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メイベールが二人の間に割って入り、兄を止めました。
「おやめください!お兄様がわたくしの為に怒ってくださったのは痛み入ります。けれど、わたくしの事なら心配いりません。どうか、その怒りをお鎮めください。どうか、わたくしの為にも!」
兄は妹の肩に手をかけ、そしてその眼をしっかり見据えて言いました。
「ルイスは責任を取ってくれると言っている。それに彼には借りがあるんだ。キミは、どうしたい?メイベール」
妹はハッと気づきました。兄は怒ってなどいないのです。その眼は優しく、幼いころと何も変わりません。
「私……ルイス様の事が、」
「ああ、昔から知っていたよ」
「一緒になりたいの……お兄ちゃん、助けて」
「大丈夫だ。任せなさい」
ルイスも驚いていました。
「ジャスパー、キミは、、、」
兄は妹の背中を優しく撫でてから、友に向かい合いました。
「テオ、聞いての通りだ。すまないが、妹との婚約を破棄してくれないか、頼む!」
ジャスパーは深々と頭を下げました。家の威信を何よりも重んじる兄がそのケステルという名のプライドを捨て妹の為に頭を下げたのです。
「ベオルマ家の立場は知っている。キミも家の為にこの数カ月、メイベールとの仲を深めようとしてくれていた事も知っている。だが、妹はこのままでは板挟みにあってしまう。婚約した時とは事情が変わったんだ。それに、やはり妹には望むまま幸せになって欲しい。もし婚約破棄してくれるというのなら、その責務も世の中の悪評もケステル家になすり付けてくれて構わない。次期当主として僕が全ての責任を負うつもりだ。だから、」
「ああ、構わない」
「そうだよな……こちらに都合が良すぎるのは承知している。世間への建前も必要だろう。賠償金なら僕がお父様を説得するから相応の額を、」
妹が兄の袖をちょんちょんと引っ張ります。
「大丈夫だ。大丈夫、」
「お兄様、聞こえていらっしゃらなかったのですか?テオ様は婚約破棄してくれると仰っています」
「は?……なんだって⁉」
驚くジャスパーにテオはもう一度ハッキリ言いました。
「だから、構わないと言っている」
テオがメイベールに向き合います。
「メイベール・ケステル。今、この場を持って貴女との婚約を破棄する」
メイベールも頭を下げました。
「その寛大なお心遣いに、深く感謝いたします」
「ジャスパー、これでいいか?」
「いいのか⁉テオ?そんな簡単に決めてしまって。キミにも立場というものがあるだろう?僕が言えた事ではないが……」
「実は隠していたことがあるんだ」




