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三ヵ月後

「どぉりゃぁ、ぁぁぁ!ぁぁぁ!!」


 鈍い鉄色の刃が煌く。

 魔物の首はたったそれだけで切り裂かれ、胴体と永遠の離別を果たす。

 その別れを惜しみ嘆く涙のように緑色の血が盛大に噴出し地面を汚した。


 何匹も、何種類も魔物を屠ってきて理解した事だが、この世界の魔物の血の色は総じて緑。

 その血に流れる色が、人と魔物を明確に区別する要素の一つだそうだ。

 緑色の血を見て、ある時…元の世界ですごく有名なバトル漫画の、口から卵を産む星人みたいだと感じた事もあったか。


 無駄な事を考える余裕すら保ちながら、刃を完全に振りぬき腰から上を回転させて勢いをゆっくりと殺していく。

 ここで腕の力や腰の力だけで、この振った剣の勢いを止めようと考えてはいけない。

 それをしては、すぐに身体の節々に痛みが走り、剣を振るう事が難しくなるだろう。


 何度も経験して、どうすればいいのか考えぬいた事だ。

 もう身体に染み付いているといっても過言ではない。

 物語の中に登場する転生、或いはトリップした奴らはよくもこんな武器を軽々と振るえたものだ、と感心する。


 強く大地を踏みしめ前を見ると、倒れた土色の鎧と兜の向こう側に、また新しい魔物の姿が見えた。

 中級低位『アースナイト』と呼ばれる魔物は、地面の魔素を吸い取り生み出してくるナイトという名前とは裏腹に、暴力の化身のような存在だ。

 ただ、魔物に手を出す事は一切なく、魔物もまた彼らに手を出す事はない。

 時には彼らは自分たちより格下の魔物を守るように、小さな巣などの周辺に大量に発生する事もあり、その関係性から騎士、などという呼び名がついただけの事。

 知性も何もない魔物にむけ、完全に振り切ったお陰で負担を最小限に抑えた俺の刃が、再び全力で振りぬかれる。


 刃先はしっかりと立て、腰を使って思い切り振り切る。

 身体を痛める事や、技術を使う事で刃を途中で停止させるという奇策、に出る事も可能だが、この程度の相手にはそれは必要あるまい。


 案の定、俺の振るった二つ目の刃はあっさりと『アースナイト』の纏った土色の鎧に触れると、金属同士が全力でぶつかり合う嫌な音を立てて人型の魔物の方が吹き飛んでいった。

