エピローグ「今日のガチャは?」
あれから、数週間。
世界を巻き込んだアークス・オルドの野望は、協会によって大規模なダンジョン災害として処理され、世間は元の日常を取り戻していた。
そして俺、神谷蓮はなぜか学園を救った英雄として、すっかり有名人になってしまっていた。
まあ、全校生徒の前でメテオなんてぶっ放したんだから、当然と言えば当然か。
廊下を歩けばサインをねだられ、女子からはラブレターをもらうことも増えた。
平穏とは程遠い毎日に、俺はため息をつく。
それでも、俺は変わらず平凡に過ごそうと努力していた。
「蓮、おはよう! はい、今日の分のプリント!」
葵が元気よくプリントを渡してくる。
「神谷くん、おはよう。昨日のテレビ番組、見たかしら」
すかさず玲奈も声をかけてきた。
俺の教室の席の周りには、なぜかいつも玲奈と葵がいる。
血族の宿命から解放された玲奈は、氷の仮面が嘘だったかのように表情が豊かになり、よく笑うようになった。
クールだった面影はどこへやら、今は隙あらば俺に話しかけてくる。
葵は以前にも増してかいがいしく俺の世話を焼き、私が蓮の一番の理解者なんだからと、玲奈を牽制している。
そんな二人の美少女に四六時中挟まれている俺は、クラスの男子生徒たちから、羨望と嫉妬の眼差しを向けられる毎日だ。
「まあ、これも新しい日常ってやつか……」
俺は苦笑いを浮かべながら、机の下でこっそりとスマートフォンを取り出し、日課であるその日のガチャを引いた。
【獲得】Nランク:どこにでもありそうな映画のペアチケット
「……さて、どっちを誘うべきか」
俺がチケットを眺めてつぶやくと、隣に座っていた二人が、同時にピクリと反応した。
「……私と、行くわよね? 当然」
玲奈が身を乗り出し、冷たい微笑みの奥に絶対に譲らないという意志を光らせる。
「えー? 蓮は私と行きたいに決まってるよね?」
葵も負けじと俺の右腕に抱きつき、上目遣いで顔を覗き込んでくる。
二人の視線が空中で激突し、バチバチと幻の音が聞こえそうなほどの緊張感が走った。
俺の平穏とは程遠い、だけど間違いなく幸せな日常は、どうやらまだまだ続いていくらしい。




