204話 ラグビー部のチハル-2
「押せぇっ!」
「止めろ! そこ行かせんな!」
視線を向けると、ラグビー部が練習していた。
屈強な生徒たちが楕円球を追い、ぶつかり合い、土を蹴って走る。
冬の終わりとは思えない熱気だった。
肩と肩がぶつかる鈍い音。
スパイクが地面を掻く音。
転がった生徒がすぐに立ち上がり、また前へ出る。
「これほどの迫力とは……」
この学園に男子生徒は龍之介しかいない。
だから当然、第4グラウンドで駆け回っているのも全員女子だ。
だが、その迫力は少しも甘くなかった。
むしろ女子だけだからこそ、誰にも遠慮せず、真正面からぶつかり合っているように見えた。
「……ん? あの子……」
その中に、ひときわ目を引く女子がいた。
背が高い。
肩幅もある。
足も速い。
髪は短めにまとめられ、目つきは鋭い。
だが乱暴というより、獣じみた明るさがある。
「うおらぁっ! アタイを止められると思うなよ!」
楕円球を抱えた彼女が、二人の間を強引に抜ける。
タックルに来た相手を肩で受け、足を止めない。
腰を落とし、さらに一歩、二歩と押し込む。
相手の腕が胴に絡んでも、強引に前へ出る。
まるで低く走る弾丸だった。
「……っ!!」
その姿を見た瞬間、龍之介の中で何かがかちりとはまった。
身体能力は申し分ない。
打球を怖がるタイプでもなさそうだ。
肩も強そうだし、前へ出る胆力もある。




