『宝箱を探して』⑤
傷が治り、お腹も満たされて落ち着いた男性は、
姿勢を正して私たちに向き直った。
「本当に助かった、なんとお礼を言って良いのか....」
「ううん、たまたま通りかかってよかったよ」
「傷が深くなかったのが幸いだったな」
男性は私たちが止めてもなお、ぺこぺこと頭を下げ続けた。
「ところで、他にお仲間はいらっしゃらないのですか?もしいるなら、手当てをしたいのですが...」
すると男性はうつむいて下を向き、ぽつぽつと話し始めた。
「やられちまったよ。ダンジョンの中で死を迎えると跡形もなく消えちまうからな。
せめて形見を持ち帰ろうと必死に闘ったんだが、奴を倒した途端俺だけ穴に落ちちまって...」
男性は当時の事を思い出し、悲しんでいた。
「そうだったんですね...」
「私たちが着いた時も、何も残ってなかったね...」
「あんたら、ここにいるってことは、ミミックを倒したってことか?
その割には、傷ひとつついていないようだが...」
男性は不思議そうにそう言った。
どうやらミミックは、一般的には強い分類のモンスターらしい。
男性はさらに口を開き、話を続けた。
「あいつは外側から傷一つ付けれれないくらい硬いんだよ。
だから宝箱を開けて、内側のコアを破壊する必要があって...
でもそのコアになかなか攻撃が当たらない。
なんせあいつは開くと途端に暴れだすわ噛み付くわでもの凄く凶暴で...」
ミミックを熱く語る男性に、苦笑いで応えるしかない私たち。
か、硬いんだ.....
暴れるんだ.....
ってか、噛み付くんだ.....
宝箱を開けずに外側からサクッと刺しました、だなんてとてもじゃないが言えなかった。
「4人もいりゃあ勝てると踏んだんだが、呆気なく負けちまったよ」
寂しそうに、男性は仲間を悼んでいた。
「まあそろそろ冒険者は諦めて、真面目に働くよ!あんたたちに救ってもらった命だ。
俺が幸せにならなきゃ、あいつらが敵に立ち向かっていったことが無駄になっちまう」
前向きにニカッと笑う男性。
それを聞いてうんうん、と私たちは頷いた。
「あんたらは先へ進むのか?」
「んーわかんない!ちょっと覗いてこようかな〜って」
はぐらかす私。あまり下手なことは言えない。
「おーそうかそうか!じゃあ俺は戻ることにするよ」
「一人で大丈夫か?」
「おう、おそらく大丈夫だ。もうだいぶ体力も回復したしな」
そういって男性は壁の網をつたって上に登っていった。
「じゃあ、先に進もうか」
扉の向こうには禍々しい空気を感じる様な気がした。
私たちは扉を開けて、先に進むことにしたのだった。
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