絵心の試練
次の日。
私たちは新たなダンジョンに来ていた。
王国から『浮遊』を使ってびゅーんと飛んできた私たち。
今日はダンジョンに挑戦するのだ。
ちなみに、ゴーちゃんは主に人のいない深夜にダンジョンに潜っている。今は日中なのでお休みしているが、昨晩もしっかり働いてくれていた。
私たちは地面に降り立った。
そこには、絵の具のパレットと筆の絵が描かれた大きな看板。
その絵の上に、『絵心の試練 Lv. 15』と記載があった。
「絵心かあ」
「ママ、絵描けるか?」
ううん、と首を振るお母さん。
「カエデは?」
私も首を横に振った。
「お父さんは?」
「全然ダメだ」
「..........。」
かたまる私たち。ダメじゃん!
坂上家に絵心は皆無なのである。
「んだっ!んだーっ!」
私出来るよ!とばかりに手を挙げるリコ。
「こらこら、リコはまだお絵描きできないでしょ〜」
リコをあやす母。
母にあやされてリコはきゃっきゃっと笑っていた。
とりあえずどんな内容なのか、確認するために私たちはダンジョンの中に足を踏み入れることにした。
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ダンジョンに入ると、そこには大きな石板が二つ、その間に小さな石板がひとつ浮かんでいた。
大きな石板には何も書かれていない。対して、小さな石板には文字が書かれていた。
「なんか書いてあるよー?」
私達は小さい石板に近付いて、そこに書かれている文字を読み上げた。
「制限時間内に右の石板の絵を左の石板に模写してください。
絵心の試練をはじめますか?
『はい』 『いいえ』」
「模写だってー」
「そんなの出来るかしら」
母は不安そうに言った。
「情報屋の情報によると、クリアできなくてもペナルティはないようだったが...」
そう、私たちはギルド付近にいた情報屋から攻略情報を買ってみたのだ。
銀貨5枚もしたのに、何の実用性もないぺらぺらの紙を渡されて終わった。
に、二度と買わん...と思ったのだが、父はそれをちゃんと保管していたらしい。
「よーし、考えてても何も始まらないし、じゃあやってみるか!」
物は試しだ!
私は勢いよく『はい』のボタンを押す。
すると、大きな石板にとぐろを巻いた龍の絵が映し出された。
鱗の一枚一枚まで繊細に描かれている。
小さい石板には、制限時間が表示され、すでにカウントダウンが始まっている。
「わああ」
「ふ、複雑すぎる...!」
しかもカラーだし!!
「え、あと1分もないよ!」
私は小さい石板に表示されている制限時間を見て叫んだ。
「こんなの無理に決まってる!」
「えっ、待って、ペンは?」
「パパは持ってないぞ!」
私と父はキョロキョロと辺りを見渡した。
しかしペンもないし、チョークもない。
「あらあら、ペンがないと絵は描けないわよね〜(にこにこ」
のんきな母。目の前で父と私が焦っているのに、呑気なもんである。
私と父があたふたしていると、絵はあっという間に消えてしまった。
「はやっ!?」
「もう消えちゃったのね〜」
「これはどんな絵の達人でも無理だな...」
うーんと唸る私たち。
「よし、それだったら!」
「お、何か案が浮かんだのか、カエデ?」
私はたたたっと後方に移動した。
「お母さん、端に移動してて!お父さん、『はい』ボタン押したらすぐ走って移動してもらえるー?」
「あら、もう何か思いついたのね〜」
「おう!任せとけ!」
そして母は部屋の隅に移動した後、父が「やるぞー」と合図を出した。
「お父さん、お願い!」
父が『はい』ボタンを押し、走りだした。
猶予は5秒。思いつきの魔法だけど、うまく行ってくれー!
「コピー!」
両手の指で四角の窓を作り、右の石板がすっぽり収まるように合わせて、魔法を唱えた。そして。
「ペースト!」
次は左の石板に四角の窓を合わせて、唱える。
すると左の石板に龍の絵がそのまま映し出された。
「おおお」
二つの円盤が輝き始め、右の石板が左に動き、やがてぴったりと重なった。
石の板のはずなのに、後ろの石板の絵が透けて見えている。
ふたつの絵は完全に一致していた。
石板が光り始める。
その光は私たちを包み込んで、次の瞬間には、その場所には何も残っていなかった。
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