↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
16/18

16

「さてと、説明してもらおうか」


ゲイルが勢いよくベッドへ腰を下ろすと、辺りから砂埃が舞った。

顔の前で不快そうに砂埃を払うゲイルは、ベッドを振り返ってから私を見た。


「お前、何でそんな小汚いことになってるんだ?」

…あ!


よく見ると寝ていたベッドのシーツが、私のせいで薄汚れている。

そして今私を抱えているルディの白い制服も、同じように汚れてしまっていた。


ごめん!


慌てて降りようとした私を、ルディが力強く引き留める。

見上げると全く気にした様子の無いルディが、私を見て軽く頷いた。


「気にしなくて良い、どうせ洗うつもりだったし。それよりヒナタ、その手紙の内容を説明して欲しいんだ」

「うん」


ルディに勧められて椅子に座った陽向ちゃんは、受け取った手紙を見詰めた後意を決したように顔を上げた。


「手紙を受け取ったのは三日前。部屋のドアの隙間に挟まっていて、差出人は書いてなかった。手紙には『私は日本に帰る方法を知っています。それを知りたければ、三日後の昼前に一区の裏道にある赤い屋根の小屋に来て下さい。誰にも話さず一人で。貴方の身の安全は保障します。それを信じるかどうかは貴女次第です』と書かれていたの」

「胡散臭い話だな。なんでそんな手紙信用しようと思ったんだ?」

「…ごめんなさい」


俯いてそれ以上何も話さない陽向ちゃんに、ルディとゲイルは顔を見合わせる。

そして先に口を開いたのはルディの方だった。


「確かにここに落ちてきた異世界人が、元の世界に戻ったという記述はある。だが具体的な帰還方法は、二年近く探したが見つかっていない」

「あれか。目の前でミサキが消えたっていう、あの現象か」

「…ああ」


ルディが調べてくれた本には、『帰巣本能』という言葉とともに、自分達に世界に帰った現象が書かれていた。

その話を聞いていたから、光に包まれた瞬間私は帰らなければいけないんだと思った。

そういえばあの時の一世一代の告白は、ルディに届いていたんだろうか。

こんな時だから何も言わないのか、聞こえていなかったのか。

それとも気持ちに応えられないからと、聞かなかったことにしてくれているルディの優しさなのか。

そっとルディを見上げてみるけど、この不安が伝わることはない。


「けどその異世界人が、ちゃんと元居た世界に帰ったっていう証拠はあるのか?」

「証拠はない。ただ…」

「ただ?」

「この世界の親しい人間の夢に出てきたという記述があった。無事元の世界に戻ったということを夢で伝えたそうだ」

「ほう。じゃあ、目に見える証拠は無いって訳だな」

「そうなる」


頭を掻くゲイルに、ルディが嫌そうに顔を顰めた。

陽向ちゃんは手元にある手紙を見詰めたままだ。


「で、ヒナタは元の世界に帰りたいってことか」

「…勝手なことしてごめんなさい」

「ヒナタ」


ルディの落ち着いた声に、陽向ちゃんが恐る恐る顔を上げる。

ルディはベットに座るゲイルの隣に私を降ろすと、陽向ちゃんと視線を合わせるように屈んだ。


「ヒナタの持つ力に頼ってばかりの俺達が、こんなこと言っても信じてもらえないかもしれない。ただ帰る方法が本当にあるのだとしたら、俺達は協力する。だから一人で抱え込まないで欲しい」

「…ルディ」

「俺達が頼りないなら、ユーマに相談してくれたらいい。配慮が足りなくて済まない」

「ご、ごめんなさい。皆さんの事信用して無い訳じゃないんです!ただ…」

「ただ?」

「悠馬に申し訳なくて」


そう言って泣き出してしまった陽向ちゃんに、ルディがハンカチを渡す。

私はベットから降りると、陽向ちゃんの足に擦り寄った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。