 彼らの鎧は鉄よりも脆いものの、それでも金属と同じ硬質さを持つ厄介な代物だ。

 多少の技術を持って振るった所で、鎧ごと一刀両断なんて到底無理に決まっている。

 だからこの程度は想定済みとし、すぐさま剣を投げ捨てると自らの腰に手を回し専用のベルトからナイフを引き抜くと疾走。

 痛みや衝撃に悶えて動けないでいる『アースナイト』のヘルムの隙間に、その刃を突き立てた。



「―――――――――――――――!!!!!」




 ビクン、ビクンと魔物の身体が跳ね上がるが知った事ではない。

 そのまま首を切り落とさんとばかりに横にナイフを動かしてやると、一匹目同様に盛大に緑の血を噴出した。

 まるで噴水のようなその勢いばかりはどうしようもなく、完全に相手に致命傷を与えた事を確信してから身体を離すも

 俺の顔や、髪はこれでもかというほど緑色に汚れてしまっていた。



「ペッ!口に入った…気持ち悪い…」


 ちらり、と視線を動かしてアイリの方を見ると、彼女は…最早、流石という言葉も浮かんでこない。

 いつの間に始末したのか、3匹の『アースナイト』が地面に倒れ微動だにしていなかった。

 俺より多く倒したくせに俺より早いとか、どんだけだよちくしょー。


「コウタ様の足元には及ばない、雑魚だったみたいですね」


 魔物三匹をあっさりと惨殺し、そのくせ俺のように血濡れになっていないアイリが優雅に頭を下げた。

 その動きは洗練されていて美しさを感じるのに十分なものだったが、俺はため息混じりに言ってやるのだ。


「アイリの方がよっぽすごいよ、今日も勝てなかったなぁ…次は負けないかんな!」


 人、それを負け犬の遠吠えという。


 こんな調子で、俺たちのギルドランク2『フローライト』から昇進し

 ギルドランク3『オーソクレース』になる為の試験は平穏無事に終わりを告げたのだ。








 三ヶ月。

 俺が最初にこの世界に訪れ、帰りたいと願いながらも生きていく事を余儀なくされてから、三ヶ月が過ぎた。

 その間の出来事で語る事はない、鐘二つで目を覚ましほぼ毎日訓練をして木剣から本物の剣を握り締めて振るい、仕事を受けにギルドに行く。

 初期ランクのままでは特にコレといって危険な仕事もないが、それでも街の外に出る事は多い。


 アイリと二人で街を出て、簡単に仕事をこなして戻って報告。

 真面目に続けて最初の半月でギルドランクはフローライトに昇進した。

 あの無骨な鉄板の縁に簡単な装飾を施しただけのカードを渡された時、なんとなく感動したものだ。


 そういえば、最初の依頼で俺たちが見つけたゴブリンの巣は何事もなく駆除をされたそうだ。

 ただ、何故あの魔物があんな場所に移り住んでいたのかを疑問視する声は多少あった。


 ギルド併設の食堂でで昼飯を食べている間、年中繁殖期である奴らの元の集落に人が増えすぎた為に群れの王のもとから一部の連中が移動してきたのだろう、という意見が圧倒的に多く

