57 爆弾発言
人混みをかき分けて中心に行くと案の定ユリシアが居た。
そして、もう一人ユリシアの前に男の子が立っている。怒声を出していたのもこの男の子だろう。
「知らないわよ。興味ないし」
「き、貴様ぁあ! なんだその態度は!」
壁にもたれかかってそう答えるユリシアの態度に男の子が怒鳴り散らす。
本当に何があったんだ?
「ねぇねぇ、何があったの?」
俺は近くにいた女の子に状況説明を仰いだ。
「あの貴族の男の子が赤髪の女の子に求婚したみたいで、女の子が『私と結婚したいなら一回死んで生まれ変わってもう少しマシな顔になってきなさい』って言ったらこうなったらしくて」
あぁ、なるほど。
男は興味ないから一回死んでから生まれ変わって女の子になって来いって意味か。
それにしてもユリシアに求婚とか目腐ってんだろ。
「そうなんだ、ありがとう」
俺は女の子にお礼を言ってもう一度ユリシアに目を向ける。
「あぁ、もう! うるさいわね!」
「うるさいとはなんだ! 俺はヒスペルト公爵家の息子バシリオ様だぞ!」
「だから、興味無いって言ってるでしょ。
いい加減にしないとぶっ殺すわよ」
ダメだこりゃ。
収集がつかなくなってる。先生達は何をやっているんだろうか?
まさか相手が貴族だと注意しないなんてことないよね?
「俺に向かって殺すだと? 貴様のような可愛げのない女は死罪だ! 不敬罪で死罪にしてやる!」
いや、求婚申し込んどいて可愛げがないって……もうなんか無茶苦茶だな。
貴族だから全部、はいはいって今まで言うこと全部聞いてもらってたんだろうな。
それにしても、貴族の印象がつくづく悪くなるな。
関わるのは嫌だけどほっといたらそれはそれで魔法をぶっ放したりしそうだからな。
俺は人だかりから出てユリシアの元へ行く。
「ユリシアー、採寸行こう」
このままこの場所から去ろうた俺はユリシアの手を引っ張って出て行こうとするが、このバシリオとか言う男の子がそれを認めないらしい。
「おい! 何処へ行く気だ? まだ話は終わってないぞ!」
俺の前に回り込んでくる。
「何処って、採寸ですけど?
耳、付いてます?」
おっと。ちょっと貴族の態度にイラッとして挑発してしまった。
「お、お前もか! お前も不敬罪だ!……ん? お前よく見たら可愛いじゃないか。
俺の妻になるなら不敬罪を取り消してやってもいいぞ?」
「は? きっも」
いやいやいや、何言ってんのこの人?
うわー、引くわ。男に求婚されるとか鳥肌立つんだけど。
「え? お前今なんて?」
素でキモいと思ったのが口に出たんだがどうやら聞こえていないらしい。
えーと、この後なんて答えればこの場をいい感じに切り抜けられるのか……
求婚を受けるのは当然なしだが、それ以外だと全部キレてきそうだな。
日本に生きてたら友達居ないだろうな、お前。
「おい、どうするんだ? 早くしろ!」
いやー、今考えてるんですよ。
「……沈黙はYESととっていいんだよなぁ」
そう言って俺へ向けて手を伸ばしてくる。
あぁ、こんなのがいるからルシア達みたいな被害者が出るんだよなぁ。
「ライトーー」
「触るな」
俺が脅しに一発ライトニングを放とうとするとそれより一瞬早くユリシアの魔法が発動した。
俺へ向けて伸ばされていた手は突如として下から巻き起こった突風によって跳ね除けられる。
「な、何をしたんだ! 貴様!」
何が起きたか分からない様子で俺たちに問いただしてくる。
「なに汚い手でステラに触ろうとしてるの?」
「お、俺の手が汚いだと!?
き、貴様ぁぁぁぁぁぁあ! ファイヤボール!」
え、マジ?
器小さすぎだろ。それに何、人に向かって魔法発動してんだよ。普通に普通の人なら結構な怪我になるだろ。
俺は超至近距離で発動されかかっているファイヤボールを見る。
身体強化を全開にすれば多分どうにかなるけど……
多分それ発動しないよねぇ。
そして魔力がファイヤボールに変わり放たれる。ことはなかった。
ファイヤボールになる直前で魔力が霧散させられたからだ。
流石ユリシアだ。
「な、何故だ? なぜ、発動しない!?」
「さっさと私達の前から消えなさい。求婚はお断りするわ」
「お、俺は公爵家の人間だぞ! 何故だ? 何故求婚を受けない!?」
いや、そんなに求婚を受けないことが不思議か?
バシリオの疑問にユリシアが笑顔で俺と恋人繋ぎをして答える。
「私たち付き合ってるから」
……おい、何言ってやがる?
滅茶苦茶周りから変な目で見られてますけど!?
ねぇ、アホなの!?
俺の楽しい学院生活はぁぁぁぁぁぁぁぁあ!?
「なッーー」
あんなに頭おかしい事言ってたお前まで何衝撃受けてんだよ? おい。
「ちょっと、通してください」
シーンと静まり返った場所に女の子の声が響く。
「状況は分かっています。
この学院内及び校外学習では爵位は無いものとして扱われます。あなたの要求は一つも通りませんよ。
それに、例え爵位があったとしても権力の乱用は見逃せません。お父様に報告させてもらいますね」
野次馬の中から出てきた金髪の女の子。
第三王女セレスティナがバシリオに言い放った。




