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「カーテン開けると異世界トリップで大儲け」  作者: 碧凛睡
第1章 カーテンの向こうで大商売!
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第6話 金貨二十枚の仕入れ

「……金貨二十枚」

 俺は机の上に並んだ金貨を見つめていた。

 昨日まで、異世界の金貨なんて一枚も持っていなかった。

 それが今では二十枚。

 しかも、売ったのは――

「百円ショップの商品なんだよな……」

 俺は自分でも信じられなかった。

「レンさん」

「ん?」

「嬉しくないんですか?」

 ミリアが不思議そうに聞いてくる。

「いや、嬉しいよ」

「では、どうしてそんな顔を?」

「金儲けって、こんな簡単なのかと思って」

 ミリアは少し考えた。

「簡単ではないと思います」

「そう?」

「レンさんの商品が珍しいからです」

「なるほど」

「それに――」

 ミリアは金貨を見る。

「これだけのお金を一度に手に入れる商人は、そう多くありません」

「……そうなのか」

 俺は金貨を一枚持ち上げた。

 ずっしり重い。

「じゃあ、これでまた商品を仕入れて……」

「待ってください」

「?」

「全部使わないほうがいいですよ」

「なんで?」

「商売では、手元にお金を残しておく必要があります」

「……確かに」

 言われてみればその通りだ。

 仕入れに全部使えば、何かあったときに困る。

「じゃあ半分くらい?」

「はい」

 俺は考えた。

「金貨十枚を仕入れに使う」

「残りは?」

「貯金」

「貯金……?」

「いざというときのためのお金」

「なるほど」

 俺は笑った。

「商売って、意外と地味だな」

「そういうものですよ」

 翌日。

 俺は再び日本へ戻った。

 百円ショップへ向かう。

「さて……」

 今回は前回と違う。

 ただ便利そうなものを買うだけではない。

 誰が何を必要としているのか。

 それを考える。

「異世界の人が欲しいもの……」

 まず思いついたのは衛生用品。

 歯ブラシ。

 石鹸。

 タオル。

 爪切り。

 そして――

「これだ」

 虫よけスプレー。

 蚊取り線香。

 絆創膏。

 包帯。

 消毒液。

 小さな救急セット。

「医療用品は……勝手に売るのは危ないな」

 薬は避ける。

 だが、包帯や消毒用品なら需要があるかもしれない。

 そして食品。

 カップ麺。

 レトルト食品。

 缶詰。

 インスタント味噌汁。

「……重いな」

 今回は量を考えながら買う。

 商品を詰め込んだ袋を持って帰宅する。

 そしてカーテンを開ける。

「ただいま」

「おかえりなさい!」

 ミリアが走ってくる。

「今日は何ですか?」

「いろいろ」

 俺は商品を並べた。

「まず、これは石鹸」

「前にも見ました」

「これは歯ブラシ」

「これも知っています」

「そして――」

 俺は缶詰を取り出した。

「これは食べ物」

「缶……?」

「中に料理が入ってる」

「料理が?」

「保存食」

 ミリアは缶を振った。

「……どうやって食べるんですか?」

「缶を開ける」

 俺は缶切りを使って開ける。

 中から魚の缶詰が出てきた。

「…………」

 ミリアの目が輝く。

「魚……!」

「好きなのか?」

「大好きです!」

 試しに少し食べる。

「……!」

「どう?」

「おいしいです!」

 その顔を見て、俺は笑った。

「じゃあ、これは売れそうだな」

 ところが。

「レンさん」

「ん?」

「これ、売らないほうがいいかもしれません」

「え?」

「私たちが食べてしまいました」

「……」

 気づけば缶詰は空になっていた。

「……仕方ない。これは試食ってことで」

「試食?」

「ああ」

 その日の夕方。

 俺たちは商人ギルドへ向かった。

 グレンは俺の商品を見るなり、眉をひそめた。

「また変わったものを持ってきたな」

「今日は食べ物もあります」

「食べ物?」

 グレンが缶詰を見る。

「これは保存食です」

「保存食なら珍しくない」

「でも、長期間保存できます」

「どれくらい?」

「商品によりますけど、数年単位のものもあります」

「……数年?」

 グレンの顔が変わった。

「本当に?」

「はい」

「魔法で保存しているのか?」

「違います」

「ではどうやって?」

「缶に入れて密封してる」

「…………」

 グレンは缶を持ち上げる。

「これが数年間腐らない?」

「保存状態によりますけどな」

 グレンはしばらく考え込んだ。

「レン」

「はい」

「これは、どこから仕入れている?」

「日本です」

「またその国か」

「はい」

 グレンは俺を見る。

「君の国では、これが普通なのか?」

「まあ……普通ですね」

「……」

 グレンが頭を抱えた。

「普通という言葉が怖くなってきた」

 俺は笑った。

 だが、そのとき。

 ギルドの入口から兵士が飛び込んできた。

「大変です!」

 全員が振り返る。

「北門の近くで魔物が出ました!」

「魔物?」

「はい!」

 兵士は息を切らしている。

「街道沿いに大量発生しています!」

 ギルド内が騒然となる。

 グレンが立ち上がった。

「規模は?」

「まだ分かりません!」

「冒険者ギルドへ連絡を――」

 その瞬間。

 外から悲鳴が聞こえた。

「魔物だ!」

 街の中が一気に騒がしくなる。

 俺は窓の外を見る。

 城壁の向こう。

 遠くの森から、黒い影がいくつも走ってくる。

「……あれ」

 俺は目を凝らした。

 その中に――

 昨日見たものと同じ赤い目があった。

 巨大な魔狼。

 そして、その魔狼は街ではなく――

 俺のいるギルドを見ていた。

「……俺を狙ってる?」

 ミリアが青ざめる。

「違います」

「え?」

「レンさんではありません」

 ミリアが窓を見る。

「魔狼が見ているのは――」

 俺たちの背後。

 俺が持ってきた商品。

 そして――

 その奥にあるカーテン。

「……カーテン?」

 魔狼が唸る。

 ギルドの中にいる全員が、何が起きているのか分からない。

 ただ一つ。

 俺だけが気づいていた。

 魔狼の視線が、

 日本へ繋がる窓から一度も離れていないことに。

 そして次の瞬間。

 カーテンが――

 誰も触れていないのに、

 ゆっくりと開き始めた。

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