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17-3

「ただいまー。お使い行ってきたわよ」

エミリーに続き、メイベールとアイラも普段通り家へ入ったのですが、ジャスパーは入る前に胸に手を当てました。そしてグランダの前へと進み出ます。

「グランダ王太后、お初にお目にかかります。僕はケステル公爵家が嫡男ジャスパーです」

改めて胸に手を当て会釈をします。グランダは煙たがる様に手を振って言いました。

「そんな貴族の挨拶いらないよ」

一瞬動きを止めたジャスパーでしたが取り乱すことなく続けます。

「……僕は確かに貴族だ。だからこういう挨拶しか出来ないのです。お許しください、女王陛下」

彼は優雅な所作で最後まで挨拶してみせたのでした。


「女王だなんてよくもまあ、平然と。アンタみたいな奴が一番信用ならないもんだよ」

彼は突然笑いだしました。

「ハハハ!ルイス、君が言っていたようにこのお婆さんはへんくつ……おっと、失礼。繊細な心の持ち主の様だ」

急に引き合いに出されたルイスは慌てました。

「おい、ジャスパー」

ジャスパーはルイスに対して鼻で笑ってみせます。今回の件で怒っていた彼はワザと言ってみせたのでした。しかも孫であるルイスを巻き込むことで自身の安全も図る。立ち回りの上手いジャスパーらしい言動です。ただ、妹の方は隣で肝を冷やしていましたが。


グランダは鼻を鳴らして言いました。

「フン!その自信に満ちた薄ら笑い、親父にそっくりだ。そっちのはベオルマのせがれだね?」

テオは頷きました。ただそれだけです。貴族の挨拶なんていらないと言われたものの、ジャスパーとは対照的に余りに礼儀を欠く振る舞いだったため、アイラも肝を冷やしました。しかしグランダから何か言われる前に、その注意は扉を開けて入って来たローブ姿の人物に移りました。


メイベールが驚いて聞きました。

「ジョージ先生⁉どうしてここへ?」

「ちょっとバカンスですよ」

持っていたピクニックバスケットを掲げます。

「ここは静かで良い所ですね。目の前は海ですし、魔法の練習をするにも最適じゃないですか。夏だったのならもっと良かったのですが」

そう言って寒そうに手をこすり合わせながら、暖炉の前に陣取り火に当たり始めました。


続いて、話しながら入って来た人物が、

「ハァ、久しぶりに外へ出て散歩しただけなのに疲れちまったよ。おや、みんなお揃いだねぇ」

メイベールはまたも驚きました。

「マリーさんまで⁉どうしてここへ?」

遠慮なくテーブルに着いた彼女が、勝手に紅茶を淹れて飲み始めます。

「グランダとは茶飲み友達なのさ。せっかくの休みだから遊びに来たんだよ」


グランダは改まって言いました。

「さて。大貴族たちが、わざわざこんな所まで足を運んだんだ。それなりの事情があるんだろう?いい機会じゃないか。あたしが見届け人になってやるから。遠慮なく話し合うといい」

ジャスパーは頷いてから、ルイスに言いました。

「今回の事件の経緯を聞かせてもらおうか」

ルイスはジャスパーの語気に怒りの様なものを感じ取りました。いつも場を盛り上げて楽しませてくれる彼らしくありません。慎重に言葉を選びます。

「ベオルマ家の疑いを晴らす為、必要な事だったんだ」


彼はチラリとジョージ先生の方を見ました。そして話を続けます。

「皇太子が自らが動いたんだ、不意の訪問は貴族たちに対して驚きだっただろう。これはセントランドに側に付く意思があるかどうかの問いだ。キミに何も言わなかった、いや、言えなかったことは理解してくれ」

「そんな事を聞きたいのではない!」

ジャスパーの瞳は感情に呼応して赤みを増しました。

「ジャスパー……キミはメイベールの事で怒っているのか?」

「ああ!そうだとも!妹はキミの計画に付き合わされ、あげくその立場は非常に危ういものになっているんだぞ?」

「それは、申し訳ないと思っている。」

「いや!今回の件だけではない!キミはこれでいいのか?僕は妹の味方だ。何があっても妹に付いて行く。この意味が分からない訳じゃないだろう?」

「ジャスパー、それは脅しか?いくら友とはいえ、皇太子として聞き捨てならないな」

「そう受け止められても一向に構わない。僕も公爵家の時期当主として言わせてもらう。謝罪など必要ない。責任を取れと言っているんだ」

普段、調和を求める彼からは想像の出来ない強い言葉です。ルイスもこれには気圧されました。自分は彼に甘えていた部分があったのだと。

「その怒りはもっともだ……」

また、ルイスはこうも思っていました(私だって出来るならこんな事には……)と、

「……キミが望む形で責任を取る事を約束しよう」

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