口周辺だけで採取して、奥には入らないで」


峙菌はこくりと頷き、巣穴の方を見て唾を飲み、足音を殺して緋蜜の後ろからゆっくり近づいた。


草に夢中で角が柔らかくなっている子羊を狙い、手を伸ばした——その瞬間。


洞窟の奥から、低く不気味な羊の遠吠えが響き渡った。


ただ草を食んでいたはずの群れが、まるで指令を受けたかのように一斉に頭を上げた。


穏やかだった瞳は一気に険しくなり、ふにゃふにゃだった角が肉眼で見て分かるほど硬く、鋭く光り始めた。


「おかしい……普通の風鳴羊じゃない!」


愛知緋蜜は即座に振り返り、焦った声で峙菌に警告した。


あの不吉な鳴き声を合図に、羊たちの様子は完全に変わった。


鼻を激しく動かし、空気の匂いを探り、草を噛む動作を完全に止める。


一斉に二人の方を真っ直ぐに睨みつけ、喉から低い唸り声を漏らした。


次の瞬間、最前の数匹が頭を下げ、硬く光った角を突き出し、矢のように突進してきた!


「気をつけて!」


緋蜜は咄嗟に峙菌の腕を引っ張って横に躱した。


だが一歩遅れた。


最速で突っ込んできた羊が、勢いよく峙菌の腰の後ろに激突した。


激痛が貫き、呻き声を上げる間もなく芝生に叩きつけられた。


「峙菌!」


緋蜜の顔が一瞬青ざめた。


駆け寄ろうとした瞬間、別の羊に進路を塞がれ、鋭い角が彼女に向かって突進してきた


峙菌は草むらに倒れ、腰の衝撃箇所が焼けるように痛み、呼吸するたびに体が裂けるような痛みが走った。

痛みを堪えて顔を上げると、凶悪な目つきの羊たちに完全に包囲されていた。


歯を食いしばって体を起こし、緋蜜を庇おうと前に出ようとした。


だが体を浮かべた瞬間、治りきっていない古傷が引き攣れ、顔や胸の傷が激しく疼いた。


手をついて起き上がろうとした次の瞬間、迫ってきた羊に手首を強く踏みつけられた。


骨が軽く鳴る衝撃に眼前が真っ暗になり、再び地面に崩れ落ちた。


治りかけた口元の傷が裂け、血の鉄臭さと草の匂いが口いっぱいに広がった。


視線を上げた先、真っ先に飛び込んできたのは緋蜜の姿だった。


自分が絶望的な状況に追い込まれ、脇腹の傷から絶えず血を流し、顔は紙のように白いのに——彼女はずっと自分の安否ばかり気にかけ、眉をきつくひそめてこちらを見つめていた。


二匹の羊に前後を塞がれ、崖っぷちまで追い詰められて逃げ場もない。


それでも手元の光球が動揺で揺れながら、彼女は震える声で叫んだ。


「来ないで……!」


噛み締めた唇から震えが漏れ、不安定な光球を投げ出した。


威力の定まらないものもあれば、強い光で羊を怯ませるものもある。


だが群れは狂ったように取り囲み、一向に退かなかった。


崖から半分体を乗り出し、気を取られた隙に羊に脇腹を突かれ、踉跄く緋蜜の姿を見た瞬間、峙菌の胸は刃で抉られたように激しく痛んだ。


「俺は一体何をしてるんだ……?」


必死に這い寄ろうとする。


だが洞窟から次々と羊が溢れ出し、無数の角が一斉に自分に向かって突っ込んできた。


一回、二回、十数回……背中、腰、脚、古傷に重なる衝撃。


激痛が脳まで貫き、呼吸さえ鋭く荒くなった。


地面に押しつぶされ、身動き一つ取れなくなった。


絶え間ない攻撃をただ受け続けるしかない。


傷口から血が溢れ、生成りの服を濃く染め、下の芝生をどんどん褐色に変えていく。


骨が鈍く鳴り、意識が砕け散っていく。


耳に残るのは羊の唸り声と、自分の弱まり続ける鼓動だけだった。


なぜ守れない?


なぜ連れてきてしまった?


ただ材料を手伝いたかっただけ、ただ簡単なC級依頼だと思っただけなのに……


白く崩れる緋蜜の顔を見つめ、後悔と絶望だけが頭を埋め尽くした。


自分がいるだけで、いつも周りを不幸に巻き込んでしまう。


「緋蜜っ!!」


最後の力を振り絞って叫んだ。


声が漏れた瞬間、最前の羊が彼の喉元を強く踏みつけた。


骨が鈍く響き、空気が肺から完全に押し出され、声が完全に詰まった。


血と草の臭いが気管に流れ込み、視界が急速に暗転した。


緋蜜の姿さえ歪んでぼやけていく。



崖っぷちに立つ彼女の姿を眺め、激しい罪悪感と自責だけが心を支配した。


――私が連れ込んだ。


――私が危険に晒した。


――全部私のせい、私のせい、私のせい……


無限の後悔に意識が飲み込まれ、再び暗闇に落ちていく。


完全に意識が途切れる寸前、崖際まで追い詰められた緋蜜の掌の光球がついに暴走し、強烈な白光が草原全体を呑み込んだ。


白い光の中、遠くから何者かが二人に向かって駆けてくる、ぼんやりとした人影だけが最後に映った。


そして、視界は完全に闇に閉ざされた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