番外編2「幼馴染の変わらぬ想い」
◇日向葵視点
私が物心ついたときから、隣にはいつも蓮がいた。
泣き虫だった私を、いつも守ってくれたのは蓮だった。
転んですりむいた膝に、蓮が貼ってくれた絆創膏は、どんな魔法よりも効いた。
いつからだろう。
私が蓮のことだけを、特別な目で見るようになったのは。
『蓮は私が守るんだ』
そう心に決めたのは、ずっと昔のこと。
私の家が、探索者を癒すヒーラーの一族だと知ったとき、私は自分の運命を少しだけ呪った。
この力は、蓮のような普通の男の子には、一生関係のないものだと思っていたから。
秘密を抱えたまま、彼の隣で笑い続ける。
それが私の幸せだった。
だから、あの日、蓮が血の匂いをさせて帰ってきたとき、私の世界は一度、壊れた。
彼が、私の知らない世界に足を踏み入れてしまった。
危険なダンジョンへ、私に何も言わずに。
鼻先を掠める生臭い鉄の匂いが、彼を失うかもしれないという強烈な恐怖を突きつけてくる。
気づけば視界はぐにゃりと歪み、頬を熱い雫がとめどなくこぼれ落ちていた。
でも、泣いてばかりはいられない。
私は、私の秘密を打ち明ける覚悟を決めた。
この力で、蓮を守れるのなら。
「蓮が危ないことをするなら、私が絶対そばで守るから!」
震える声でそう告げたとき、蓮は驚いた顔で、何も言わずに私を見ていた。
これでいい。
嫌われてもいい。
ただ、彼の一番近くで、彼を守る盾になりたい。
たとえそれが、過保護だと言われても。
私のこの想いは、昔から、ずっと変わらない。
蓮がどんなに強くなっても、どんなに遠くへ行ってしまいそうになっても、私は絶対に、その手を離さない。
だって、蓮の隣は、私の特等席なんだから。




