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「カーテン開けると異世界トリップで大儲け」  作者: 碧凛睡
第2章 新しい異世界カーテンの向こうで大商売!
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第7話 ケーキ屋さんのロールケーキ

翌朝。

蓮たちの店の前には、またしても長い行列ができていた。

「ロールケーキ……」

「今日も買えるの?」

「昨日は買えなかったんだ!」

「一個だけでもいいから!」

蓮は店の奥から、その様子を見ていた。

「……思った以上に人気になったな」

隣では、ミリアが困ったように笑っている。

「蓮さん、昨日の分は全部売れちゃいましたよ」

「うん」

「今日の分は?」

蓮は黙った。

「……ない」

「え?」

ミリアが固まった。

その瞬間――。

「「「えええええっ!?」」」

店の外から大合唱が聞こえてきた。

蓮は頭を抱えた。

「やっぱり、そうなるよな……」

そこへセレナが優雅に歩いてくる。

「蓮様」

「何?」

「ロールケーキは?」

「ない」

「…………」

セレナの笑顔が消えた。

「蓮様」

「はい」

「私は今、とても悲しいです」

「昨日いっぱい食べただろ」

「昨日食べたからこそ、今日も食べたいのです」

「それは知らないよ」

すると、肩の上に止まっていたモモが羽を震わせた。

「ロールケーキ……」

「モモまで?」

「食べたい」

「プリンは?」

「……」

モモは少し考えた。

「プリンも食べたい」

「結局どっちもかよ」

そのときだった。

店の入口から、クロウが入ってきた。

「蓮」

「クロウ?」

「昨日のロールケーキについてだ」

「やっぱり?」

クロウは真剣な顔をしていた。

「商業都市ヴェルナから正式な注文が来た」

蓮は受け取った手紙を開く。

そこには大きく、

『ロールケーキ五百個を希望する』

と書かれていた。

「五百個……」

蓮は唸った。

「さすがにコンビニで五百個買ってくるのは無理だな」

「コンビニ?」

クロウが首を傾げる。

「ああ、日本にある店だよ」

蓮は少し考えた。

「でも……」

ふと、別の考えが浮かんだ。

「コンビニじゃなくて、ケーキ屋さんに頼んでみるか」

「ケーキ屋さん?」

セレナが反応した。

「ケーキ屋さんというのは?」

「ケーキ専門のお店。ロールケーキも作ってる」

モモの目が輝いた。

「専門……?」

「うん」

「プリン専門?」

「違う」

「……残念」

蓮は苦笑した。

そして、カーテンの向こうへ戻る。

日本。

自分の部屋。

スマートフォンを手に取った蓮は、以前利用したケーキ屋に連絡を入れた。

「もしもし」

『はい、お電話ありがとうございます』

「実は、ロールケーキを大量に注文したいんですが……」

『何本くらいでしょうか?』

「まず五百本」

『……五百本ですか?』

電話の向こうが静かになった。

「はい」

『ご、五百本……』

「可能でしょうか?」

店員は少し待ってから答えた。

『通常商品では難しいですが、日数をいただければ特注で対応できるかもしれません』

「お願いします!」

『ただ、かなりの数量ですので、材料や製造体制を調整する必要があります』

「もちろんです」

蓮はすぐに条件を確認した。

そして――。

数日後。

日本のケーキ屋さんから、特注のロールケーキが届いた。

蓮は一本を箱から取り出す。

ふわっとしたスポンジ。

きめ細かな生地。

そして、たっぷりの上質なクリーム。

「……すごい」

ミリアが目を丸くする。

セレナもじっと見つめている。

モモはすでにテーブルの上にいた。

「食べる?」

「食べる!」

蓮が切り分ける。

一口。

モモが食べた。

そして――。

止まった。

「……」

「モモ?」

「……」

セレナも一口食べる。

「…………」

こちらも動かない。

蓮が不安になった。

「どうした?」

最初に口を開いたのはモモだった。

「蓮……」

「うん」

「これ……」

モモは震えながら言った。

「コンビニのロールケーキより……おいしい」

蓮は思わず笑った。

「やっぱり?」

セレナは両手を頬に当てていた。

「……蓮様」

「はい」

「これは危険です」

「危険?」

「美味しすぎます」

セレナは真剣だった。

「昨日まで私は、コンビニのロールケーキを愛していました」

「うん」

「しかし……」

もう一口。

「これは……別格です」

モモも負けずに食べる。

「プリン……」

「ん?」

モモが遠い目をした。

「ごめんね」

「プリンに謝ってるの?」

「うん」

モモは胸に手を当てた。

「プリンも好き。でも……」

ロールケーキを見つめる。

「これは別の幸せ」

「結局食べるんだな」

クロウも一口食べた。

しばらく無言。

そして、商人の顔になった。

「蓮」

「何?」

「これは売れる」

「だよな」

「いや」

クロウは首を横に振った。

「売れる、という程度ではない」

「……?」

「価格を上げても売れる」

蓮はロールケーキを見る。

確かに、コンビニの商品とは違う。

専門店が作った味。

香り。

クリーム。

スポンジ。

すべてが一段上だった。

「じゃあ、ヴェルナにはこれを五百本」

「そうしよう」

クロウが頷く。

「だが、問題がある」

「何?」

「五百本では足りないかもしれない」

その言葉に、蓮は外を見る。

店の前には、今日も人が並んでいた。

「……確かに」

その後ろには、さらに人が増えている。

そして――。

一人の商人が叫んだ。

「ロールケーキを買わせてくれ!」

「私も!」

「十本欲しい!」

「予約はできるのか!?」

蓮は思わず笑った。

「これは……大変なことになったな」

セレナが嬉しそうに微笑む。

「蓮様」

「ん?」

「異世界商人として、大成功ですね」

モモはロールケーキを抱えながら言った。

「蓮!」

「なに?」

「追加注文!」

「もう食べたのに?」

「別腹!」

「蝶にも別腹あるのかよ!」

笑い声が店に響いた。

しかし、その頃――。

商業都市ヴェルナでは、別の動きが始まっていた。

巨大な商業ギルドの会議室。

一人の男が五百本の注文書を見つめていた。

「たった一人の異世界商人が……」

机の上に置かれたロールケーキの写真。

男は静かに笑う。

「商業都市ヴェルナに、新しい商品を持ち込むつもりか」

その横にいた商人が尋ねる。

「どうしますか?」

男は立ち上がった。

「決まっている」

「買いに行く」

そして――。

「その商人が、どれほどの商売人なのか……この目で確かめよう」

ヴェルナへの道は、まだ始まったばかりだった。

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