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「カーテン開けると異世界トリップで大儲け」  作者: 碧凛睡
第2章 新しい異世界カーテンの向こうで大商売!
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第6話 セレナまで裏切った!?ロールケーキの誘惑

「……プレミアムロールケーキ」

セレナは、テーブルの上に置かれた白いロールケーキをじっと見つめていた。

その隣では――。

モモが幸せそうにロールケーキを食べている。

「ふわふわ……」

「モモ」

蓮が呆れた顔をする。

「さっきまでプリンが一番って言ってなかったか?」

「今はロールケーキ」

「切り替え早いな」

するとセレナが、そっと手を挙げた。

「蓮さん」

「ん?」

「私も……」

「?」

「食べてみたいです」

蓮は少し驚いた。

「セレナも?」

「はい」

セレナは普段、プリンを見ると誰よりも嬉しそうにしていた。

蓮は小さく切り分ける。

「じゃあ、少しだけ」

「ありがとうございます!」

セレナはフォークを持った。

一口。

ぱくっ。

「…………」

セレナが止まった。

「どう?」

ミリアが心配そうに尋ねる。

セレナはゆっくり目を閉じた。

「……柔らかい」

「うん」

「甘い……」

「うん」

「でも、甘すぎない……」

「そうなんだよ」

セレナはもう一口食べた。

ぱくっ。

さらに一口。

ぱくっ。

「セレナ?」

「…………」

返事がない。

蓮が覗き込む。

セレナはロールケーキを見つめたまま、真剣な顔をしていた。

「蓮さん」

「はい」

「これは……危険です」

「え?」

「危険なくらい美味しいです」

モモが横から頷く。

「そう」

「お前は何で偉そうなんだ」

セレナはプリンの置かれている場所を見る。

そしてロールケーキを見る。

もう一度、プリンを見る。

そして――。

「……ごめんなさい」

「何が?」

セレナは両手を合わせた。

「プリン」

「?」

「少しだけ……浮気します」

「食べ物に浮気ってあるの!?」

ガルドが大笑いする。

「ついにセレナまでか!」

ミリアも笑っている。

リナまで小さく笑った。

「ロールケーキ……強い」

「リナまで!」

蓮は頭を抱えた。

その様子をクロウは静かに見ていた。

「面白いな」

「何が?」

「商品そのものだけじゃない」

クロウはロールケーキを指差す。

「食べた人間の反応が、次の客を呼んでいる」

蓮は少し考えた。

「……口コミ?」

「そうだ」

「なるほど」

蓮は笑った。

異世界でも、日本と同じように――。

美味しいものは、人から人へ伝わっていく。

***

その日の午後。

蓮はロールケーキをいきなり大量販売することをやめた。

「今日は、試食だけにしよう」

「試食ですか?」

ミリアが聞く。

「うん」

「どうしてです?」

「いきなり全部売るより、まず知ってもらったほうがいい」

蓮は小さく切ったロールケーキを並べた。

「一人一口」

「一口……」

セレナが悲しそうな顔をする。

「セレナは食べたでしょ」

「はい……」

「じゃあ販売を手伝って」

「わかりました!」

セレナはエプロンをつけた。

「プレミアムロールケーキ試食会、開始です!」

最初に来たのは子どもだった。

「これ、何?」

「日本のお菓子です」

「食べていいの?」

「どうぞ」

ぱくっ。

「……おいしい!」

次に母親。

その次に父親。

そして隣の店の店主。

一人。

また一人。

少しずつ、人が増えていく。

「これ、どこで買えるの?」

「今日は試食だけです」

「売ってないの?」

「明日から販売します」

「絶対買う!」

蓮は笑った。

「……いい感じだ」

その横でセレナが小さく呟く。

「蓮さん」

「何?」

「明日から、私……」

「うん」

「ロールケーキ担当になります」

「プリン担当じゃなくて?」

セレナは少し悩んだ。

そして――。

「……両方です!」

「結局そこか!」

モモが羽を広げる。

「私はロールケーキ担当」

「お前は食べる担当だろ」

「それも担当」

「認めるなよ」

店には笑い声が広がった。

だが――。

その夜。

誰もいなくなった店の前に、一枚の紙が置かれていた。

蓮が拾い上げる。

そこには――。

『その菓子を、もっと大量に仕入れることはできるか?』

そして紙の裏には、見たことのない紋章。

クロウがそれを見て、表情を変えた。

「……この紋章は」

「知ってるの?」

「ああ」

クロウは紙を握りしめる。

「この世界で一番大きな商業都市の紋章だ」

蓮は目を見開いた。

「商業都市?」

クロウは頷く。

「そこには――」

少し間を置いて。

「世界中の商人が集まっている」

蓮の目が輝いた。

「……新しい市場だ」

ロールケーキから始まった小さな商売は――。

少しずつ、大きな取引へと動き始めていた。

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