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22 兄と妹が黒い笑顔を浮かべています

「……ごめんね、テルル。何だかおかしなことに巻き込んじゃって……。せっかくの星夜祭なのに、私やタンタルなんかと一緒で良かったの?」

「お姉さま。わたくしはお姉さまがいれば、いつだってどこだって幸せですわよ?」

「テルル~ッ!」


思わずギュッとテルルを抱き締めると、奥からコホンと咳払いが聞こえた。兄のネオンがこちらを呆れた様子で見ている。


「全く……帰ってくるなり何だ、お前たちは。エントランスでいちゃつくんじゃない。話があるから、着替えてから俺の部屋に来い」

「は~い」


私とテルルは言いつけに従い、着替えてから兄の部屋を訪れた。

兄の部屋は狭くないはずなんだけど、いつも本が散らかっていてソファーまで浸食している。私はよいせと本をどかし、ソファーに腰かけた。


「お兄さま、お話とは何ですか?」


テルルが問いかけると、兄がジロリと私たちを睨んだ。


「……学園で、ずいぶんと面白い噂が広がっているようだな」


うぎゃああ! バレてる! 私とテルルの怪しい噂がバレてるよぉぉぉ!


「お、お兄さま! それは、別に誰も本気で信じているわけではっ……」

「そりゃそうだろう。だからといって、このまま放置するわけにはいかない。うちの体面に関わってくるからな」

「はい……すみません……」


私がしゅんとうなだれると、テルルが口を開いた。


「……お兄さま。心配ありませんわ。この噂は星夜祭後には消滅しますので」

「ほう? 何か策を用意しているのか?」

「ええ、もちろん。とびきりのものを」


え? え? 何か、テルルとお兄さまの間で話が進んでいくんですけど?

二人の笑顔に何か黒い物が潜んでいるようで、とても怖い。


「テ、テルル~? お姉ちゃん、何も聞いてないけど……?」


恐る恐る口を挟むと、テルルが安心させるように私の手を握ってきた。


「お姉さま。わたくし、とても面白い余興を思いつきましたのよ。でも、驚かせたいから星夜祭当日まで、お姉さまにも内緒です。楽しみにしていてくださいね!」


輝くような笑顔で言われ、私は頷くしかなかった。


「ん? 星夜祭は俺たちと一緒に行くんじゃないのか?」


兄の問いかけに、そういえばまだ言ってなかったなと思い出す。


「えっと、今年はなぜかテルルとタンタル様と私の友人で行くことになりまして……」

「は? タンタル様? ……お前、あの人に正式に誘われたのか!?」


なぜか真剣な目で聞いてくる兄に、テルルが答えた。


「ちっとも正式ではありませんわ! 騒ぎは起こすしグダグダだし……最後の情けでわたくしが同行を認めたのです」

「……そうか」


テルルと兄が、そろってふぅ~と深い溜息をついた。我が家でのタンタルの扱いって、いつもこんな感じだ。私は嫌いだけど、家族はそれほど嫌っていないみたい。

だからって別に好かれているわけでもないけど、無視できない手のかかる親戚……のような扱いをされている。


「しかし……今年はお前たちとは別行動なのか。少し寂しいな」


兄の意外な言葉に、私とテルルがえっと声を上げた。


「まさかお兄さまからそんなセリフが聞けるなんて……! やっとスズ様と二人きりになれるから嬉しくて仕方ないのかと」

「確かにそれはある」

「やっぱり!」

「でもな。スズはこの先俺が死ぬまで離さないし傍にいるが、お前たちとはそうもいかないだろう? やはり少し寂しいよ」

「「…………」」


スズ様。あなたは死ぬまでこの兄から逃げられないようです。

ふつつかな兄を押し付けて申し訳ありませんが、おそらく全力で幸せにしてくれるはずなので、うまく利用してくださいね……。



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