第13話 月影の森の宝物
月明かりに照らされた光の道。
蓮たちは、その道をゆっくり進んでいた。
「……静かですね」
ミリアが小声で言う。
「うん」
昼間とはまるで違う。
鳥の声も聞こえない。
風の音さえ、どこか遠く感じる。
セレナが周囲を見回す。
「この森……私たちを見ているような気がします」
「見てる?」
蓮が振り返る。
木々が並んでいるだけだ。
「気のせいかな」
クロウが足を止めた。
「いや」
「クロウ?」
「気のせいではない」
クロウは森の奥を見つめている。
「何かいる」
全員が身構える。
その瞬間――。
ガサッ。
茂みが揺れた。
「来るぞ!」
ミリアが杖を構える。
すると――。
ひょこ。
小さな動物が顔を出した。
「……」
「……」
「……」
全員が固まる。
そこにいたのは、小さな白いウサギだった。
「なんだ……」
ミリアが力を抜く。
モモが飛んでいく。
「うさぎ!」
ウサギはモモを見る。
そして――。
ぴょん。
森の奥へ走っていった。
「待って!」
モモが追いかける。
「モモ!」
蓮たちも慌てて追う。
すると、ウサギは大きな岩の前で止まった。
そしてこちらを見る。
「……ここ?」
蓮が近づく。
ウサギは一度だけ頷いたように見えた。
「賢いウサギだな」
蓮が岩に手を触れる。
すると――。
パァァァ……。
岩に月の模様が浮かび上がった。
そして、ゆっくりと横へ動く。
「隠し扉……!」
その奥には、小さな空間があった。
中央に台座がある。
台座の上には――。
小さな銀色の羽が置かれていた。
「……羽?」
セレナが呟く。
蓮はスマートフォンを向けた。
ピピッ。
画面が光る。
【特殊アイテムを確認】
【星実との共鳴反応:強】
【座標A・必須アイテム候補】
「候補……?」
蓮が首を傾げる。
「まだ確定じゃないのか」
クロウが羽を見る。
「触れてみろ」
「大丈夫かな?」
「反応しているなら、おそらくな」
蓮がそっと手を伸ばす。
銀色の羽に触れた瞬間――。
月影の森全体が光った。
「うわっ!」
星実も強く輝く。
そしてスマートフォンに文字が浮かぶ。
【月影の羽】
【星実との接続率:100%】
蓮が目を見開く。
「これだ!」
ミリアが嬉しそうに笑う。
「一つ目の必須アイテムですね!」
「たぶん」
「たぶん?」
「まだもう一つあるから」
蓮は銀色の羽を大切にしまった。
これで終わりではない。
星実が示した座標は二つ。
月影の森。
そして――。
大地の湖。
残るもう一つの必須アイテムを手に入れなければ、新しい世界へは行けない。
そのとき。
さっきの白いウサギが、蓮の足元へ戻ってきた。
「ありがとうな」
蓮がしゃがんで頭を撫でる。
ウサギは嬉しそうに目を細めた。
モモが近づく。
「名前つける?」
「え?」
「この子」
「……そうだな」
蓮は少し考えた。
「月うさぎ……は普通すぎるか」
セレナが笑う。
「では、『シロ』はいかがです?」
「そのままだな」
「分かりやすいです」
モモが叫ぶ。
「シロ!」
ウサギが耳を動かす。
「気に入ったみたいだな」
シロは蓮たちを見送るように、森の入口へ向かって走っていった。
蓮は月影の森を振り返る。
「一つ目は手に入った」
クロウが言う。
「なら、次は大地の湖だ」
蓮は頷いた。
「でも、その前に……」
モモが蓮の肩に乗る。
「プリン?」
「違う」
「じゃあポテトチップス?」
「それも違う」
「……ロールケーキ?」
「なんで全部食べ物なんだよ」
一行に笑い声が響く。
しかし――。
まだ誰も知らなかった。
大地の湖にある二つ目の必須アイテムは、月影の森とはまったく違う方法で探さなければならないことを。
そしてその湖には――。
星実さえ反応しない、奇妙な何かが眠っていた。




