46 王都へ
「そういえば、今何処に向かってるの?」
ガタガタと揺れる馬車の中で寝転びながらユリシアに尋ねる。
「言ってなかったっけ? デリウス王国の中心、王都に行くのよ。結構大きな街だけど、行ったことある?」
この国デリウス王国って言うのか初めて知った。
「いや、一度も行ったことない。
それで、その王都までどのくらいかかるの?」
「このペースだと10日もすれば着くと思うわ」
うわっ、長!
このままだと慣れない馬車で寝転んでいるせいで身体中が徐々に痛くなり始めるだろう。
まだ出発してから二時間とたっていないというのにすでに前兆が身体に来ているような気がする。
前にルシアと一緒に馬車に乗った時はずっと座ってたからお尻が滅茶滅茶痛かった。
この世界ではこのくらいは普通らしい。
きっとこの世界の人々の尻は肉厚なのだろう。
馬車でそれから数時間走り日が隠れる前にキャンプを始めることにした。
その辺の木とか葉っぱとかを炎魔法で燃やして焚き火を作る。
「ステラ、戻ったわよー」
焚き火を前に座っていると後ろから木を避けながらユリシアが戻ってくる。
10匹ほどの川魚を持って。器用なことに氷魔法でカゴを作ってその中に魚を入れている。
食料は俺のアイテムボックスに入れて置けば問題ないと思っていたのだが、孤児院にいる間に実験してみるとアイテムボックスの中でも時間経過があることがわかった。
この世界に冷凍して持ち運べる技術なんてないので俺のアイテムボックスには飲料水と日持ちする干し肉とかしか入っていないので極力何か食べれるものが取れるならそれを使おうということになっている。
「おぉ、大量だなぁ」
「今焼く準備するから、ナイフ出してもらえる?」
「はーい」
俺はアイテムボックスから小さめのナイフを取り出して渡す。
ユリシアは受け取ったナイフを器用に使い魚の腹を切り裂くと中に手を入れて内臓をブチブチッとちぎり遠くへ放り投げる。
「手慣れてるけど、旅することって良くあるの?」
「んーまぁね。昔の私は力ばかり求めて、そこら中を旅したから旅の経験は結構あるわ」
力を求めた結果が今のユリシアと言うわけか。
夢が叶ったってことかな?
「今の結果に満足してる?」
「……満足はしてないけれど、力を求めるのはもうやめたわ。
諦めたの。届かないから」
ユリシアの顔が暗くなる。
過去に何かあったのだろうか。
気になるけど、聞くのはやめておこう。聞かれたくないことくらいあるもんだよな。
俺は辺りから採ってきた木の棒をナイフで削り串を作りユリシアから受け取った魚を串刺しにする。
それから、アイテムボックスから取り出した塩を振って焚き火で焼けるように地面に刺しておく。
塩は腐ることがないのでアイテムボックスには大量に入っている。
砂糖や胡椒もそんなに量は手に入らなかったが入手済みだ。
砂糖と胡椒は馬鹿みたいに高価だったがユリシアからしたら簡単に出せる金額だったらしく滅茶滅茶アイテムボックスに入れさせられた。
数十分焼いてホカホカの川魚の塩焼きを頂く。
日本にいた頃も魚は好きだった。 美味いなぁ。
10匹もいた魚はすぐに食い終わった。
「ねぇ、ユリシア。王都に着いたら何かやることあるの?」
何処に行くから聞いたけど、王都で何するかは全く聞いてなかったので食事が終わった後聞いてみた。
「まぁ、やる事いくつかあるけど着いてからのお楽しみって事で」
ユリシアが邪悪な笑みを浮かべる。
「おい、なんか企んでるだろ?」
明らかに俺をみてニヤニヤしている。
俺を使って何がするのか? 根が発達途中の美少女大好きな変態なので正直何をするか分かったもんじゃない。
「着いてからのお楽しみ!」
そう言って寝袋に入ってしまう。
「はぁ……」
「あ! 夜の見張りだけど無くていいからね」
思い出したとばかりに上半身を起こして言ってくる。
「え? いいの?」
「何年も旅してると魔物が近づいて来たら盗賊とかが来たりしてもすぐ気付くし、瞬殺できるから」
うん、確かに。
気づくかどうかは知らないが襲って来た方が哀れになるくらい瞬殺されるだろう。
「そうだね、おやすみ」
「おやすみ」
なんとも言えない安心感を抱きながら寝袋に入り眠りに入った。




