暗い暗い毎日
「買い物は私達が行きます!スカーレットも一緒に!」
――メイド達の間で良い荷物持ちが出来たと話になったのだろうか。メイド達がこぞって私を連れての買い物を所望するようになった。
「はい、じゃぁあとはスカーレット、よろしく!」
布一枚持ったメイドの後ろを、小麦粉の大袋を持った私がフラフラと歩く。
町のみんなが哀れみで見ている気がする。私は恥ずかしくなり顔を背けた。
「あら、買い物に行ってたのね。」
帰ってくるなりマリアと鉢合わせた。
「あらあら、掃除もろくに出来ない無能と思っていたけど買い物の役には立っているじゃない。」
重い荷物でフラフラになってる私を見て笑いながらマリアは言う。
「はい、次は洗濯だよ!ほら、早くするんだ!」
休む暇なんてない。毎日続く重労働に疲労困憊していた。
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「つ…疲れた。」
夜。1日の仕事を終え私は硬いベッドに倒れ込んだ。
メイド達は買い物以外の仕事も私に押し付けた。
アルタやマリアはもちろん知ってるが注意するはずもなく。
「痛い!…塗り薬塗らなきゃ。」
洗濯物や食器洗いなどで指は切れまくり、カリスから貰った塗り薬を毎日塗っていた。
「酷い顔だなぁ。」
疲れすぎて不眠症になりクマが出来ている。重い荷物の持ちすぎて腰が痛くなり、鏡に映る姿は16歳には到底見えなかった。
「…うぅ、辛いなぁ。」
歓迎されてないとはいえこんな酷い扱いとは。
楽しかった学校生活を思い出し涙が出てきてしまった。
「大丈夫、無に還ったお姉様に比べれば。」
眠れなかった私はお水を取りにキッチンへと向かった。
「…暗いと怖いわね。」
広くて暗い廊下をランタンの光だけで歩くのはちょっと怖い。
「えっと、私の部屋はこっちよね…広くて迷子になりそうだわ…。」
水を飲み終え自分の部屋へと戻る。
「おや、スカーレットかい?」
ビクッとして振り向くと寝姿のヨハイルが立っていた。
「こんな遅くにどうしたんだい?なんだか痩せたみたいだが。」
痩せたというかやつれたのだ。
「眠れないのか?…痩せた君もなかなか魅力的じゃないか?…君の部屋に私も行こうかな。」
ヨハイルはそう言って私の腰をさする。
えっ何この男気持ち悪いわ。…だけど復讐には好都合だった。
「眠れないのです。…ヨハイル様、私の部屋で私を寝かしつけてくれますか?」
「いいだろう、少し運動したら眠くなるはずだ。」
これは復讐の為よ。復讐の為、復讐の為――。
「ヨハイル?何処にいるの?」
夜の静寂にマリアの声が響いた。
「しまった…マリアだ!」
「大変だわ!旦那様…また今度…。」
私は名残惜しそうにしているヨハイルを急いでマリアのところへ追い返した。
マリアにバレてクビにされたらたまったもんじゃない!
「ふぅ、気持ち悪かった。」
自分の部屋へと戻るとヨハイルに触られた感触を思い出して身震いした。
――こんなんじゃダメだ、私は復讐のためにヨハイルと夫婦にならなくてはいけないのだから。
何故なら水の精霊には
【夫が他の女性を愛した場合は、夫を殺さなくてはならない】
というルールがあるからだ。
あの男の事だ。結婚したからと言って私一筋になるとは思えない。
浮気をしたら満面の笑みでアイツを殺してあげよう。
それまではどんな仕打ちにも耐えなくちゃ。
私はベッドへと倒れ込むと、そのまま深い眠りへと落ちていった――。




