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17-2

朝になり皆で朝食を摂りました。今朝はグランダが作ってくれたポリッジです。

「さあ、アンタもお食べ」

犬にもポリッジを出してあげます。しかし暖炉の前で丸まったまま動きません。

「機嫌が悪いようだね」

そこへ、ルイスとオリバーがやってきました。二人だけだったのを見て、エミリーが意外そうに聞きます。

「あら、お兄様、一緒に来なかったのですわね」

「ああ……少しお婆様と話しておきたくてね」

ルイスはなぜかテーブルに着こうとしません。見かねたのかグランダが言います。

「エミー達はちょっとお使いに行ってきな。今日は客人が来るんだ、何かお茶請けになる物でも買っといで。ついでに迎えに行ってやるといいよ」

エミリーはメイベールとアイラを連れ立ってお使いに向かいました。オリバーも気を使い、犬を散歩させようと呼びかけます。

「ミロ、カム」

犬は立ち上がりましたが、散歩に行きたくないのかウロウロしてから、結局オリバーの後を付いて行きました。


二人きりになった事でようやくルイスは席に着き、グランダと向き合いました。

暫く静かに紅茶を飲んでいたグランダでしたが、孫が話しださないと分かるとカップを置きました。

「何か聞いて欲しい事があるんだろう?」

「ハイ……」

「ハァ、アンタはいつもそうだ。自分が我慢すれば、それで上手くいくと思ってる。そういうとこまで爺さんそっくりだ」

「私は皇太子です。自分の意見など言ったところで、どうにもならない事だってある」

「じゃあ、なんで此処にこうして座ってるんだい?どうにかして欲しいから頼みに来たんじゃないのかい、ええ?」

「しかし……私の望みは余りに身勝手すぎる。自分で責任が取れるのならまだしも、それによってこの国が危機に陥るかもしれないのです。言葉にすることも許されない」

「言葉に出来ないから、そうやって身に付けているって訳かい」

ルイスのシャツの袖には、赤い瞳の様な宝石が光っていました。

「昔からお婆様には隠し事は出来ませんね……」

「知らないだろうから教えてやろう。あたしの故郷では、そのボタン飾りを貰った王様は王の座を捨てて愛する人と結ばれたのさ。国民は散々避難したがね」

「やはり私は……メイベールと……」

「好きにしたらいい。誰がなんと言ったってかまいやしないよ。あたしがルイの味方になってやる」

「本当ですか⁉お婆様!」

「尻ぬぐいは任せな。それが大人の役割ってもんだ」


◇◇◇


お使いに向かおうとしていたエミリーが声を上げました。

「いけなーい!お婆様にお小遣い貰うのを忘れたわ」

アイラが言います。

「ルイスさんは何かお話があるようでしたし、今から貰いに行くのはマズくないですか?」

なら、とメイベールが応えました。

「わたくしが立て替えておきますわ。後であの方にまとめて返してもらうので構いません」


準備を終え改めて歩き出したところで、またエミリーが声を上げました。

「いけなーい!二人は今日帰るのだったわね。最後だからホウキで飛んでお使いに行きましょ」

それにはアイラとメイベールも賛成しました。

3人でホウキにまたがり飛んで行きます。


エミリーが二人を見て褒めます。

「二人とも随分と上手になったじゃない」

安全のため低空飛行ながら、安定して飛べています。

「真っすぐ飛ぶだけなら、なんとか」

「まだ、魔力放出が上手くいかないのね。最後だし、わたくしがもう一度教えてあげましょうか?」

手を差し出してくるエミリーに二人とも首を振りました。


メイベールが聞きます。

「でもウイングの魔法は本当に便利ですわね。習得が難しいとはいえ、もっと魔導士の間で知れ渡っていてもいいと思うのですけれど」

アイラも頷いています。その答えをエミリーはニッコリ笑って教えてくれました。

「フフ、もしウイングの魔法を使えるようになったとしても、並の魔導士では扱うのは難しいでしょうね」

「なぜですか?」

「それは推進力に魔力を使っているからよ。普通、魔力を出し続けてずっと飛び回るなんてこと出来ないもの。きっとお使いに行くこの距離だって、魔力が枯渇してたどり着けないわ」

話している内にも村は見えてきました。


例の雑貨屋に入ると店主が出迎えてくれました。しかしその表情は戸惑っている様に見えます。

「あら、何かあった?」

「いえ、何でも、、、大事なかったのなら別に構わないんです、ええ」

「そう?まあ、いいわ。今日はお菓子を買いに来たのよ」

エミリーは知った様子で店内を進み、二人を案内します。

「ファッジを買いましょ。二人は何の味がいいかしら?」

ファッジはキャラメルの様な見た目で、しかし口溶けは軽く、とっても甘いお菓子です。ティータイムでは、砂糖代わりにひと口かじって紅茶を飲むのが定番です。

案内された棚には小さな缶に詰められたファッジが並べられていました。味はチョコレートやバニラ、塩キャラメル、他にも具材にナッツやラムレーズン、マシュマロなどが入れられた物もあり種類は豊富です。


エミリーはラムレーズンを手に取りました。それを見てアイラが止めます。

「エミリーさん、それ干したブドウをお酒に付けたものですよ?やめた方がいいんじゃないですか?」

「そうなの?だからだったのね……子供の頃、お兄様はコレを買ってくれなかったわ」

彼女はもうお酒に懲りているのか、ラムレーズンは諦めて棚に戻しました。

「二人も選んで。いろんな味を楽しみましょ」

それぞれに好みの味を買い求め、店を後にしました。


「さてと、もう到着しているといいのだけれど」

3人は港の方へと歩き出しました。アイラが言います。

「もしかしたら、私達がお菓子を買っている間に行き違いになってたりしません?」

メイベールも言います。

「まだ船にも乗っていない可能性もありますわ。到着するまで、ずっと待つのですか?」

エミリーは「それもそうね」と言うと、歩みを止めました。どうしたのだろうと、顔を見ると、目を閉じています。声をかけようか迷っているうちに彼女は目を開けました。

「今、船から降りるようだわ」


崖下の港を覗き込むと、確かに兄達が船を降りてくるところでした。

「エミリー様、どうして分かりましたの?」

「空間を認知したからよ。空間魔法は空間を移動する物質の存在を捉える魔法だって言ったでしょ?」

「そんな事まで分かるのですか?」

「ええ、わたくしはまだせいぜい見える範囲しか認知できないけれど、お婆様は遠く離れた場所まで認知しているそうよ。それは転移魔法の飛距離にも影響するから、とてもじゃないけどわたくしはまだお婆様の足元にも及ばないわ」


話している内にも兄達は階段を登ってきます。妹の姿を認めたジャスパーが駆けあがって来ました。

「よかった!メイベール、無事だったんだね」

ジャスパーはメイベールを抱きしめました。

「お兄様、たった数日離れていただけですのに、大袈裟ですわ」

「その様子だと何も知らないか、、、とにかく今すぐ一緒に帰ろう」

兄が妹の手を引きます。

「今すぐ⁉わたくし達お兄様を迎えに来たのですわよ?お茶だけでもご馳走になったらどうです?いま茶菓子を買ったところですし、いくら何でも、、、」

「そうか、そうだな……挨拶もなしでは流石にマズいか」


ケステル兄妹が話している後ろで、エミリーはこっそりテオに話しかけました。

「転移魔法はある程度使えるようになったわ。あとは召喚術の書かれた魔導書があれば……多分、お婆様が持っていると思うんだけど」

「そうか、」


一同はグランダの家へと向かいました。

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