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207話 ラグビー部のチハル-5

「悪かったな。俺は野球部の龍之介だ。変な目的で見ていたわけじゃない」


「野球部なのは知ってるよ。学園で男子なんて、あんた一人しかいねぇんだから」


「それはそうだが」


「で、その唯一の男子様が、ラグビー場に何の用だ?」


 彼女は腕を腰に当て、顎をしゃくった。

 質問の形をしているが、逃げ道はない。

 龍之介はさっきの彼女の動きを思い出した。


 低い姿勢。

 迷いのない突進。

 身体をぶつけることへの恐怖のなさ。

 そして、今の衝突で分かった体幹の強さ。

 やはり、見間違いではない。


「サードを探していた」


「サード?」


「野球部の三塁手だ。強い打球を受け止めるポジション。身体能力があって、前に出られる選手が欲しい」


 言葉にしながら、龍之介はチハルの足元を見た。

 スパイクが土を噛むように立っている。

 重心が低い。

 いつでも踏み込める姿勢だ。

 その自然な立ち方だけで、彼女がどれだけ前へ出ることを身体に染み込ませているかが分かる。


「それ、アタイを誘ってんのか?」


「今のところ第一候補だ。ダントツでな」


「はっ。ぶつかって、腰を触って、次は勧誘かよ。なかなか攻めた男だな」


「誤解を招く言い方をするな」


「誤解じゃねぇだろ。アタイは実際に掴まれたんだからな」


 チハルはにやりと笑った。

 怒っているようで、完全には怒っていない。

 むしろ、面白がっているようにも見える。

 周囲の女子たちも、興味津々といった様子で二人を見ていた。

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