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「カーテン開けると異世界トリップで大儲け」  作者: 碧凛睡
第2章 新しい異世界カーテンの向こうで大商売!
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第33話 黒曜港到着! 美しすぎる吸血鬼からの招待状

「……港っていうより、巨大な異世界そのものだな」

黒曜港に到着した蓮は、目の前に広がる光景に思わず声を漏らした。

巨大な船が空を飛び、海には見たこともない生物が引く輸送船が浮かんでいる。

港の市場には、透明な果実、魔力を蓄えた宝石、空中を泳ぐ魚、そして見覚えのある日本語が書かれた商品まで並んでいた。

「おいおい……日本の商品もあるぞ」

蓮は思わず足を止めた。

棚に置かれていたのは、見覚えのあるスナック菓子。

ただし、値札を見て目を疑った。

「一袋、金貨三枚!?」

「れん、あれ買うの!?」

モモが目を輝かせた。

「いや、待て。これは商売のチャンスかもしれない」

蓮は商品を手に取り、裏面を確認した。

日本から持ち込まれた商品らしいが、輸送経路も販売元もわからない。

しかも、隣の商品には別の世界の文字が刻まれていた。

「……この港、ただ商品が集まっているだけじゃない。異世界同士の商品が、ここで混ざっているんだ」

ミリアがうなずく。

「スマートフォンが示していた取引網の中継地点。間違いなさそうですね」

バルトも周囲を見渡した。

「商人の数が多すぎる。普通なら、こんなに多くの世界の商品を一か所で扱うのは難しい。誰かが流通を管理しているはずだ」

ガルドが低い声で言った。

「問題は、誰が管理しているかだな」

そのとき。

「お待ちしておりました、蓮様」

黒い制服を着た女性が、静かに頭を下げた。

「……俺?」

「はい。こちらをお渡しするよう、主人から命じられております」

差し出されたのは、深紅の封筒だった。

封蝋には、黒い薔薇の紋章。

蓮が封を開くと、美しい文字が記されていた。

『境界の商人、蓮様へ。

黒曜港へようこそ。

あなたが探している取引網の秘密について、少しだけお話しする用意があります。

今夜、月が最も高く昇る頃、黒薔薇の館へお越しください。

お連れの方々も歓迎いたします。

ただし――あなたには、ぜひ一人で来ていただきたいものです。

ヴェルティア』

「……ヴェルティア?」

蓮の顔が引きつった。

スマートフォンが震える。

【警告:高位吸血鬼ヴェルティア】

【危険度:測定不能】

【推奨行動:接触を避ける】

「いや、危険度が測定不能って、どういうことだよ……」

セレナが手紙を取り上げた。

読み終えた瞬間、その美しい顔から笑みが消える。

「蓮。一人で行くなんて、絶対に駄目よ」

「いや、まだ行くとは……」

「駄目」

「はい」

即答だった。

モモが手紙をのぞき込む。

「黒薔薇の館って、お菓子のお店?」

「違うと思うぞ」

「じゃあ、行かなくていいね!」

「いや、取引網の情報があるんだよ!」

「れん、危険って書いてあるよ?」

「それはそうなんだけど……」

ガルドが腕を組んだ。

「罠の可能性は高い。だが、向こうから接触してきた以上、無視すれば別の手段を取るかもしれん」

バルトが手紙を見つめる。

「しかも、俺たちが探している情報を持っていると言っている。こちらの動きを把握しているのは確実だ」

ミリアは封筒の封蝋を調べた。

「この紋章、ただの飾りではありません。微弱な魔力が残っています。追跡用か、それとも本人の魔力を示すものか……」

蓮は少し考えた。

そして、スマートフォンを取り出す。

「行くにしても、相手の条件をそのまま受け入れるつもりはないよ」

「蓮?」

「俺は商人だからね。まずは条件交渉だ」

蓮は招待状の裏に、ペンで一文を書き込んだ。

『商談には応じます。ただし、仲間の同席を認めていただきます。取引条件と安全を確認できない場合、商談は成立しません』

「これでよし」

セレナが少しだけ表情を和らげた。

「……それなら、いいわ」

「ただし、私も同行するから」

「もちろん」

セレナは満足そうに微笑んだ。

「それと、蓮。あなたが相手の美女に見とれていたら、私が引きずって帰るから」

「なんでそうなる!?」

「念のためよ」

「何の念だよ!」

モモが羽をぱたぱたさせた。

「セレナ、やきもち!」

「モモ?」

「はい、黙ります!」

     ◇

その頃、黒薔薇の館。

黒い大理石の床。

赤い絨毯。

天井から吊るされた巨大なシャンデリア。

壁には、数えきれないほどの異世界の地図が飾られていた。

その中央に、ヴェルティアが座っていた。

深紅のワイングラスを傾けながら、彼女は報告を聞いていた。

「蓮様から返事が届きました」

侍女が手紙を差し出す。

ヴェルティアはそれを読み、くすりと笑った。

「仲間を連れてくる、ね」

赤い瞳が楽しそうに細められる。

