表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
199/202

199話 踏み込む一歩

 そこへミオが、悪気なく、致命的なくらい真っ直ぐな追撃を入れた。


「サユさん。迷う必要はありません。渡したいなら渡す――それだけです」


「それができないから困ってるのよ!」


 叫んだ瞬間、墓穴を掘ったと気づく。

 顔が一気に真っ赤になった。

 声を張ったぶんだけ羞恥も増幅して、完全に負のスパイラルだ。

 周りがわっと騒ぎ、サユはますますむっとする。


 龍之介はその様子を見ながら、あえてそこで空気を切り替えた。

 助け舟を出すなら、言葉より行動のほうがいい。

 サユは、曖昧な場より、狙うものがはっきりしている場のほうが強い。


「よし、実戦形式の練習に入るぞ。サユ、ライトだ。タッチアップする三塁ランナーを送球で刺せ」


「……分かったわよ!」


 守備位置についた瞬間、彼女の視界はすっと研ぎ澄まされた。

 弓道と同じだ。

 狙うべき場所が定まれば、余計な迷いは消える。

 何をすべきか明確な時、サユはぶれない。


 龍之介の打球が飛ぶ。

 ライト線へ、大きなフライ。

 迷わない。

 土を蹴る。

 追いつく。

 グラブに収める。


 そこで一瞬だけ、送球への踏み込みに怖さが顔を出した。

 投げるには前へ出なければならない。

 体を開き、重心を乗せ、失敗の可能性ごと踏み抜かなければならない。


 だが――サユは逃げなかった。

 弓を引く時と同じように、軸を作る。

 体幹を通し、狙いを定め、放つ。

 ボールは矢のような軌道を描き、三塁へ一直線に走った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