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「カーテン開けると異世界トリップで大儲け」  作者: 碧凛睡
第1章 カーテンの向こうで大商売!
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第7話 勝手に開くカーテン

 カーテンが、ゆっくりと開いていく。

 誰も触れていない。

「……何だ?」

 俺は思わず一歩近づいた。

「レンさん、触らないで!」

 ミリアの声が飛ぶ。

「え?」

「何かがおかしいです!」

 確かにおかしい。

 風は吹いていない。

 なのに、カーテンだけが動いている。

 スゥ――。

 そして完全に開いた。

 その向こうにあるのは、俺の部屋。

 見慣れた机。

 ベッド。

 スマホの充電器。

 いつもの日本の部屋。

 なのに――

 異世界側の魔狼が、激しく唸っていた。

「グルルル……!」

 ギルドにいた商人たちも騒ぎ始める。

「何だあの窓は?」

「魔法陣か?」

「いや、あんな魔法陣は見たことがない!」

 グレンが俺の前に立つ。

「レン」

「はい」

「これは何だ?」

「……俺にも分かりません」

「君の家に繋がっているのか?」

「たぶん」

「たぶん?」

「俺がカーテンを開けると、ここに来られるんです」

 グレンの顔が険しくなる。

「逆は?」

「できます」

「向こうからこちらへも?」

「はい」

「……」

 グレンはしばらく黙った。

 そして低い声で言った。

「これは商売の道具じゃない」

「え?」

「国家級の問題になる」

 その言葉に、俺は黙った。

「もし本当に二つの世界を自由に行き来できるなら――」

 グレンが窓を見る。

「武器も、人間も、情報も、自由に運べる」

「……」

「王国が知れば、必ず管理しようとする」

「管理……」

「場合によっては、君から取り上げる」

 背筋が冷たくなった。

 俺はただ商売をしたかった。

 金を稼いで。

 少し生活を楽にして。

 できれば会社も辞めて。

 そんな程度だった。

 だが――

 このカーテンには、それ以上の価値がある。

「……困ったな」

 俺が呟いたときだった。

 魔狼が突然、窓へ向かって飛びかかった。

「危ない!」

 ミリアが叫ぶ。

 だが。

 魔狼は窓の手前で急停止した。

「え?」

 まるで透明な壁にぶつかったようだった。

 魔狼が後ずさる。

 そして――

 カーテンの向こうを見て震え始めた。

「何だ……?」

 俺も窓を見る。

 何もない。

 俺の部屋があるだけだ。

 だが。

 スマホの画面が勝手に点灯した。

 午前七時十二分。

 また同じ時刻。

 そして画面に文字が浮かんだ。

 『警告』

 俺は息を呑んだ。

「レンさん……」

 ミリアも見ている。

 次の文字。

 『境界干渉を検知』

「……何これ」

 さらに文字が表示される。

 『侵入者を確認』

「侵入者?」

 俺は周囲を見回した。

 ギルドの人間。

 ミリア。

 グレン。

 そして魔狼。

「まさか……」

 俺が魔狼を見る。

 魔狼は怯えている。

 その瞬間。

 画面が変わった。

 『排除しますか?』

「……は?」

 俺の指が止まる。

 画面には、

 YES

 NO

 二つの選択肢。

「何だよ、これ……」

 まるでゲーム画面だ。

 誰が作った?

 どうして俺のスマホに?

「レンさん、触らないでください!」

 ミリアが叫ぶ。

「分かってる!」

 俺は画面から指を離した。

 だが。

 魔狼が突然、苦しみ始めた。

「グル……グルル……!」

「おい!」

 魔狼の身体から黒い霧が噴き出す。

「何だこれ!」

 ミリアが叫ぶ。

「魔力が暴走しています!」

 魔狼がこちらを見る。

 その目に――

 恐怖が浮かんでいた。

 そして。

 魔狼は俺に向かって頭を下げた。

「……え?」

 誰も動けなかった。

 巨大な魔狼が。

 まるで主人に服従するように。

 俺へ頭を下げている。

「どういうことだ?」

 グレンも言葉を失っている。

 魔狼はそのまま踵を返し、ギルドの外へ走っていった。

 街の外へ。

 森の奥へ。

 そして――

 完全に姿を消した。

「……逃げた?」

 俺が呟く。

 ミリアが首を横に振る。

「違います」

「え?」

「あれは逃げたんじゃありません」

「じゃあ何だ?」

 ミリアは震えながら答えた。

「従ったんです。」

「誰に?」

 ミリアは俺を見る。

「レンさんに……」

「俺?」

「正確には――」

 ミリアの視線がカーテンへ向く。

「レンさんの向こう側にある何かに」

 俺はカーテンを見る。

 いつもの部屋。

 何も変わっていない。

 なのに。

 もう以前のように見ることはできなかった。

 この窓の向こうには、

 何かがある。

 そして俺は、それを知らない。

「……商売どころじゃなくなってきたな」

 俺が呟く。

 するとグレンが笑った。

「いや」

「え?」

「商売だからこそ、面白いんじゃないか?」

「……」

「君はまだ何も知らない」

 グレンは金貨を一枚、机に置いた。

「だからこそ――」

「まずは知らなければならない」

 そのとき。

 ギルドの外から鐘の音が鳴った。

 カン、カン、カン――。

 ミリアが窓を見る。

「……王都警戒鐘です」

「何?」

「魔物の大量発生が確認されたときに鳴る鐘です」

「でも魔狼は逃げたんじゃ……」

「違います」

 ミリアが森を見る。

「魔物たちは――」

 森の奥。

 無数の赤い目がこちらを見ていた。

「まだ、何かを待っています。」

 そして。

 俺のスマホに、また文字が浮かんだ。

 『次の接続まで――23時間59分』

 俺は息を呑んだ。

 カーテンが開く時間は、

 どうやら――

 俺が自由に決められるものではなかった。

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