「思ったより慎重な子なのね。力だけで突っ込んでくるタイプかと思ったのに」

「招待を取り消されますか?」

「いいえ。むしろ歓迎するわ」

ヴェルティアは立ち上がった。

身体のラインに沿う黒いドレスが、歩くたびに優雅に揺れる。

「竜王の姫君に、魔法使い。それに信用を失った商人と、老練な商人……ずいぶん賑やかな顔ぶれね」

彼女は窓の外を眺めた。

「でも、私が欲しいのは、あの子だけ」

その声は甘く、柔らかかった。

しかし、次の瞬間。

館の奥にある巨大な扉が開き、黒い外套の男が姿を現した。

第29話で蓮の能力を目撃していた、あの謎の男だ。

「ヴェルティア様。境界商人との接触は、まだ早いのでは?」

ヴェルティアは振り返らずに答えた。

「あなたは、まだ私に指図するつもり?」

男は黙った。

「安心して。殺したりはしないわ」

ヴェルティアは微笑む。

「少なくとも、あの子が自分から私のところへ来てくれるうちはね」

「彼の能力が、境界の始点を開く鍵だと?」

「それもあるわ。でも、それだけじゃない」

ヴェルティアの赤い瞳が、闇の中で輝いた。

「私は長い間、退屈していたの。お金も、力も、欲しいものはほとんど手に入った。けれど、誰も私を驚かせてくれなかった」

彼女は水晶に映る蓮の姿を見た。

「ようやく見つけたのよ。私の予想を裏切ってくれそうな男を」

そして、妖艶に笑った。

「さて……商談では、何を差し出せば私に興味を持ってくれるのかしら?」

     ◇

夜。

蓮たちは、黒薔薇の館の門前に立っていた。

「……本当にここに入るのか」

蓮がつぶやく。

「もちろん。あなた一人で行かせるわけがないでしょう?」

セレナは堂々と胸を張った。

ミリアは魔力探知を開始し、ガルドは周囲の出口を確認している。

バルトは館の門に刻まれた紋章を見つめていた。

「この印……ヴァルド商会の取引書類で見たことがある」

「本当か?」

「ああ。直接同じものかはわからないが、似た紋章が契約の承認印として使われていた」

蓮の表情が変わった。

「じゃあ、ヴェルティアはヴァルド商会とつながっている?」

「まだ断定はできない。だが、偶然とは思えないな」

そのとき、門が音もなく開いた。

「お待ちしておりました、蓮様」

先ほどの侍女が、優雅に一礼した。

「ヴェルティア様がお待ちです。どうぞ、お入りください」

蓮は一度、仲間たちを見た。

「何があっても、勝手に契約しない。怪しい話にはすぐに乗らない。危険を感じたら撤退する」

「了解」

「わかったわ」

「任せろ」

モモも羽を広げた。

「プリンがなかったら帰る!」

「そこだけは譲れないのかよ!」

蓮は苦笑し、館の中へ足を踏み入れた。

長い廊下の先。

大きな扉が、ゆっくりと開いていく。

そして――。

「いらっしゃい、蓮くん」

そこにいたのは、息をのむほど美しい女性だった。

漆黒の髪。

赤い瞳。

艶やかな唇。

彼女はソファから立ち上がると、蓮の目の前まで歩いてきた。

「会いたかったわ」

ヴェルティアは、蓮の顔をのぞき込む。

「あなたのこと、ずっと見ていたのよ」

「……それは、少し怖いですね」

蓮が正直に答えると、ヴェルティアは声を上げて笑った。

「ふふっ! 正直な子ね。ますます気に入ったわ」

彼女は蓮の手を取ろうとした。

だが、その手をセレナがすっと遮る。

「申し訳ありません。商談でしたら、まずは席についてお話ししましょう」

ヴェルティアはセレナを見た。

セレナも、まっすぐに見返す。

二人の美女の間で、目に見えない火花が散った。

「あら……あなたが竜王の姫君ね」

「ご存じでしたか」

「ええ。もちろん」

ヴェルティアは意味深に微笑んだ。

「でも、安心して。今夜はあなたから彼を奪ったりしないわ」

「今夜は?」

セレナの声が低くなる。

蓮は心の中で叫んだ。

(なんで商談に来ただけなのに、こんな空気になってるんだ!?)

その瞬間、ヴェルティアの背後にある巨大な水晶が輝いた。

そこに映し出されたのは、異世界をつなぐ無数の線。

その中心にあるのは――境界の始点。

「さて、蓮くん」

ヴェルティアは微笑んだ。

「あなたが探している取引網について、お話ししてあげる」

彼女はグラスを置いた。

「その代わり、一つだけお願いがあるの」

「……お願い?」

「ええ」

赤い瞳が、蓮を捉える。

「私と、個人的な契約を結んでほしいの」

スマートフォンが激しく震えた。

【警告:特殊契約の提案を検知】

【契約相手:ヴェルティア】

【契約内容:未確定】

【警告:契約成立後、解除困難の可能性】

蓮は画面を見て、ゆっくりと顔を上げた。

ヴェルティアは、まるで獲物を前にした捕食者のように微笑んでいた。

「さあ、どうするの? 境界の商人さん」

黒幕の美女が仕掛けた、最初の商談。

それは、商品の売買では終わりそうになかった。

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