 またギルド側も、恐らくはその通りなのだろうという見解で一致して以来、その事は人的被害が一切なかった事もあり、人々の記憶の中に埋もれていった。

 些細な事を気にしていられるほどこの世界はのんびりとしていないのだ、倒すべき魔物は次から次へと生まれ出る。


 腰にベルトで取り付けた多目的収納ポーチの中に納まる、魔核の持ち主『アースナイト』もそうだ。

 地中に存在する石などが長い間、大地に含まれている魔素とふれあい核となり、その核を中心に肉体を生み出していくという、なかなかに稀…らしい発生方法をする魔物はしかし

 一度発生を確認されると、数週間の間に大規模な群れとなり徒党を組み人間の町や村に武器を向ける。


 そうなると上位ランクの出番となってしまうが、今回は運よく早い段階で奴らの発生を感知できた事。

 『ランク3:オークソレース』昇進間近の俺たちがいた事。

 奴らは単体での強さは、そこまで厄介ではないとされる為、新人を卒業した冒険者たちの実力試しにちょうど良いという事。


 さまざまな要因が重なり、今回は俺たちが発生した固体の討伐と魔素の除去という仕事を請ける事になったのだ。

 結果は先ほどの通り、問題はないまま仕事は終わり、俺たちはギルドの要報告カウンターで椅子に座っていた。



「こちらが『アースナイト』の魔核5つと、魔素吸収した宝玉になります」

「はい…はい、確かに宝玉の方はお受け取りします、核のほうも簡単に査定しましたが間違いないようですね」

「当然です。コウタ様と私が仕事を請けたのですから」

「はは…これが討伐結果の偽装などを行う連中もいるんですよ、ご理解くださいね」


 三ヶ月前に俺たちの仕事の報告を受け取った中年になりかけの男性は、苦笑いを浮かべながらモノクルを外す。

 少し肥え気味の彼には似合っていないという感想の方が多く浮かびそうなアイテムだが

 彼だけがつけてるお洒落アイテムという訳ではなく、ギルドでのみ使用が許可される特別な鑑定用魔道具だ。


「それ便利ですよね、売ってないんですか?」

「売ってませんねぇ…これが悪用されると結構困るんですよ、はい…ぽんぽんぽんっと…報告完了!お疲れ様でした

 コウタさんとアイリさんは昇級できますねー…どうします? しときます?」


「もちろん! 前回の昇級の時は何日か待たされたんですけど、今回も待つんですか?」

「待ちますよー…それじゃあ、手続きとかありますんで4日くらいしたら、また来てくださいね」

「わかりました」



 4日か…その間に仕事を請けてもいいが、どうせならのんびりするのも悪くないな。

 依頼達成を確認して報酬である銀貨2枚と銅貨35枚をアイリが受け取るのを見ながら考える。

 いや、それとも携帯食料の買出しや消耗した道具の買出しをするべきだろうか。

 すっかり忘れかけていたが、新しい靴を購入しておきたいと何度か考えていたのだ。



「コウタ様、行きましょうか?」

「あ? あぁそうだな、宿に戻るか?それとも、どこかに遊びに行く?」

「そうですねぇ…少し散歩なんてどうです?」

「めんどくさい…と思ったけど、宿でごろごろするよりかはマシかぁ~」


 中年目前の職員さんが立ち上がり、奥のほうで簡単な事務仕事に戻ったのを見て、自分たちも席をたつ。

 隣を見れば俺たちと同じように依頼の完了報告をしたものの、何か職員と揉めている様子の女の姿。

 会話の内容を小耳に挟む限り、魔物の数が予想以上に多くそれを倒してきた自分たちは、もっと多くの報酬を受け取れるはずだ、とかなんとか。


 下手をすればケンカに発展しかねない剣幕の彼女の頭の上では突きたてられた耳が感情をこれでもかと言わんばかりに表現をして

 後ろには、物騒な鎧やら皮鎧に身を包んだ男たちが数名。

 この三ヶ月、結構な頻度でギルドに通っていた俺たちにとっては、割と慣れ親しんだ光景だ。

 




「ようルーキー、仕事終わりか?」

「やぁ…そうだな、ついでに言うと昇進も決まったよ」

「そりゃスゲェ!この前魔物を倒してヘコんでいた新人が成長したもんだぜ」

「昔の事は言うなよ!」


 それだけの間通っていれば、顔見知りだって何名かはできる。

 こうして話かけてきた男はエリック、風体で言えば大将達によく似た山賊のようなしっかりした体躯の男だ。

 ついでに言えば、最初に俺がギルドに訪れた時に受付の場所を教えてくれた親切な奴でもある。

  

 最初期ランクからランク2『フローライト』昇級時に、偶然出会ったのでお礼を言ったら、恥ずかしがりながらも

 新人が生きていれば成長した時、良い情報を得られるかも知れないし何より気持ちいいだろ?

