56 トラブル発生
「初めまして、私の名前はユリシアです。
趣味は、料理と読書です。よろしくお願いします」
趣味が料理とか嘘つけ! お前焼く以外の調理方法知らないだろ。
てか、短いな自己紹介。クラスに溶け込む気ある?
「それにしても、あの世界最強の魔法使いユリシア・メンビィと同じ名前なんだなぁ。やっぱり強い魔法使いになって欲しいってつけられたのか?」
ユリシアの自己紹介が終わると担任のスヴェンが疑問を口にした。
「あー、はい、そうです」
なんとも歯切れの悪い返事をする。
そういえば、この街に入る時冒険者カードを見せなかったり、フード被って顔隠してたりしたのに名前はそのままなのかよ。
ユリシアのことだからきっとなにも考えずに名前をユリシアにしたんだろう。バレたく無いのなら名前も変えるべきなのに。
「そうなのか。じゃあ、親さんの願いは叶ったってわけだな」
「はい、そうですね」
棒読みでユリシアが返事をすると、スヴェンが俺の名前を呼ぶ。
「次はステラー」
俺は立ち上がって自己紹介を始める。
最初の印象で今後俺が、この学院でどんな生活を送って行くかが決まってくる。
絶対に変な奴、関わりたくない奴などと思われてはならない。
学院で楽しく過ごすことが目的ではないにしても楽しいに越したことはないのだ。
「はじめまして、私の名前はステラです。
趣味は……」
流れ的に趣味を言おうとしたが……趣味? この世界に来てからこれといった趣味をした覚えがないな。
地球にいた頃はちょくちょくラノベ読んでたけど今は読んで無いし、料理もしないしな……
この世界で定期的にやってた事といえば……魔物狩り?
いや、流石にダメだろう。
趣味は魔物狩りです。なんて言ったら頭おかしい奴認定されること間違いなしだ。
そんなこと言う奴が居たら間違いなく戦闘狂だな。
「趣味は旅行です。
行ったことのない街や国に行くのが最近の趣味なので、もし旅行に行くことがあれば誘っていただけると嬉しいです。
よろしくお願いします」
まぁ、嘘は言っていない。
旅行は好きだし、自分の行ったことがない場所なんてワクワクするしな。
俺は満面の笑みで自己紹介を終える。
それにしても、美少女って役に立つよなぁ。笑顔で言っておけば大抵のことは好印象に捉えられるはずだし。
次に俺の後ろの席の子が立ち上がる。
金髪の髪が長く伸びている女の子。
明らかに見て分かるお嬢様オーラが出ている優しそうな子だ。
「はじめまして、私の名前はセレスティナ・フォン・デリウスと言います。
多くの方がご存知の通り私は第三王女ですが、この学院では爵位も貴族も平民も関係ありませんので気軽に話しかけてください。
どうぞよろしくお願いします」
この子が第三王女か。
うん、可愛いな。
第三王女セレスティナの自己紹介が終わり次、次、次と進んで行く。
長時間話す子もおらずスムーズに自己紹介は終わった。
自己紹介の途中から気づいてたけど、このクラス貴族多くない?
自己紹介を聞いた感じ、俺とユリシア以外全員貴族だ。もしかして、平民がSクラスって普通じゃないのか?
てっきり少ないにしても平民もいるものだと思っていたんだが。
「さて、自己紹介も終了したことだし今日の授業はこれで終わりだ。
この後は、指定の教室で制服の採寸をしてくれ。その場で受け取れるはずだ。明日からは私服じゃなく制服で生活するから忘れずに着てこいよ。
制服を受け取ったら寮の手続きをしてから寮に帰宅してくれ。
では、以上だ。解散」
スヴェンの言葉とともに生徒達が立ち上がり指定の教室に移動し始める。
「ねぇ、ユリシア。
私たちは何処に行けばいいの?」
あ〜、俺って言いたい……
「えーと、女子の採寸する教室はこの上の階にある教室よ。
とりあえず、上の階に上がりましょ」
「分かった。でも、その前にトイレ行って来ていい?」
「全然いいわよ。
そこの教室出たところの廊下で待ってるから」
ユリシアが廊下を指差す。
俺はその場所を確認してからトイレに向かう。
えーと、トイレはどこに……あった。
教室を出て左の方にトイレが設置されていた。
男女別に分かれているので女子トイレに入る。
十二歳の子どもが通う学校の女子トイレ……本当なら100%通報案件だな……
中に入ると国立なだけあって新品かと思うくらい綺麗なトイレだった。しっかりと魔道具を使った水洗式だしこれなら地球のトイレと比べてもまんまり差ないな。
まぁ、あの水鉄砲はついてないが。
俺は用を済ませてトイレを出る。
さてと、さっさとユリシアの元に戻るか。
そう思い歩き出そうとすると、俺の進行方向の先に人だかりができている。
ん? あの位置は……
なんか嫌な予感がするなぁ。
俺がトイレに行く時は何も問題なかったはずだが。たった数分で何があったと言うんだろうか。
俺はその人だかりの方向へ近づいて行く。
「な、なんだと! お前、俺が誰だか分かって言っているんだろうな!」
すると、人だかりの奥から何やら怒声が聞こえてきた。




