番外編3「甘くて騒がしい学園祭」
◇日向葵視点
最終決戦から一ヶ月後。
私たちの学校では、少し遅めの学園祭が開催された。
私たちのクラスの出し物は、定番の喫茶店。
目玉商品は、もちろん私が――ではなく、蓮が作ったケーキだ。
「はい、お待ちどうさま!」
蓮が笑顔で運んでいくケーキは、開店と同時に行列ができるほどの大人気だった。
その秘密は、蓮が学園祭の数日前にガチャで引き当てた、SRの誰でもパティシエになれる泡立て器。
なんでも、これを使って混ぜるだけで、どんな材料でもプロ級のスイーツに仕上がるらしい。
『反則級の性能だ』
「すごいわね、蓮くん。お店、開けるんじゃない?」
ウェイトレス姿の玲奈ちゃんが、感心したように言う。
エプロン姿も様になっていて、男子生徒たちの視線が釘付けだ。
「私も手伝うよ、蓮!」
私も同じウェイトレス姿で、蓮のサポートに回る。
もちろん、一番近くで。
喫茶店が大盛況のうちに終わった後、私たちは三人で学園祭を見て回ることになった。
お化け屋敷では、意外にも玲奈ちゃんが絶叫して蓮の腕にしがみついていた。
クールな彼女のあんな姿、初めて見た。
『ちょっとだけ、羨ましかったのは内緒だ』
射的の屋台では、蓮がまたしてもスキルを使った。
「お、これ使ってみるか。UR:必中の射的銃」
案の定、全ての景品を根こそぎ持っていき、店主のおじさんに泣きつかれていた。
私たちは、山のようなお菓子を抱えて笑い合った。
日が暮れて、学園祭の終わりを告げる打ち上げ花火が始まった。
私たちは、三人で校舎の屋上から、夜空に咲く大輪の花を眺めていた。
「綺麗……」
玲奈ちゃんが、うっとりとつぶやく。
「うん、綺麗だね」
私も、隣の蓮の横顔を見ながら、頷いた。
戦いは終わった。
でも、私たちの日常は、これから始まる。
隣には、大好きな人と、大切な友達。
花火の光に照らされた蓮の顔を見て、私と玲奈ちゃんの目が、一瞬だけ合った。
バチッ、と火花が散ったような気がしたけど、きっと気のせいだよね?
甘くて、ちょっと騒がしい。
そんな毎日が、これからもずっと続きますように。
私は、夜空に咲く花火に、そっとお願いした。