 なんて笑って言うことができる気の良いおっさんだ。


「それでどうよアイリちゃ~ん、こんばん俺と一緒に昇級祝いも兼ねて呑まない?」

「申し訳ありません、今晩はコウタ様との先約がありまして…お気持ちだけ受け取っておきますね」

「くぁぁっ!モテる男だなおい、コウタよぉ…一晩アイリちゃんを貸す気になったらいつでも言ってくれて良いんだぜ」

「エリックじゃあ10回生まれ変わった先の命まで担保にしても、アイリを借りるには遠いと思うぜ?」


「ちょっとエリックさいてーね」

「下半身で動く男はこれだから…死ねばいいのに」

「むしろ死ね、死んでアイリさんにお詫びしろ」



 その様子を見守っていたギルド所属の冒険者の中でも、それなりに珍しいといった部類に入る女性ばかりのチームから非難の声があがった。

 口撃と呼ぶに相応しいソレは過激な内容もあってか、或いは団結した女性は強いと知っているのか

 両手をあげて降参のポーズをとったエリックはそのまま逃げるように二階へと去っていく。

 あの呆れるくらいわかりやすいおっさんらしい所がなければ、もっと素直に先輩として尊敬してもいいのだけどなぁ…。


「アイリさん、大丈夫でした?エリックにセクハラされて気分を悪くしたなら言ってくださいね」

「依頼中の事故に見せかけて殺す手はずはいつでもできますよ」


 …あれ、この娘たち俺がいる事を理解しているのかな。

 なんかとんでもない事を口走った気がする…女って怖いなおい。


「ふふ、ありがとう…でも大丈夫ですよ、彼も冗談で言ってるでしょうし…私がコウタ様だけに全てを捧げてるのは知っているでしょうから」


 控えめに言うアイリの柔らかい感触が俺の腕に伝わってくる。

 コート越しでも伝わる膨らみや、甘く柔らかい女を意識させる香りは何度体験しても慣れない。

 ドキッとしながらもまるで恋人のように絡んできたアイリの手を握り返してやると、女性陣から黄色い声援があがった。


「アイリさんは本当に素敵だわぁ…女の私から見ても惚れ惚れするし」

「だよね~、背も高いし佇まいから気品のようなものがあふれるっていうか」

「きれいで格好良くて惚れるのもやむなし」


 ね~~! と女たちの声がいっせいに重なって響きだす。

 何ともまぁ元気な事だ…というか、隣に俺がいるんですけど。

 完全に意識の外か、或いは彼女たちにとって俺はアイリのおまけなのか、気にかけてもらえないというのもさびしいな。

 

 微妙にげんなりとした気持ちになりながら、軽くアイリの手を引いて外へと促す。

 彼女も俺の合図に気がついたのか、彼女たちに軽く会釈をすると足早にそちらを立ち去った。






「コウタ様のほうが魅力にあふれた方だと思うんですがね…」


 ギルドを出て早々、二人で街を歩きながらアイリはぽつりとそんな事を口にした内容を聞いて、ソレはないと思った。

 俺はどちらかというと目立たないタイプでアイリは10人とすれ違えば、ゲイやホモ以外は振り向く容姿をしている。

 その上、まだ広く認められたりはしていないが仕事の腕も素晴らしい。


 街の外に何度も出ているのに、その全てが俺とそろって無傷での帰還。

 だというのに依頼自体は達成しているとなれば、一目置かれるのも当然だろう。


「別にいいよ俺は、目立ちたいってわけでもないし…アイリがいてくれたらね」

「…コウタ様……今のもう一度お願いします」

「…やだ」


 何故、そんな恥ずかしい事をしてやらなくてはならないのか。

 あはははと笑い混じりに一蹴して、獣人の子供たちが追いかけっこをしながら通り過ぎていくのを見送る。

 何ともいえない平和な世界、街の外に出れば争いは絶えず、時には人と人同士で戦う事もあるといのに、こうしていると何とも平和ボケしてしまいそうである。

 相変わらず元の世界の娯楽や生活、或いは家族の存在が恋しくてしょうがない時はあるが…少しずつ慣れてしまっていってる自分を自覚してしまう。


 そろそろ本格的に帰る為の手段を探し出さなければなぁ…。

 コツコツと三ヶ月で貯めた金は結構な金額であり、姫からもらったお金も底を尽きる事は当分なさそう。

 となれば後は、この国の帝都にでも行って図書館で伝承でも探して………。


 まぁ明日でもいいか、と後ろ向きな考えを抱きながら、広場まで訪れる。

 あちらこちらに旅の吟遊詩人が壁や椅子に座り、自慢の楽器を構えては詩を歌い、この国でも数の少ない芸で飯を食べる大道芸人が子供相手に、自慢の技を披露する。

 その辺りで飯でも買って、適当に見物でもして帰ろうぜと言おうと顔をあげると…広場の中央に人だかりができている事に気がついた。

 見れば、先ほど走っていった獣人の子供たちまで混ざっていたりして、結構な規模の人が集まっているようだ。


「なぁ、おい、これってどうしたんだ、何かあったのかい?」


 気になった俺は、とりあえず人だかりの中で一番手近な場所にいた青年の肩をたたき、こちらを振り向かせると尋ねる。

 彼は一瞬嫌そうな顔をしたが、すぐに視線を人だかりの向こう。

 何かが行われているであろう場所に顔を戻すと




「はいはーい!それじゃあボクと勝負する次の人は誰かな、どんな相手でもいいぞーかかってこーい!」




 活発そうな女の子の声がその辺りから聞こえてくる。


「勝負?」

「あぁ、そうなんだよ今朝早くに街についた旅人さんらしいんだけどね、簡単な机を一つ置いて自分と勝負したら、賞金をやるって言うんだ」

「…勝負って、だって女の声だったぞ?」

「そこだよ、相手は女、なら力自慢なら賞金は余裕で手に入る…そう思って挑んだ男たちはあと一歩の所で全滅、参加料も賞金になっていって、今じゃ彼女に勝てば一攫千金ってやつさ」


