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「さてと、説明してもらおうか」
ゲイルが勢いよくベッドへ腰を下ろすと、辺りから砂埃が舞った。
顔の前で不快そうに砂埃を払うゲイルは、ベッドを振り返ってから私を見た。
「お前、何でそんな小汚いことになってるんだ?」
…あ!
よく見ると寝ていたベッドのシーツが、私のせいで薄汚れている。
そして今私を抱えているルディの白い制服も、同じように汚れてしまっていた。
ごめん!
慌てて降りようとした私を、ルディが力強く引き留める。
見上げると全く気にした様子の無いルディが、私を見て軽く頷いた。
「気にしなくて良い、どうせ洗うつもりだったし。それよりヒナタ、その手紙の内容を説明して欲しいんだ」
「うん」
ルディに勧められて椅子に座った陽向ちゃんは、受け取った手紙を見詰めた後意を決したように顔を上げた。
「手紙を受け取ったのは三日前。部屋のドアの隙間に挟まっていて、差出人は書いてなかった。手紙には『私は日本に帰る方法を知っています。それを知りたければ、三日後の昼前に一区の裏道にある赤い屋根の小屋に来て下さい。誰にも話さず一人で。貴方の身の安全は保障します。それを信じるかどうかは貴女次第です』と書かれていたの」
「胡散臭い話だな。なんでそんな手紙信用しようと思ったんだ?」
「…ごめんなさい」
俯いてそれ以上何も話さない陽向ちゃんに、ルディとゲイルは顔を見合わせる。
そして先に口を開いたのはルディの方だった。
「確かにここに落ちてきた異世界人が、元の世界に戻ったという記述はある。だが具体的な帰還方法は、二年近く探したが見つかっていない」
「あれか。目の前でミサキが消えたっていう、あの現象か」
「…ああ」
ルディが調べてくれた本には、『帰巣本能』という言葉とともに、自分達に世界に帰った現象が書かれていた。
その話を聞いていたから、光に包まれた瞬間私は帰らなければいけないんだと思った。
そういえばあの時の一世一代の告白は、ルディに届いていたんだろうか。
こんな時だから何も言わないのか、聞こえていなかったのか。
それとも気持ちに応えられないからと、聞かなかったことにしてくれているルディの優しさなのか。
そっとルディを見上げてみるけど、この不安が伝わることはない。
「けどその異世界人が、ちゃんと元居た世界に帰ったっていう証拠はあるのか?」
「証拠はない。ただ…」
「ただ?」
「この世界の親しい人間の夢に出てきたという記述があった。無事元の世界に戻ったということを夢で伝えたそうだ」
「ほう。じゃあ、目に見える証拠は無いって訳だな」
「そうなる」
頭を掻くゲイルに、ルディが嫌そうに顔を顰めた。
陽向ちゃんは手元にある手紙を見詰めたままだ。
「で、ヒナタは元の世界に帰りたいってことか」
「…勝手なことしてごめんなさい」
「ヒナタ」
ルディの落ち着いた声に、陽向ちゃんが恐る恐る顔を上げる。
ルディはベットに座るゲイルの隣に私を降ろすと、陽向ちゃんと視線を合わせるように屈んだ。
「ヒナタの持つ力に頼ってばかりの俺達が、こんなこと言っても信じてもらえないかもしれない。ただ帰る方法が本当にあるのだとしたら、俺達は協力する。だから一人で抱え込まないで欲しい」
「…ルディ」
「俺達が頼りないなら、ユーマに相談してくれたらいい。配慮が足りなくて済まない」
「ご、ごめんなさい。皆さんの事信用して無い訳じゃないんです!ただ…」
「ただ?」
「悠馬に申し訳なくて」
そう言って泣き出してしまった陽向ちゃんに、ルディがハンカチを渡す。
私はベットから降りると、陽向ちゃんの足に擦り寄った。




