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精霊物語~姉を消し去った男に死の復讐を~  作者: 月雫


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人間至上主義者


「だけどそんなに優秀な貴方をヨハイルが居なくなってもマリアが手放さない筈よ。」

「マリア夫人は俺がこんなに幅広く仕事をしているのを知らない。一応会計士とかいるからさ。つまり仕事は俺で成果は会計士だけど。しかも俺はこんな素朴な見た目だし何より親精霊家だ。人間至上主義のマリア夫人は俺が嫌いなんだよ。」

「え!?マリアってやっぱり人間至上主義なの!?」

「隠してはいるけど人間至上主義者だ。マリア夫人というかマリア夫人の家族……つまりマードレッド家が人間至上主義者らしい。あぁ、混乱するよね。ヨハイルが婿養子になる前のマードレッド家って事。婿養子になる前のヌーティスト商会の時は精霊相手にも取引をしていたし精霊の使用人もいた。マードレッド商会になってから、全ての精霊の契約を切ったんだ。」

ヌーティスト……そうか、ヨハイルは婿養子になってからマードレッドになったのか。精霊と違い人間には姓?と言うものがあるから混乱してしまうわ。

「マリア夫人と出会う前のヨハイルは、確かに女たらしではあったけど精霊に対してあんなに酷い扱いはしなかったみたいだ。俺は話で聞いたんだけど、元奥様…つまり君のお姉様にも優しかったらしい。マリア夫人と出会ってから次第に、ウンディーネは地味だとかつまらないとか愚痴りだしたみたいだ。…ヨハイルは単純な男だ、マリア夫人にそそのかされたんだろう。……あ、ごめん!ウンディーネを馬鹿にしたわけじゃないんだ!」

「大丈夫よ。…それより貴方が知っていること全て教えて欲しい。」

カリスは頷くとまた話し始めた。


「人間至上主義者のマリアが何を言ったかは想像が出来る。つまり精霊は自分達より下と言い聞かせたのだろう。ヨハイルは妻が精霊という事を以前は自慢していたが恥ずかしいと言うようになったみたいだ。特にウンディーネは浮気を絶対に許さない。不満が溜まっていったみたいだ。そこにマリア夫人が婿養子の話を持ってきた。プライドの高いヨハイルがどっちを取るかなんて、簡単にわかる。」

そうか…それで……。

「邪魔になったお姉様を川で罵倒して消したのね。」

許さない。ヨハイルだけでなくマリアも。怒りで身体が震える。

「私の復讐の相手は、ヨハイルだけじゃなくマリアもだったのね。……だけどウンディーネのルールでマリアは殺せないわ。」

「大丈夫だよ。マードレッド家は人間至上主義のカルト教として異端審問官から目を付けられてる。君が主人を殺す事で調査が入り、上手く誤魔化せたとしても取引数は激減して衰退していくだろう。プライドの高いマリア夫人にとっては、精霊によって自分の商会が終わるなんて死よりも辛いだろう。」

「そっか、そういう復讐もあるのね。…凄いわカリス。頭が本当に良いのね。」

「……だけど君は良いのか?主人殺しなんていくら優遇されている精霊とはいえ処刑は免れないだろう。」

「大丈夫よ。私は姉の仇が取れればどうなったって良いんだから。覚悟は出来てるわ。」

「……わかった。俺は君の復讐を手伝うよ。だけどもうすぐ夕方だ。夕方になると近くの教会でミサが行われるから人が行き交い始める。…今夜君の部屋に行ってもいい?」

「え!私の部屋に!?えっ!?」

「大丈夫、何もしないよ。今日は遠出でパーティがあるからヨハイル達は帰ってこないんだ。こんな日は他の使用人達も近くの酒場で飲み明かすから、秘密の話をするのにもってこいなんだよ。」

嫌だな私ってば。カリスはヨハイルなんかと違い下心なんてあるわけないじゃないか。

自分の反応に恥ずかしくなりながら、私は頷いた。


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