 へぇ、そりゃすごい…というよりお約束的なことをしてるんだな、と思いながら背伸びをして、何とか人の向こう側を覗こうと試みる。

 しかし結構な人気を得ているのだろう、彼女の周りには背の高いつよそうな男たちや、ギルドでちらほらと見た事もある奴らが、次は俺だと意気込んで順番待ちをしていた。


「コウタ様、何だか面白そうな事をしてるんですねぇ」

「あぁ…女の声ってのがまた興味をそそるな、一目で良いから見ておきたいもんだ」

「…蹴散らしますか?」

「なんでお前はそう物騒な発想に行くんだよ、そんな事したら大騒ぎだろ!?…あぁ、でもアイリなら勝てるか?」

「さぁ…どうでしょう、コウタ様が勝利しろというのでしたら、どんな手段を使ってもやってみますが…」

「……やっぱいいわ、それより俺も参加してきてもいい? 訓練の成果をちょっと試してみたくって」


 えぇ、参りましょうというアイリを引き連れて人だかりを掻き分けて進んでいく。

 途中見物の邪魔をされたと嫌そうな顔をする人もいたが、参加しますから通してください、というとそれならばと道を譲られたりしつつ、何とか人の輪の一番内側にたどり着いた。


「ぬぉぉぉぉぉ!!!」

「あははは! あ、危ない! 負ける負ける、まけちゃ・・・あぁぁ! はーい! ボクの勝ちだね!」


 そこでは日本で言う所のノースリーブのシャツに無地柄の、この辺りではさして珍しくもない素材で作られたホットパンツに身を包んだ、何とも健康そうな肌色と格好の女性が大人の男の腕を机の上に叩き落していた。

 髪の色は薄い紅色、燃えるというより静かに輝くような美しさの少女に、俺は見覚えがある気がした。

 整った顔立ち、強気な瞳、アイリを静かな美しさと評するのなら目の前の彼女は力強い美しさだ。


 自分が敗北した事を知り、こんな悔しそうに舌打ちをして立ち去ろうとしていた男が彼女に呼び止められたようで、二人の会話が耳に飛び込んでくる。


「ねぇオジさん、一つ聞きたい事があるんだけど!」

「んだよ…俺は急がしいんだから早くしろ」

「あははありがと!あのね、ボク人を探してて…黒髪、黒目で背はボクより少し高くてちょーっとだけ目つきの怖い人を探してるんだ、名前はね――――――」



「ふぅ、すいません…失礼な男に声をかけられまして、遅れました………あら、あの娘は」


 隣でアイリの声がしたが、今はそちらに視線を向けたりする余裕はない。

 そう確かあの娘、どこかで見た覚えが…うぅん、うーん…もしかして、いや、まさかなぁ。






「名前はね――――コウタって言うんだ!ボクの大事な人なの…知らないかな?」

「え、俺?」





 思わず声が出てしまった、どこかで覚えがある相手だなぁと思っていたらその人物に名前を呼ばれてしまった。

 …その呟きを聞いた少女は、ゆっくりと顔をこちらに動かすと、たっぷり数秒間おれを凝視。

 彼女に質問をされた男も俺の方を見て、俺の事を指差しながらアイツも黒髪黒目だな、もしかしてあれか?なんて聞いたりしていが、もはや聞こえていないようだ

 じんわりと紅い髪の少女の瞳に涙が滲んでいく。






「コウタ様…コウタ様!ボク会いたかったよ、コウタさまぁ!」

「うぇぇぇぇ!?や、やっぱり、やっぱりぃぃぃ!?」

「あらあらまぁ…久しぶりですね、無事でした?」




 三ヶ月前にこの世界にやってきた俺の傍にいたアイリのように

 俺と友人で面白おかしく作り上げていた設定の中に存在する二人目の存在。

 ボクっ娘で類稀なる体力と格闘センスを持つ、美少女は人目を憚ることなく俺に抱きついてきたのだ。

 

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