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「カーテン開けると異世界トリップで大儲け」  作者: 碧凛睡
第1章 カーテンの向こうで大商売!
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第8話 一日一回の異世界ゲート

 スマホの画面には、見慣れない文字が表示されていた。

 『次の接続まで――23時間59分』

「……一日一回?」

 俺が呟く。

「どういう意味です?」

 ミリアが横から覗き込む。

「分からない」

 俺は画面をタップした。

 反応はない。

 電源ボタンを押す。

 普通にスマホの画面に戻った。

「……何だったんだ?」

 そのとき。

 カーテンがゆっくり閉じ始めた。

「待って!」

 俺が窓へ駆け寄る。

 だが、間に合わない。

 シャッ。

 完全に閉じた。

「……」

 俺はカーテンを掴む。

 開ける。

 ――開かない。

「……おい」

 もう一度。

 開かない。

 力を入れる。

 開かない。

「レンさん?」

「……開かない」

「え?」

「カーテンが開かない」

 ミリアも試す。

 やはり動かない。

「本当に……」

 俺はスマホを見る。

 残り時間。

 23時間48分。

「……あと一日」

 ミリアが青ざめた。

「ということは……」

「今日は日本に戻れない」

「そうなりますね」

「……マジか」

 俺は頭を抱えた。

 しかも。

 今いる場所は――

 魔物が大量発生している王都。

「最悪だ」

 俺は思わず呟いた。

 するとグレンが笑った。

「そうでもない」

「え?」

「君には商品がある」

「商品?」

「この状況で必要になるものだ」

 俺は周囲を見る。

 ギルドには多くの商人が集まっている。

 魔物の襲撃に備えて、街は混乱している。

 水。

 食料。

 明かり。

 包帯。

「……」

 俺は気づいた。

「そうか」

 俺の持っている商品は――

 こういう非常時にこそ役に立つ。

「グレンさん」

「何だ?」

「水と食料、どれくらい必要?」

「王都全体か?」

「できるだけ」

 グレンは驚いた顔をした。

「まさか……」

「売ります」

 俺は言った。

「必要な人に」

 その日の午後。

 商人ギルドの一角に、俺の商品が並べられた。

 保存食。

 缶詰。

 乾電池。

 LEDライト。

 包帯。

 タオル。

 石鹸。

 水。

 そして簡易的な救急用品。

「これはいくらだ?」

「銀貨三枚です」

「こっちは?」

「銀貨一枚」

「高い!」

「嫌なら買わなくていい」

 俺は値段を下げなかった。

 だが――

「ただし、困っている人には無料で渡します」

 商人たちがざわついた。

「無料?」

「どういうことだ?」

「商売じゃないのか?」

 俺は答えた。

「商売はする」

「だったら――」

「でも、命に関わるものまで金がないから買えないっていうのは違うだろ」

 ミリアが俺を見る。

 グレンも黙っていた。

 俺は続ける。

「余裕のある人には普通に売る」

「……」

「その利益で、必要な人に回す」

 グレンが笑った。

「なるほど」

「何が?」

「君は商人としては、まだ素人だ」

「……ひどい」

「だが」

 グレンは俺の肩を叩いた。

「商人になる素質はある」

 その日の夜。

 王都の一角では、日本の商品が大活躍していた。

 暗闇にはLEDライト。

 怪我人には包帯。

 食料が不足した場所には缶詰。

 子供たちには水。

「レンさん!」

 ミリアが走ってくる。

「どうした?」

「また商品が売れました!」

「いくら?」

「金貨十二枚です!」

「……今日だけで?」

「はい!」

 俺は苦笑した。

「売れるなぁ……」

 だが。

 その直後。

「レン!」

 グレンが駆け込んできた。

「どうした?」

「北門だ」

「北門?」

「魔物が来た」

「……」

「しかも、今までとは違う」

 俺たちは北門へ向かった。

 城壁の上から外を見る。

 森の中。

 無数の魔物がいる。

 だが、襲ってこない。

 ただ立っている。

「何してるんだ?」

 俺が呟いた。

 そのとき。

 森の奥から、一匹の巨大な狼が現れた。

 昨日の魔狼より、さらに大きい。

 黒い毛。

 赤い目。

 そして――

 額に白い紋章。

 ミリアが息を呑んだ。

「……ありえない」

「知ってるのか?」

「はい」

 ミリアの声が震える。

「あれは魔狼ではありません」

「じゃあ何だ?」

「魔狼たちを従える――」

 巨大な狼がこちらを見る。

「群れの王です。」

 狼王が一歩前に出る。

 そして。

 俺を見る。

 次の瞬間。

 狼王が頭を下げた。

「……またかよ」

 俺は思わず呟いた。

 しかし。

 今回は違った。

 狼王の口から、人間の言葉が発せられた。

「――境界の子よ」

「…………」

 俺は固まった。

「お前は――」

 狼王の赤い目が俺を捉える。

「こちら側の者ではないな。」

 城壁の上にいた全員が息を呑んだ。

 俺は答えられなかった。

 狼王は続ける。

「その扉を開いた者よ」

「扉……?」

「お前の世界と、我らの世界を繋ぐ扉」

 カーテン。

 あの窓。

 俺は振り返った。

 遠く離れたギルドの建物。

 その窓の向こうには――

 閉じたカーテンがある。

 狼王が言った。

「その扉を開く者には、三つの道がある」

「三つ?」

「商人になるか」

「……」

「王になるか」

「……」

「それとも――」

 狼王の声が低くなる。

「世界を壊す者になるか。」

 風が吹き抜けた。

 俺はただの会社員だった。

 昨日まで。

 だが今。

 異世界の魔物の王が、俺に向かって頭を下げている。

 そしてスマホの画面には――

 『次の接続まで――18時間03分』

 カウントダウンだけが、静かに進んでいた。

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