205話 ラグビー部のチハル-3
「……サード」
その言葉が、自然と頭に浮かんだ。
ただし問題は、相手がラグビー部だということだった。
いきなり野球部に来てくれと言っても簡単には頷かないだろう。
それでも、声をかける価値はある。
龍之介の足は勝手に動き出していた。
そして彼がグラウンド内に足を踏み入れた、その時だった。
「危ねぇぞ、そこの男子!」
「え?」
声とほぼ同時に、ボールが飛んできた。
楕円球は予想外の軌道で跳ね、フェンスの隙間を抜けるように龍之介の足元へ転がってくる。
反射的に拾おうとした瞬間、グラウンドの中から例の女子が全速力で突っ込んできた。
「どけどけどけぇっ!」
「いや、待て、止まれ!」
「止まれるかぁっ!」
叫び返してくる声には、謝罪よりも覚悟が混じっていた。
まず肩がぶつかった。
次に、胸元へ衝撃が走った。
龍之介の背中から息が抜け、世界が斜めに傾く。
「ぐっ……!」
「いってぇ……! 悪い、怪我は――」
勢いを殺しきれず、二人まとめて地面へ倒れ込む。
女子が顔を上げかけたところで、ぴたりと動きを止めた。
龍之介も止まった。
彼女は、龍之介の上に覆いかぶさるような形で倒れていた。
しかも倒れる直前、龍之介が咄嗟に支えたせいで、片手は彼女の腰に回っている。
乱れた息が、龍之介の顎先に当たった。




