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21 謎の三つ巴になってしまいました

キセノを星夜祭に誘うと決めたはいいものの、私はどうやって実行するか悩んでいた。

だって、ほとんど告白みたいなものだ。そう簡単に誘えたら苦労はしない。

悩んでいる間にも時間は無情に過ぎていく。

そんな中で、事件が起きた。


「セッセレン! 大変よ! キセノとタンタル様が言い争ってるわ! 中庭に急いで!」


のんびりと昼食を楽しんでいた私は、息を乱して駆けてきたフェルミィの言葉に衝撃を受けた。

キセノとタンタルが? あの二人の接点なんて、私しかいないじゃない!

私は急いで中庭へ向かった。


「平民風情が出しゃばるな! セレンは私が誘うんだ!」

「侯爵家の方が身分差別をするんですか? 決めるのはセレンですよ」

「貴様っ……」


ま、間に合った……! まだ殴り合いなどにはなっていないようだ。


「二人とも、何をしているんですか! ここは中庭ですよ!?」


私が二人の間に割り込むと、二人はばつが悪そうに俯いた。

私の名前が出ていた以上、無関係ではないと思うので、まずはキセノに質問する。


「ねぇ、キセノ。何があったの? もしかして、私のこと悪く言われて反論してくれたの?」

「え? いや、違う。そうじゃなくて……その……」


いつもと違って、なぜかキセノの歯切れが悪い。どうしたんだろうと私がキセノの顔を覗き込むと、いきなり背後から腕を引かれた。


「セレン! 近づき過ぎだ! はしたないぞ!」

「ちょっ! そういうタンタル様こそ腕を離してくださいよ! 痛いです!」

「すっ、すまないっ……!」


慌ててタンタルが私の腕を離した。……この人、嫌味は言っても暴力を振るうことはないのよね。

そのあたりは、やはり侯爵家の紳士教育のおかげなのかしら。


「結局、何を言い争っていたんですか?」

「えっ……いや、その……それは……」


今度はタンタルの方へ聞いてみたが、こちらもモゴモゴと要領を得ない。

何なのよ、もう!


私が一人でイライラしていると、すっと一人の男子生徒がこちらへやってきた。


「……セレン嬢。少しよろしいでしょうか? 私はトラシオ家のジェイスと申します。こちらのお二人は、どうやらどちらがセレン嬢を星夜祭に誘うかで揉めていたようですよ」

「あら、ご丁寧にどうも……え? 星夜祭?」

「あっ! おい、貴様っ! 何をしれっとバラしているっ!」

「ちょっ! 俺は自分で伝えたかったのにっ!」


タンタルとキセノがジェイスに掴みかかろうとしている。私は慌てて二人の腕を引いた。


「ふ、二人とも落ち着いて! えっと、その……ジェイス様の言っていることは本当なの……?」


星夜祭に異性を誘うってことは……基本的には好意を示していることになるはずだけど……。

え? え? どういうこと!?


私が大混乱に陥っていると、ギュッと右手をキセノに握られた。


「……セレン。今年の星夜祭はセレンと出かけたい。俺を選んでほしい」

「ほぁっ!? え、選ぶも何も、私の方こそキセノを誘おうと――ぎゃっ!?」


今度はなぜかタンタルに左手を握られた。何? 何なの!?


「セッ、セレン! 今年は私と参加するんだ! 私を選べ!」

「はぁぁぁぁっ!?」


タンタルが必死の形相で私に訴えてくる。何で? 星夜祭は嫌いな異性を同伴するようなイベントではなかったはずなのに……。はっ! さては!


「タンタル様。あなた、婚約者を作りたくないから都合良く私を使う気ですね!?」

「なっ、何を言っている!?」

「夫人から婚約者候補を星夜祭に誘えとでも言われているんでしょう?」

「それを分かっているなら……!」

「まだ婚約者を作りたくないからって、私を誘ってドタキャンするつもりなんでしょう! まるっとお見通しですよ! なんてひどい!」

「ひどいのはお前の想像上の私だろう!? そっちこそなんてひどい推理なんだ! この鈍感!」


私とタンタルが言い争っていると、ストップ! と大きな声でジェイスが仲裁してきた。


「醜い争いはおやめなさい。ここは私が、平和的解決方法を示そうではありませんか」


おお! なんかジェイスから後光が差しているように見える! 救世主なの?

私がうっかり感動していると――


「セレン嬢は、テルル嬢と星夜祭を楽しめばよいのです!」


……ん? どうしてここで、第三者のはずのテルルを?

私が首を傾げていると、ジェイスがとんでもないことを語り始めた。


「私は“オキシー家の姉妹を見守る会”会長として、提案します! セレン嬢はテルル嬢と星夜祭に行くべきです!! そこで、麗しい姉妹愛を存分に皆に見せつけるのです!!」


常識人かと思ったら、一番マトモじゃない人だった! おかしな会が発足している!?

あまりの衝撃に私が固まっていると、キセノがジェイスに怒鳴った。


「この変態! セレンに近寄るな!」


そう言って、私の前に立ちジェイスの視線から私を遮る。


「だいたい、見守る会と言うくせにちっとも見守っていないではないか! 余計な口出しをするな!」


タンタルもキセノの横に立ち、ジェイスに文句を飛ばす。

しかしジェイスは全く気にする様子もなく、ふむ……と考え込んだ。


「では……“オキシー家の姉妹を見守るために口を出す会”に改名します」


だあああああ!? 改悪した!?

誰か~! 誰か助けてくださ~い!

中庭で騒ぎ過ぎたせいで、いつの間にか辺りには野次馬が集まっている。

そこに――本物の救世主が現れた。


「お話は聞かせてもらいました!」


凛とした声が中庭に響き渡る。

野次馬たちをかき分けながら現れたその人は――


「テルル!!」


我が最愛の妹だった。

テルルは優雅な足取りで私のもとへやってくると、その場にいた全員をぐるりと見渡した。


「こんな騒ぎを起こして姉を困らせるなんて……。あなた方は騎士道精神を持ち合わせておりませんの? 見世物になっていましてよ?」


おぅふっ! テルルの毒舌がキセノ、タンタル、ジェイスの心を串刺しにした。

全員うなだれて、すまない……と落ち込んでいる。


「仕方ありませんね。ここはわたくしが解決策を提示いたします」


そう言うとテルルはにっこりと天使の微笑みを浮かべた。


「星夜祭には、四人で参りましょう」


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