表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
198/198

198話 バレンタイン-サユ

 その問題のサユはというと、ライト寄りの端で固まっていた。

 グラブを持つ手にも、隠すようにチョコを持つ手にも、余計な力が入っている。

 指先にまで緊張が見えた。


 先日は接触プレーで怯み、ピッチャー返しに悲鳴を上げ、打撃テストで数字を突きつけられた。

 それでも彼女は「這い上がる」と言った。

 野球では言える。

 強がれる。

 けれど恋の場面になると、その強さがうまく前へ出てこない。


 当然、周囲は面白がる。

 野次馬半分、応援半分といった者が多い。

 ノゾミは走塁練のついでみたいな顔でサユの前を横切り、にやにやしながら叫ぶ。


「今なら渡せるよ、サユちゃん!」


 軽い調子だった。

 そのひと言でサユの肩がびくりと揺れる。

 さらに、マキが横から囁く。


「角度が完璧ですぅ。今の立ち位置、最高ですよぉ」


「いざ勝負でござる」


 セツナまで便乗する。

 背中の押し方が雑だ。

 続くユイは少し柔らかく言った。


「無理しなくてもいいですわよ」


 その優しさが、逆にサユには刺さった。

 逃げ道を示されると、かえって逃げたくない気持ちが刺激される。

 なにより、自分で自分に負けたみたいになるのが嫌だった。


「無理なんかしてないし。私はただ……タイミングを見てるだけ!」


 ぴしゃりと言い返す。

 ツンとした声の奥で、照れがばれている。

 頬が熱くなるのを誤魔化そうとして、余計に語気が強くなる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