最後の夜
次の日。
日中だらだらごろごろして過ごした私たちは、日が傾き出した頃にようやく起き上がった。
「失礼致します」
私たちが起き上がったのを見計らったのか、ちょうどいいタイミングでむきむきメイド長が部屋に入ってきた。
「お召し物の準備はいかが致しましょうか」
そう言ってむきむきメイド長は私たちに頭を下げた。
「お、おお、お願いします!」
「御意」
すると、たくさんのメイドさんたちが部屋に入ってきて、私たちの周りを取り囲んだ。
昨日来ていたドレスとはまた別のドレスを手に持っている。
黒に近い紫の色で、コルセットはないが体にピッタリと沿う形のマーメイドドレスだ。
「今日はコルセットないんだ?」
「昨日カエデ様が苦しそうにしている様子を拝見しておりました。ご所望でしたらご用意致します」
私がなんとなく呟くと、むきむきメイド長がスッと近くに寄ってきて、私に話しかけた。
な、なんと、見られていたのか。
たしかにむきむきメイド長くらい身長があれば遠くまで見渡せそうである。
「ううん、大丈夫です!でも、こんな大人っぽいドレス、私に似合うかなあ」
「私どもにお任せください。必ずや美しいカエデ様をさらに美しい女性に変身させてみせます」
う、美しいだって!?
い、いやあ、参っちゃうなあ。
「えへへへへへへ、いやあ、そんな、ねえ??」
お世辞に本気で喜ぶ単純な私。
私がお世辞で喜んでいる間も、メイド長はもくもくと作業をしていた。
「すごい、ぴったりだ」
「お客様のお召し物を迅速にご用意できる様、一眼見ただけでサイズがわかる様に訓練いたしております」
「なにそれすごい」
「お褒めに預かり光栄です」
しかし、わ、私の身体のお肉のつき具合もわかってしまうのか...
一目見ただけで...。恥ずかしいな.....
まあ、そんなちっちゃいことは気にしていられない。
こうして私たちはむきむきメイド長のお陰で大人っぽいシックな装いに変身を遂げたのである。
「おおー」
「この前のドレスも可愛かったけど、今日のも素敵ねー」
着替え終わった母が私の姿を見てそう言った。
「わ、リコのベビーカーもおしゃれな感じになってる」
リコのベビーカーもリボンやら花やら色々飾り付けられていた。
「それだけではございません」
むきむきメイド長がぱちん、と指を鳴らすと、ベビーカーに付いている装飾がピカピカと発光しはじめた。
「ひ、光る.....」
すごいな、こりゃ.....。
こうして私達は装いを新たに、王女様の舞を見るため、会場へと向かうのだった。




